『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』彼女の日常を通して、生きることの本質が見えてくる映画

『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』彼女の日常を通して、生きることの本質が見えてくる映画

2024-01-23 15:13:00

『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』の角野栄子は、朝10時から仕事部屋のiMacに向かい昼食を挟んで夕方まで小説を書く。1935年深川生まれ、1959年24歳の時に2年間自費移民としてブラジルに滞在、現在鎌倉に住む88歳の角野栄子の仕事と生活を、4年にわたって捉えたドキュメンタリー。

彼女が纏う洋服、家の中の壁紙の色、映画のタイトル通り、イチゴ色を基調にしたカラフルさに溢れている。大半の人は年齢を重ねるとシックになりがちだが、角野栄子の生活の周りはカラフルで、色はエネルギーを感じさせる。

カラフルな洋服のコーディネートは、児童文学作家でデザイナーのくぼしまりおさんが行なっている。「カラフルな洋服は、着ている人を楽しい気持ちにしてくれます」という。その実例は1冊の本にまとめられ『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』というタイトルで出版されている。

一見奇抜かもと思うメガネも、彼女の全体のコーディネートの中ではしっくりとして似合っている。映画の中でも何種類のメガネを見たことだろうか。角野栄子は、作品を一つ書き終わるごとに自分へのご褒美として、新しいメガネを購入するという。

映画の中で引用される『魔女の宅急便』の一説。

「物事のむこうにはね、みえるものとのとおなじくらい、見えないものがかくれているのよ。それを見ようとしなければね。人間にはそういう力があたえられているんだから」

さて、このドキュメンタリーの向こうに隠されたものをあなたはどう読み取るだろうか。
彼女の日常を通して、生きることの本質が見えてくる映画だろう。

 

角野栄子
Eiko Kadono

東京・深川生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て24歳からブラジルに2年滞在。
その体験をもとに描いた『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』で、1970年作家デビュー。代表作『魔女の宅急便』(福音館書店)はアニメ作品として映画化され、その後舞台化、実写映画化された。野間児童文芸賞、小学館文学賞等、受賞多数。紫綬褒章、旭日小綬章を受章。2018年に児童文学の 「小さなノーベル賞」 といわれる国際アンデルセン賞作家賞を、日本人3人目として受賞。2023年11月に「魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)」が開館。主な作品に 『アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ』シリーズ、 『リンゴちゃん』(ポプラ社)、『ズボン船長さんの話』(福音館書店)、『トンネルの森 1945』 最新作に『イコ トラベリング1948-』(KADOKAWA)などがある。
http://kiki-jiji.com"http://kiki-jiji.com  https://www.instagram.com/eiko.kadono/

 

宮川麻里奈 監督コメント


20歳になる娘が言うのです。
「『魔女の宅急便』がなかったら、私は思春期をうまく通過できなかったかも」と。
主人公キキと同じ13歳ごろの、友人関係や自分自身のままならなさに悩む時期、娘にとって『魔女の宅急便』シリーズは、折に触れて読み返す、いわば精神安定剤のようなものだったそう。
私はそんなことはつゆ知らず(苦笑)、あるインタビュー記事で角野さんのことを知り、「こんなおしゃれで素敵な人なんだ!」「1950年代にブラジルに移住しちゃうなんて、ぶっ飛んでる!」と驚き、「いつかこの人を取材したい」と思っていたのです。
コロナ禍の間をぬいながら撮影を続けて 4 年。角野栄子さんは、とことん「愉快」―愉しく快い―方でした。
好奇心旺盛で頭の回転が速く、そして何よりも自由で。角野さんの精神の自由さ、のびやかさには、いまだに圧倒され続けています。
角野さんの、何でもない日常の1コマ1コマを生き生きとさせる「ありかた」、88歳にしてあふれんばかりの好奇心と冒険心は、おのずと、見る人に伝染すると確信しています。
角野さんという、地球上見渡しても稀有な「魔女」にスクリーンで出会い、
そのハッピーオーラを浴びてください。

宮川麻里奈
監督
1970年6月徳島市生まれ。93年NHK番組制作局に入局。金沢局勤務、「爆笑問題のニッポンの教養」「探検バクモン」などを経て、‘13年「SWITCHインタビュー」を立ち上げる。「あさイチ」などを担当した後、現在は「所さん!事件ですよ」「カールさんとティーナさんの古民家村だより」などのプロデューサーを務める。一男一女の母。

ストーリー

「魔女の宅急便」の作者として知られ、88歳になった今でも現役の児童文学作家として精力的に執筆に励む角野栄子さん。そのユーモアと想像力で、実に260冊を超える作品を世に送り出してきました。長く愛される物語を生み出してきただけでなく、近年は、そのおしゃれなライフスタイルや人生観にも注目が集まっています。鎌倉の自宅ではテーマカラーである「いちご色」に囲まれ、カラフルな眼鏡とワンピースがトレードマーク。「自分にとって気持ちがいいもの」をモットーに、遊ぶように暮らし、遊ぶように書き、毎日を心地よく暮らしています。本作は、そんな角野さんを4年間にわたって撮影し、創作活動の裏側が収録された貴重なドキュメンタリー映画です。

角野さんは、1935年に東京・深川で生まれ、5歳で母を亡くし戦争を経験します。新婚の夫とともにブラジルに渡ったのは24歳のとき。まだ日本人が自由に海外に行けない時代に広い世界を見てみたいと個人移民の道を選びますが、着いた当初は現地での暮らしになじめず、来たことを後悔した日もあったといいます。そんなとき角野さんにポルトガル語を教えてくれたのが近所に住むルイジンニョ少年でした。このブラジル時代の恩人との交流を綴った「ルイジンニョ少年:ブラジルをたずねて」で作家デビューを果たしますが、それは娘のリオさんの育児に追われていた35歳のときでした――。

作家デビューから53年。角野さんは「誰よりも自分が楽しむこと」をモットーに、コツコツと大好きな執筆を続けてきました。そして、奇跡のような出来事が重なり、ついに62年ぶりにルイジンニョと再会することになります。角野さんは今回、ルイジンニョさんにどうしても見せたいものがありました――。

 

『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』予告編


公式サイト

 

2024年1月26日(金) 角川シネマ有楽町、アップリンク吉祥寺アップリンク京都、ほか全国順次公開

 

語り:宮﨑あおい 
監督:宮川麻里奈 音楽:藤倉大
プロデューサー:山田駿平 宣伝プロデューサー:大﨑かれん 編集部協力:岡山智子
ラインプロデューサー:松本智恵 撮影:髙野大樹 編集:荊尾明子 音響効果:河原久美子 監督補:岡澤千恵 
制作:NHKエンタープライズ 制作協力:角野栄子オフィス エネット 映像提供:NHK 製作・配給:KADOKAWA 

ⒸKADOKAWA