『バニシング:未解決事件』ソウルの刑事とフランスの法医学者が巨大な闇に挑む、韓・仏合作クライム・サスペンス!
『譜めくりの女』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され話題となったフランスの監督ドゥニ・デルクールによる韓・仏合作の最新作。2021年釜山国際映画祭でワールドプレミア上映された。
ソウルを舞台に、変死事件の真相に迫ろうとするソウル警察の刑事ジノと、彼に協力する訪韓中のフランス人法医学者アリスが、事件の裏に潜む臓器売買の事実を明らかにし、深い闇と闘うさまを、また同時に自身の恐怖や闇に向き合っていくさまを、社会派の色合いを纏いつつ、スリリングに描き出してゆく。
ソウルの刑事ジノを演じる『賢い医師生活』の俳優ユ・ヨンソクと、フランスの法医学者アリスを演じる『007/慰めの報酬』のオルガ・キュリレンコ。本作ではこのふたりがダブル主演を務める。
そして、フランス交響楽団で活躍したヴィオラ奏者でもあるという異才ドゥニ・デルクール。
映画と音楽は共に「時間の芸術である」と言い、『チェイサー』や『殺人の追憶』に影響を受けた彼の、まさに時間の密度を意識した、片時も息をつく隙のない作品である。瞬間、瞬間の展開に、目が離せない。
ストーリー
ソウルで発生したある怪死事件。身元不明の遺体は指紋が奪われ、体中傷だらけの状態で発見された。
ソウル警察の刑事ジノは事件解決の手がかりを探るにあたり、シンポジウムのため来韓していた法医学者のアリスに協力を要請する。
遺体の身元が容易に特定できず、臓器が違法な手術によって抜き取られていたことを知った2人は、背後に蠢く組織を追い詰めるべく捜査に挑む。
しかしそこには、想像を絶する凄惨な事件の真相が隠されていた――。
ドゥニ・デルクール監督インタビュー
ーー前代未聞の事件解決に挑む刑事と法医学者のタッグが魅力的でした。作品制作のきっかけと演出意図を教えてください。
ドゥニ・デルクール:事件とその解決だけを目的とするのではなく、様々な人物のストーリーまで盛り込んだ緊張感溢れる映画を作りたいと思いました。それに臓器売買という設定にも興味がありました。映画の持つサスペンス性を高めるために、各登場人物の動機をよく表現することに重点を置き、ストーリーを作り上げました。
ーー韓国オールロケーションで撮影された作品ですが、韓国の俳優陣やスタッフとともに現地での撮影はいかがでしたか。
デルクール:韓国コンテンツが世界的に大きな反響を呼んでいる今、韓国での作品制作は、機会があればぜひ挑戦したいと考える監督が多いのではないでしょうか。今回のプロジェクトを通じて私の夢も叶ったと思っています。韓国は、制作陣はもちろん、観客も映画に対する目が肥えており、より高いレベルで人々に感嘆をもたらす作品制作が可能な場所だと思います。
ーー韓国での映画監督の地位は絶対だと言いますが、実際にはどうでしたか?
デルクール:監督はまさしく神のごとく崇められる存在です。撮影チームはどんな小さな事柄に関しても、私のゴーサイン無しには何もしようとせず、最初は難しさを感じました。韓国では俳優もまた深く尊敬されていて、人気俳優ともなればなおさらです。私は彼らにも大いに自由を与えました。私がスター俳優たちを自由にさせ、彼らのアイデアを積極的に取り入れる姿勢を見せると、すぐにチーム全体が自分たちも同じようにすべきだということを理解してくれました。
ーーどんな韓国映画に影響を受けましたか?
デルクール:韓国の警察に関して言えば、ナ・ホンジン監督の『チェイサー』、ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』から影響を受けました。『チェイサー』は、スリラーというジャンルのイメージを持ちながらも韓国ならではの空間、例えばソウルの地下室などを把握する上で非常に参考になりました。『殺人の追憶』は、刑事を一般的な通念とは違って皮肉に描いた点がとても気に入り、参考にしました。効率を追い求めるばかりではなく、少し抜け感があり、威圧的でないジノのキャラクターを描く上でのヒントとなったと思います。
ーーユ・ヨンソクは英語を使った演技に挑戦していました。彼との仕事はいかがでしたか。
デルクール:ユ・ヨンソクはジノを完璧に表現してくれました。彼とはジノというキャラクターについて色々と意見を交わしましたが、絶えず独自のアイデアや意見を出してくれました。とても賢く信頼できる俳優だと感じました。
ーー韓国の俳優たちにはかなりの自由を与えたとのことですが、アリス役のオルガ・キュリレンコに対してはいかがでしたか?
デルクール:世界中で多くの映画に出演してきたオルガは高い適応力を誇る俳優です。シナリオを読んで「絶対に演じてみたかった役だ」と快諾してもらったのですが、手術シーンに必要なあらゆるジェスチャーを徹底的に練習し、現場に入りました。劇中の全シーンを自ら演じています。アリス本来の役割を果たしてくれました。
『バニシング:未解決事件』予告編
公式サイト
5月13日(金) シネマート新宿、シネマート心斎橋、アップリンク吉祥寺、ほか全国ロードショー
5月20日(金) アップリンク京都
監督:ドゥニ・デルクール 『譜めくりの女』
出演:ユ・ヨンソク 「賢い医師生活」、オルガ・キュリレンコ 『007/慰めの報酬』、イェ・ジウォン
2021/フランス、韓国/韓国語、フランス語、英語/カラー/88分 原題:Vanishing
配給:ファインフィルムズ
© 2021 The French Connection