『弟は僕のヒーロー』ダウン症の弟と兄の絆を描いた、苦く切ない極上のハートウォーミングストーリー

『弟は僕のヒーロー』ダウン症の弟と兄の絆を描いた、苦く切ない極上のハートウォーミングストーリー

2024-01-10 19:32:00

実話を元にした本作は、世界で60 万人が泣いたという、5分の YouTube 動画から生まれたベストセラー小説の映画化である。ダウン症の弟と兄の成長を軸に、ダウン症の子を持つ家族の葛藤や奮闘、喜びや困難、そして眩しいほどの家族愛が描かれた物語だ。

2015年3月21日「世界ダウン症の日」に、イタリアに住む高校生のジャコモ・マッツァリオールが、ダウン症の弟ジョヴァンニを主人公に据えて撮影した5分半の YouTube ショートムービー『ザ・シンプル・インタビュー』が大きな反響を呼び、メディア各紙が取り上げ話題となった。その後2016 年に出版された『弟は僕のヒーロー(原題:Mio fratello rincorre i dinosauri dinosauri(訳:僕の弟は恐竜を追いかける))』は、ヨーロッパ各国で翻訳され、日本でも装画を絵本作家ヨシタケシンスケが担当した邦訳版が小学館より刊行され、今や25 万部を超えるベストセラーとなっている。

ショートムービー『ザ・シンプル・インタビュー』はこちら (小学館CHより)

監督を務めるのは、本作が初の長編監督作となるイタリアのステファノ・チパーニ。「人生、ここにあり!」の脚本家ファビオ・ボニファッチが脚色、原作者のジャコモ自身も脚本に参加し、登場人物や出来事をリアルに再現できるよう協力したという。「僕らをつなぐもの」のフランチェスコ・ゲギが主人公の兄ジャックを、実際にダウン症であるロレンツォ・シストが弟ジョーを演じる。

本作について監督は次のように語る。
「この映画は、私にとって好奇心について考える機会を与えてくれる。ジャックは常に好奇心に突き動かされている。最初はジョーが持っているものを理解しようとし、次に想像の中で答えを探し、最後にはジョーを理解し、彼を驚かせようとする。人間のあらゆる資質の中で、好奇心が最も生き生きとし、本能的で知的であることは間違いない。監督として、また観察者として、主人公のジャックに誰もが簡単に共感できる好奇心を持たせることが私の関心事であり、観客が日常生活の中で少しでも好奇心を持ってくれることを心から願っている」

付け加えるなら、好奇心は他者に開かれた心であってこそ生まれるもの。本作が多くの人の心を打つのは、まさにダウン症の子供たちの存在がそうであるように、閉ざされた心の扉を魔法のように開いてしまう、深い慈愛に満ちた映画だからだ。

 

ステファノ・チパーニ 監督インタビュー


――本作の原作はイタリアでベストセラーになっていますが、監督がこの小説に出会ったきっかけはなんだったのでしょうか。また多くの人を惹きつけるこの物語の魅力は何だと思いますか。

エージェントからのオファーがきっかけでした。小説は一晩で読み終えてしまいました。この小説のなかには感情が揺さぶられる、本物の物語があると感じました。私は以前、障がい者を描いた短編(『While God Is Watching Us』)を作ったことがあったので、オファーしてくれたエージェントが信頼してくれたのだと思います。そういう経緯で、嬉しいことにこの映画を作ることができたのですが、私の初の長編映画でこのような琴線に触れる物語を映画化できたことは大変な喜びでした。実は原作者のジャコモ・マッツァリオールとは、障がいを持っている女性についての新作の脚本を書いていて、映画化する予定です。

――ジャックとジョーの父親役にイタリアを代表する俳優のアレッサンドロ・ガスマン、叔母役にはスペインのロッシ・デ・パルマなど、豪華キャストが出演されていますね。キャスティングの経緯についてお伺いできますか。

キャスティングは大変でした。長編デビュー作ということもあって、俳優たちのサポートがどうしても必要だと感じていました。そこでガスマンに脚本を送ったところ、脚本に惚れ込んでくれて出演を快諾してくれました。撮影の間、彼の存在はなくてはならないものでした。彼自身が若い俳優たちの中心的存在になってくれて、彼を中心にチームが作られていくような感覚がありました。毎回、持てる力の150%を発揮してくれる俳優なのです。ロッシ・デ・パルマはプロダクション側から提案があったので、彼女に会いにマドリードまで行ってオファーしました。小さい役ではあるのですが、すごく幸せな役というか、彼女の登場はキャスティングの妙でした。

――映画を楽しみにしている日本の観客に向けて最後に一言メッセージをいただけますか。

この映画を皆さんが心から気に入ってくださるとうれしいです。若い俳優たちが力の限り、希望を込めて作った映画です。ダウン症についても、本当の意味で知るってとても難しいことだと思います。どんな人であっても実感するのは難しいことだと思うのですが、私たちの感受性を豊かにして彼らにアクセスすることで、障がいに対して、それからダウン症に対しての見方が変わってくれることを願っています。

ステファノ・チパーニ
Stefano Cipani
監督
1986年、イタリア、サロ生まれ。母親はバレエの振付師、祖父は詩人で有名な美術コレクターという芸術的一家で育つ。ボローニャ大学で映画史と批評を学び、卒業後はロサンゼルスに移り、ユニバーサル・スタジオのニューヨークフィルムアカデミーで監督の修士号を取得。その後イタリアに戻り、2014年にはイザベラ・フェラーリ主演の短編映画『Symmetry』を監督。ダンテ・フェレッティ、エンニオ・モリコーネ、ヴィットリオ・ソダーノらともコラボレーションした。初の長編監督作『弟は僕のヒーロー』(19)は第76回ヴェネツィア国際映画祭にてプレミア上映され、同作で第65回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞ヤング・ダヴィッド賞に輝いた。

 

ストーリー

5歳のジャックは初めてできた弟に大喜び、しかし両親から弟ジョーは「特別」な子だと聞かされる。ジョーがスーパーヒーローだと信じるジャックだが、やがて「特別」の意味を知り、思春期を迎えると弟の存在を隠すようになる。ある日、好きな子を前についてしまった嘘が、家族や友達、町全体を巻き込んで、やがて取り返しのつかない事件となり――。



『弟は僕のヒーロ―』予告編


公式サイト

 

2024年1月12日(金) シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

監督:ステファノ・チパーニ
原作:ジャコモ・マッツァリオール
出演:アレッサンドロ・ガスマン、イザベラ・ラゴネーゼ、ロッシ・デ・パルマ、フランチェスコ・ゲギ、ロレンツォ・シスト

2019年/イタリア、スペイン/イタリア語/102 分/カラー/2.39:1 1/5 .1 c h

原題:Mio fratello rincorre i dinosauri 字幕:関口英子
後援:公益財団法人 日本ダウン症協会、イタリア大使館、イタリア文化会館
提供:日本イタリア映画社
配給:ミモザフィルムズ

@COPYRIGHT 2019 PACO CINEMATOGRAFICA S.R.L. NEO ART PRODUCCIONES S.L. (映倫区分:PG12)