『​阿彦哲郎物語:戦争の囚われ人』『ちっちゃいサムライ:三浦正雄の少年時代』歴史に翻弄され忘れ去れれた日本人の物語

『​阿彦哲郎物語:戦争の囚われ人』『ちっちゃいサムライ:三浦正雄の少年時代』歴史に翻弄され忘れ去れれた日本人の物語

2023-12-21 11:00:00

『​阿彦哲郎物語:戦争の囚われ人』『ちっちゃいサムライ:三浦正雄の少年時代』2作品が12月22日よりアップリンで吉祥寺で交互に1日1作品ずつ上映される。
2作品に共通するのは、カザフスタンに第二次世界大戦後抑留者として帰国もままならなかった日本人を描いた作品だということだ。

​抑留された日本人といえばちょうど1年前に公開された『​ラーゲリより愛を込めて』が記憶に新しいだろう。シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された実在の日本人捕虜・山本幡男を二宮和也が演じた作品だ。

『​阿彦哲郎物語』の阿彦哲郎、『ちっちゃいサムライ』​の三浦正雄との違いは、軍人ではなく民間人であるということだ。敗戦国の捕虜ではなく、民間人であった二人はソ連からすると犯罪者という扱いで捕らえられ、阿彦哲郎は、最終的にカザフスタンの強制収容所(ラーゲリ)で労働を強いられるのだった。歴史に翻弄されるとは、敗戦国の軍人ならば少なくとも日本人として認められるが、『​阿彦哲郎物語』『ちっちゃいサムライ』で描かれる二人は国籍が曖昧なために、終戦後もパスポート、ビザの発行という壁が立ちはだかり、簡単に帰国することができなかったばかりか、なにより日本から「忘れ去られた」カザフスタンの日本人となっていたのだ。

『​ちっちゃいサムライ」』の三浦さんの場合、南樺太から北海道へ疎開していた時に終戦を迎え、北海道へ戻ってこない家族を探しに単身樺太へ渡りそこで逮捕されるが、そのとき三浦少年は13歳だった。

2作品を​監督したのは佐野伸寿監督。自衛隊に勤務し、外務省職員としてカザフスタン大使館に書記官として赴任していた際に、民間人抑留者と出会い、このことを伝えたいと思ったという。
佐野監督は、カザフスタン赴任時、余暇の中で映画をプロデュースし、映画制作の経験があった。『​阿彦哲郎物語』は、日本との友好を深めたいというカザフスタン政府の思惑があり、監督のオファーがあって今回、カザフ側のアリヤ・ウバリジャノヴァと共同監督を務めることとなった。

『​阿彦哲郎物語』で強制収容所(ラーゲリ)に抑留された主人公​阿彦哲郎を演じるのは、キックボクシングのKNOCK OUT-REDのフェザー級王者の小笠原瑛作だ。
13歳で逮捕された三浦正雄の子供時代を描く『ちっちゃいサムライ』では、カザフスタンでの父親役ともいえる役を、映画監督でもあり現在『父は憶えている』が公開中の俳優、キルギス出身のアクタン・アリム・クバトが演じている。

​文字通り歴史に翻弄され、忘れ去られた日本人の物語を映画館で観て知ってほしい。


佐野伸寿 監督

佐野伸寿
2作品共通監督・脚本・製作
1965年生まれ。6歳から仮面ライダーやザ・カゲスターなどの子供番組、そして、野村芳太郎監督作品「ダメ親父」(タコ坊役)等で子役として活躍。その後、防衛大学校を経て自衛隊に入隊し、レンジャー訓練などの教育を受け第一線部隊勤務。1994年から外務省職員として在カザフスタン大使館に書記官として赴任。そこでカザフスタンの映画人と知り合い、大使館勤務の余暇の中で製作した「ラストホリデー」が1996年東京国際映画祭ヤングシネマ部門で東京ゴールド賞を獲得するなどして映画製作者としての活動を始める。その後、7本の映画を製作及び監督をして、映画作家としての道を歩む。また、大使館時代、日本人抑留者問題を担当し、1994年阿彦哲郎さんの一時帰国を支援。また同年、連絡が取れず行方不明になっていた三浦正雄さんを捜索し、アルマティ州バカナス近くのウシジャルマ村で発見し、翌1995年に一時帰国につなげる。阿彦さんや三浦さんだけではなく、カザフスタンに残っていた未帰還邦人(民間人抑留者4家族及び未帰還邦人2家族)の帰国に尽力をした。その後、1997年に帰任したが、その後も抑留者の方々との交流が続き、一時帰国や永住帰国に助力した。日本シナリオ作家協会会員。

 

イントロダクション&ストーリー

第二次大戦後、戦争捕虜としてシベリア(旧ソ連全土)・モンゴルに57万5千人が抑留され、5万5千人以上の人が亡くなった。だが、樺太などの地域に残った民間人で、戦争捕虜としてではなく謂れのない罪でソ連当局に逮捕され、強制労働を強いられる政治犯収容所や、広大なソ連の僻地で行方不明になった人は2千人以上存在すると言われる。その中で、カザフスタンに送られた人数はかなり多くいたものと思われるが、日本政府が把握できたのはたったの18名。しかも、ソ連崩壊の時まで生き残ったのはわずか4人だった。その4人のうち、阿彦哲郎(あひこてつろう)と三浦正雄の物語を映画化したのが『阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人』と『ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代』である。


『阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人』

戦後、樺太に取り残され、謂れのない罪によって逮捕され、“史上最悪”と悪名高いスターリンの政治犯強制収容所にたった1人の日本人として放り込まれた阿彦哲郎が、「日本に帰って家族に会いたい」という思いだけを胸に、生き抜いて収容所から釈放されるまでを描く。「阿彦哲郎は日本とカザフ友好の礎」と捉えるカザフスタン政府が、制作費300万ドル・製作期間3年・3,000人のスタッフをつぎ込んで完成させた歴史大作。主演にはキックボクサーでKNOCKOUTーREDフェザー級王者の小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)を抜擢。収容所の過酷な労働に打ち克った阿彦の心と体を、その鍛え抜いた身体で豊かに表現し、映画初主演とは思えない圧倒的な存在感を見せた。


『ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代』

終戦直後、疎開していた北海道から家族を探しに行った先の樺太で逮捕され、わずか14歳で日本から8,000kmも離れたカザフスタンに流刑となり、53年もの間をカザフで過ごした三浦正雄。世界でも珍しい淡水と塩水の性質を持つバルハシ湖及びイリ河を舞台に、後年、現地の自然保護官としても活躍した三浦の子供時代を描く。中央アジア映画界の才能が結集し、カンヌ主演女優賞受賞のサマル・イスリャモヴァ、カザフを代表する映画監督であるダレジャン・ウミルバエフ、さらにキルギスを代表する映画監督のアクタン・アリム・クバト(『馬を放つ』『父は憶えている』〈23年12月1日公開〉)も出演する。また、過酷な運命の中で傷つきながらも、雄大な大自然と人々の優しさに心癒されていく三浦少年を、映画初主演となる佐野史将が好演した。

 

『阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人/ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代』予告編


公式サイト

 

2023年12月22日(金) アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

『阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人』

出演:⼩笠原瑛作<KNOCKOUT―RED フェザー級王者(クロスポイント吉祥寺)> スルム・カシュカバエフ アサナリ・アシモフ 佐野史将 かざり
監督:佐野伸寿 エルダル・カバーロフ アリヤ・ウバリジャノバ
脚本:佐野伸寿 撮影:サマト・シャリポフ 美術:ヌルブラト・ジャバコフ 写真:松元隼⼈
製作企画:カザフスタン共和国⽂化省 ⽇本カザフスタン国交樹⽴ 30 周年記念作品
製作:ボリス・チェルダバエフ アリヤ・ウバリジャノバ 吉村秀⼀ 佐野伸寿
⽀援:⽂化庁⽂化芸術振興補助⾦(国際共同制作映画)
配給:Studio-D JAPAN 配給協⼒:UPLINK

2022 年/カザフスタン・⽇本/112 分/1.85:1/カラー/DCP/G
©МИНИСТЕРСТВО КУЛЬТУРЫ И СПОРТА РЕСПУБЛИКИ КАЗАХСТАН

『ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代』

出演:アクタン・アリム・クバト サマル・イスリャモヴァ ダレジャン・ウミルバエフ 佐野史将 ⼩笠原瑛作 三浦ニーナ
監督・脚本・製作総指揮:佐野 伸寿 カザフスタン側監督:エルラン・ヌルムハムベトフ
撮影監督:ムラト・ヌグマノフ ⾳声監督:アンドレイ・ウラズネフ 写真:松元隼⼈ 製作総指揮:Studio-D
⽇本側製作:蒼⿓舎 カザフスタン側製作:Film Film Film ⽀援:AFF2 ⽂化庁
配給:Studio-D JAPAN 配給協⼒:UPLINK

2023 年/カザフスタン・⽇本・キルギス/110 分/1.85:1/⽩⿊・カラー/DCP/G
©Studio-D

知られざる人物の歴史に触れるお勧め映画