『Winter boy』主役を演じるポール・キルシェ自身の思春期の自我の表現に奇跡的に立ち会うことができる

『Winter boy』主役を演じるポール・キルシェ自身の思春期の自我の表現に奇跡的に立ち会うことができる

2023-12-06 16:47:00

『Winter boy』で描かれるのは、交通事故で父を亡くした家族。残された家族は、17歳のリュカ(ポール・キルシェ)、兄のカンタン(ヴァンサン・ラコスト)、二人の母親イザベル(ジュリエット・ビノシュ)。自ら若くして父親を亡くした経験を持つクリストフ・オノレ監督が自ら父親を演じる。

時折挟み込まれるリュカの映画の中のモノローグについてオノレ監督はこう語る。
「迷いと矛盾を抱え、その思考も曖昧。そして彼の表情からは、物語を紡げるほどの感情は伝わってこない。それは彼の未熟さというよりは、かけがえのない、いじらしさとして、ただ垣間を見られるだけなのです」

300人を超えるオーディションの中から選ばれたポール・キルシェ。劇映画の中の父を亡くした思春期の少年を演じているのだが、 それは、カメラの前で役を演じるポール・キルシェのドキュメンタリーともいえる。

観客は、映画の中と外で変化していくポール・キルシェ自身の思春期の自我の表現に奇跡的に立ち会うことができる。

とうに思春期を通り過ぎた人は、彼の時折見せる無軌道な行動を優しく包み込んで観ることができるだろうし、映画の中のリュカの世界に寄り添おうとする人は、感情を大きく揺さぶられるに違いないだろう。

フランスの雑誌『L'Obs/ロプス』のレビューがこれからポール・キルシェ推しになる人の感情をうまく言語化している。

「ポール・キルシェ、儚くもあり邪悪でもあり、強くありながらいじらしく、 純粋であって尊大でもある......彼は繊細に用意されたスクリーンを裂いて躍動する」


ポール・キルシェ

Paul KIRCHER
リュカ( LUCAS )役
2001年12月30日、フランス・パリに生まれる。父親は俳優であり『肉体の森』などで知られるジェローム・キルシェ、母親は『ふたりのベロニカ』『トリコロール/赤の愛』のイレーヌ・ジャコブ。リセの最終学年だったとき、「T'as pécho ?」(アドリーヌ・ピコー監督)のキャスティング・ディレクターだった人物の目に留まり、主人公の15歳の少年アルチュール役でいきなり主役デビューを飾った超新星。パリ・シテ大学で経済学と地理学を学ぶ一方、マニュファクチュール・デ・アベス劇団の夏期コースで演技を学んだ。そしてʼ21年、本作のオーディションでリュカ役をみごとに射止め、大胆でみずみずしい演技を披露。セザール賞の有望若手男優賞にもノミネートされる。また、サン・セバスティアン国際映画祭において、最年少で最優秀男優賞を獲得した。現在、フランス映画界がもっとも注目する若手俳優。今年のカンヌ映画祭「ある視点」部門にも出品された最新作「Le Règne animal」(イー監督)では、ロマン・デュリスとの共演を果たした。

 

クリストフ・オノレ 監督



クリストフ・オノレ
Christophe Honoré
監督
1970年4月10日、フランス・ブルターニュ地方に生まれる。地元のレンヌ第二大学で文学を学び、さらに映画学校にも通う。’95年、パリに出て、作家としてデビューを飾る。児童文学を主に執筆しているが、処女作「Tout contre Léo」(96)のほか、「L'Infamille」(97)、「La Douceur」(98)など青少年から大人向けの作品も執筆。その一方、映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」へ寄稿し、2002年処女長編「17 Fois Cécile Cassard」を撮る。第2作『ジョルジュ・バタイユ ママン』(04)は熱狂的な支持を得る。その後、21世紀のフレンチ・ミュージカルともいうべき『パリの中で』(06)『愛のうた、パリ』(07)を次々と制作。’08年の『美しいひと』ではリセを舞台にした濃密な恋愛ドラマを描き、’11年の『愛のあしあと』はカトリーヌ・ドヌーヴとキアラ・マストロヤンニの母娘共演によるミュージカルを発表。『ソーリ―・エンジェル』(18)、『今宵、212号室で』(19)が、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品される。また、舞台やオペラの演出家としても知られ、ʼ13年、指揮者・大野和士の依頼によりリヨンの国立歌劇場でプーランクの「カルメル派修道女の対話」の演出を手がけ、ʼ15年には「ペレアスとメリザンド」(大野指揮)の演出も行っている。

 

ストーリー

冬のある夜、17歳のリュカは寄宿舎からアルプスの麓にある家に連れ戻される。父親が事故で急死したのだ。大きな悲しみと喪失感を抱えるリュカ。葬儀の後、はじめて訪れたパリで、兄の同居人で年上のアーティスト、リリオと出会う。優しいリリオにリュカは心惹かれるが、彼にはリュカに知られたくない秘密があった。そして、パリでの刺激的な日々が、リュカの心に新たな嵐を巻き起こす――。

 

『Winter boy』予告編



公式サイト

 

2023年12月8日(金) シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、アップリンク京都、ほか全国順次ロードショー

 

監督・脚本:クリストフ・オノレ『愛のあしあと』
音楽:半野喜弘『娼年』『窮鼠はチーズの夢を見る』
出演:ポール・キルシェ、ジュリエット・ビノシュ『トリコロール/青の愛』『真実』、ヴァンサン・ラコスト『アマンダと僕』、エルヴァン・ケポア・ファレ

原題:Le lycéen /2022/フランス/フランス語/2.39:1 /5.1ch/122分/日本語字幕:横井和子

配給:セテラ・インターナショナル
協力:Unifrance/French Film Season in J apan 2023

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