『さよなら ほやマン』不器用だがピュアな兄弟と謎の漫画家3人が本気でスクリーンの中で生きる姿を見て感じる映画

『さよなら ほやマン』不器用だがピュアな兄弟と謎の漫画家3人が本気でスクリーンの中で生きる姿を見て感じる映画

2023-10-31 22:54:00

『さよなら ほやマン』は、宮城県の離島で暮らすアフロが演じるアキラ、その弟を黒崎煌代演じるシゲル、そして本土からやってきた漫画家を呉城久美演じる美春がスクリーンの中で本気で生きている姿を見て、感じる映画だ。

東日本大震災で行方不明となった両親が残した一軒家に住む兄弟、そこに突然現れ、その家を買いたいという漫画家。兄弟は、Youtuberとしてほやマンになったり、美春は、前金50万円をいきなり払って住み始めるなど、まあ、彼らの行動は不器用そのものだ。

”不器用だがピュア”という形容があるが、その反対はどういう形容かと考えると”器用で不純”となる。この世の中で生きていくには、器用に世間に合わせて、本音は心の奥底に抑えて、建前で生きていく方が波風立たない生き方だろう。ならば、アキラ、シゲル、美春の3人は不器用だがピュアに生きている。

配給会社の宣伝コピー「人生大ピンチの兄弟と漫画家、 ありえない出会いはやがて、最強の絆で奇跡を起こす!  家族の再生を描いた純度100%の感動作」には嘘偽りない。

アキラを演じるにあたって、アフロはこうコメントを寄せている。
「演技に長けている人は他にいたはずだ。 それでも『お前じゃなきゃダメだ』と言ってくれた。 それは『音楽で晒している生き様をそのままぶつけろ』という、 監督から与えられた使命だと思った。 生き様でナメられたくないから、台本を気が遠くなる程に読み込んだ。 あたり構わず教えを乞うた。 小型船舶の免許を取得し、ロープの繋ぎ方を覚え、素潜りのスクールにも行った。 その結果、俺は良い役者になれたのか。それはわからない。 だけど、完成した作品を前に確信した。 俺じゃなきゃダメだった。
『初めてにしては良くやった』なんて生易しいものじゃない。 アキラの葛藤は俺のものだった。 これまでの自分のキャリアの全てを注ぎ込めたこと、誇りに思います」

アップリンク吉祥寺では、公開前の週末にアフロ自身が宣伝のためにチラシを配っている姿を見かけた方は多いだろうが、今後は、上映後のスクリーン前に登場するというので、上映予定表をチェックしたいただき、映画館にアフロ=アキラの生きている姿を確かめにきてほしい。

また、アップリンク吉祥寺ではホヤの出汁を使ったクラフトビールも販売しているので映画鑑賞のお供にどうぞ。


庄司輝秋 監督コメント


やりたいことをやる。それこそが自らの人生を取り戻すきっかけ

ゆるやかにはじまって取り返しのつかなくなった挫折があった。それで自分の人生はこんなもんだとあきらめて、小さな幸せを見つけて暮らしていこうとしていた矢先に、映画を撮るチャンスが訪れた。

シナリオを書き始めると、登場人物たちは宿命にあらがい、それぞれの人生を奪い返そうと奮闘していた。もがいていた。彼らの一生懸命さや熱量は、実のところ私自身が一番欲していたものだった。

初主演のミュージシャン、初ヒロインの俳優、デビュー作の20歳の青年、初監督の私、今回集まったメンバーには共通して、この映画で自分を世界にみせつけてやる、という一生懸命さと熱量があった。それらが役柄と一体となって、この映画に魂を宿らせたと思っている。

3週間にわたる宮城・網地島での合宿生活は奇跡的なエネルギーに満ちていた。海も空も私たちの味方だった。スタッフも島の仲間たちも映画づくりという幸福な祝祭の中にいた。

クランクアップした後、主演・アフロ(MOROHA)が発した「生まれ変わった気分だ」という言葉が忘れられない。私自身も、砕け散る覚悟で撮影に臨んだが、撮影を終えた時には驚くほど活力に溢れていた。とても晴れやかな気持ちだった。

理屈に合わなくても、無茶苦茶でも、誰に何と言われても、まずは自分のやりたいことをやる。それこそが自らの人生を取り戻すきっかけになると私は信じている。コスパも、タイパも、物事をスムーズに進めるために誰かが作ったマニュアルも便利だろうけど、あなたの命を輝かすことなんてできない。絶対に。

この映画が、誰かの人生に希望の予感と“もがいてみる勇気” を与えられたなら最大の喜びである。

最後に、ふるさとを育み、そして奪った美しい宮城の海に、この映画を思いっきりぶつけたい。感謝と畏怖を込めて。

 

庄司輝秋(しょうじ てるあき)
監督・脚本
映画監督、CMディレクター。
1980年9月19日宮城県石巻市生まれ。東京造形大学彫刻科卒。大学卒業後、広告制作・映像制作に関わる。
SSFF&ASIA2009 短編映画『LINE』を発表。2013年、石巻を物語の地とした短編映画『んで、全部、海さ流した。』
(ndjc2012作品)を単独で全国劇場公開。 本作が長編劇場デビュー作となる。

 

ストーリー

誰かのために生きたことがある人へ

金なし、夢みる余裕なし、崖っぷち。
いよいよ、自分と向き合う時がきた。

豊かな海に囲まれた美しい島で、一人前の漁師を目指すアキラは、「ほや」を獲るのが夏の間の仕事だ。船に乗ることができない弟のシゲルと2人、島の人々に助けられてなんとか暮らしてきたが、今も行方不明の両親と莫大な借金で人生大ピンチに直面中。そんな折、都会からふらりと島にやってきたワケありっぽい女性、漫画家の美晴が兄弟の目の前に現れた。「この家、 私に売ってくれない?」その一言から、まさかの奇妙な共同生活が始まる。3 人のありえない出会い、それは最強の奇跡の始まりだった──。

 

『さよなら ほやマン』予告編


公式サイト

 

2023年11月3日(金・祝) 新宿ピカデリー、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

Cast
アフロ(MOROHA) 呉城久美 黒崎煌代
津田寛治 松金よね子

Staff
監督・脚本:庄司輝秋
音楽:大友良英 「あまちゃん」「いだてん」
エンディングテーマ:BO GUMBOS「あこがれの地へ」(EPIC RECORDS)
アニメーション:Carine Khalife
製作:シグロ/オフィス・シロウズ/Rooftop/ロングライド
制作プロダクション:シグロ/オフィス・シロウズ 
配給:ロングライド/シグロ 

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