『こいびとのみつけかた』大人たちの内なる子供に捧ぐ、ほっこりと心を満たしてくれる映画

『こいびとのみつけかた』大人たちの内なる子供に捧ぐ、ほっこりと心を満たしてくれる映画

2023-10-23 18:03:00

世の中に馴染めない変わり者の男女が、二人にしかわからない世界を築きながら、絆を深めていくラブストーリー。

監督を務めるのは、長編劇場映画デビュー作『婚前特急』で、第3回TAMA映画賞最優秀新進監督賞受賞、第33回ヨコハマ映画祭新人監督賞、第21回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞などを受賞し、話題となった前田弘二。脚本は、『さよなら渓谷』、『そこのみにて光輝く』、『死刑に至る病』などの高田亮。前田監督と脚本家高田の二人は、これまでも『婚前特急』、『わたしのハワイの歩きかた』『まともじゃないのは君も一緒』などでタッグを組んできた。

本作について高田はこう語る。「今、世の中は何かと窮屈ですし、漠然とした不安感もある。戦争が近づいてきている雰囲気もあります。そういうことに対する恐怖心も、ありのままに表現しました。そんな時に逃げ込みたい場所を、もしかしたら自分たちも映画の中に作れるかもしれないという気持ちもありました。それが、あの理髪店です」

主人公トワを演じるのは『夏、至るころ』(20)、『衝動』(21)、『OUT』(23)と主演作が続く注目の若手、倉悠貴。相手役の園子には『ソワレ』(20)、『ひらいて』(21)などの実力派、芋生悠。

新聞で作ったたくさんのオリジナル生物のオブジェを眺めながら、トワが「彫刻家なんだね?」と訊くと、園子はこう答える。「ううん、歌手。人はみんな1曲だけ自分の歌を持ってるの。だからみんな、生まれつき歌手なんだよ」「歌手の人が何曲も作るのも、自分だけの一曲を探してるからなんだよ。私も、まだ私の歌が見つかってない」

こんなさりげない1シーンに散りばめられた、さりげなく心に響く言葉たち。これらが、玉ねぎの皮をむくように観客の心の殻を一枚一枚剥いでゆく。

空気が読めないと噂される2人のピュアでいびつな、でもふたりにとってはナチュラルで有意義な極上の関係。本作は、そんな素の心で向き合える関係があなたにもあるよと、そんな2人だからこそ作り出せる世界、描ける未来があるよと、そっと背中を押してくれる。すべての大人たちの内なる子供に捧げたい、やさしくやわらかくほっこりと心を満たしてくれる映画だ。

前田弘二 監督インタビュー


――脚本を読んだ時の気持ち
高田さんの脚本を読み終わった時、こんな世界があってもいいよねと気持ちが軽くなりました。トワが木の葉を並べたら、それを追って園子がやって来て、二人でケーキと餃子を食べて、ただ「おいしいね」と言い合う。それだけで成立する関係性に感動して、『この二人に会いたい』と強く思いました。
いろんな要素が盛りだくさんにあって、今撮らなければいけないと感じました。『まともじゃないのは君も一緒』の時もそうでしたが、へんてこな物語です。へんてこなものを、なるべくへんてこなまま出さないと壊れてしまう。ジャッジしようがないものも含めて、このままの形で届けたいと思いました。

――主人公のトワと園子を演じた、倉悠貴と芋生悠の演技について
まっすぐ演じてくれているのを見て、こちらが余計な面白みを出そうとするとわざとらしくなるので、この空気を汚さないようにしようという気持ちになりました。素直な二人の演技を、邪魔しないように見届けようと思いました。

――トワが園子を誘い出すため落ち葉を並べるシーンでのエピソード
苦労したのは、木の葉をどうするかですね。緑の葉っぱは地面が暗いと埋もれるし、落ち葉の茶色は全然画にならない。季節柄、黄色い葉っぱがいいのではと置いてみたら、目立ちました。撮影当日の朝に、監督補の薮下くんと懐中電灯を持って神社へ出掛け、黄色い葉っぱを集めました。

――本作に込めた想い
観てくださった方が、少しでも楽になる作品になっていれば、いいなと思います。

 

前田弘二
監督
1978年2月21日生まれ、鹿児島県種子島出身。独学で映画作りを始め、自主製作短編『女』『鵜野』がひろしま映像展2005でグランプリと演技賞のW受賞、『古奈子は男選びが悪い』が第10回水戸短編映像祭でグランプリを受賞する。2007年には、テアトル新宿にて『女 前田弘二監督特集』がレイトショー公開され、一週間で1000人の観客動員を記録。翌年には、ドイツのフランクフルトで開催される映画祭『Nippon Connection』にて『Maeda Koji special』が特集上映された。2011年に『婚前特急』で劇場公開映画の監督としてデビュー。第33回ヨコハマ映画祭新人監督賞、第21回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞、第3回TAMA映画賞を受賞する。また、主演の吉高由里子がヨコハマ映画祭主演女優賞、出演者の浜野謙太も同新人賞に輝く。その後も『わたしのハワイの歩きかた』(14)、『夫婦フーフー日記』(15)などコンスタントに作品を発表し、2016年には角川映画40周年記念作品『セーラー服と機関銃 -卒業-』の監督に抜擢される。2018年、川口春奈主演のAmazonプライムオリジナルドラマ「しろときいろ」、2021年には成田凌・清原果耶W主演『まともじゃないのは君も一緒』を手掛けた。

 

ストーリー

変わり者のトワと変わり者の園子。二人にしか分からない世界。
二人にしか分からなくていい関係を作り出すラブストーリー。

コンビニで働く女の人・園子に片想いをしているトワは、毎日植木屋で働きながら、彼女がどんな人か想像している。朝起きてすぐ元気なんじゃないか、一緒に歩いてても置いていかれるんじゃないか、でもその後ろ姿はすごくかわいいんじゃないか。園子を見つけるまでの彼は、恋人を作りたいと思ったことはなかった。考える時間がなくなってしまうからだ。彼は気になる記事をポケットいっぱいに詰め込んで、イギリスのEU離脱やミツバチが絶滅したら人類が滅亡することを気にかけていた。でも今は園子のことで頭がいっぱいだ。話せるようになったら何を話そう。その前にどうやって話しかけよう。

彼がついに思いついたのは、木の葉をコンビニの前から自分がいる場所まで並べて、彼女を誘うことだった。二人は、言葉を交わすようになり、周囲にはよく理解できない会話でその仲を深めていくのだが、園子にはトワにうまく言い出せないことがあり……。


『こいびとのみつけかた』予告編


公式サイト

 

2023年10月27日(金) 新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

監督:前田弘二  脚本:高田亮  音楽:モリコネン
出演:倉悠貴 芋生悠 / 川瀬陽太 奥野瑛太 高田里穂 松井愛莉 並木愛枝 小沢まゆ / 成田凌 宇野祥平

2023年/日本/99分/5.1ch/スタンダード

制作プロダクション:ジョーカーフィルムズ、ポトフ
企画・製作・配給:ジョーカーフィルムズ

©JOKER FILMS INC.

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