『宇宙探索編集部』中国Z世代監督によるSFフェイク・ドキュメンタリー風劇映画

『宇宙探索編集部』中国Z世代監督によるSFフェイク・ドキュメンタリー風劇映画

2023-10-11 18:52:00

『宇宙探索編集部』のコン・ダーシャン監督は1990年生まれの物心ついた時にはインターネットがあったZ世代監督。
北京電影学院の卒業制作である本作が、アリババ、チャイナ・フィルム、ワンダといったメジャー会社が参加して中国の一般劇場で全国配給されヒット。宇宙人の存在を信じる雑誌の編集長を主人公にしたSFフェイク・ドキュメンタリー風劇映画だが、監督曰く、映画館で自分の作品を見た時に、大手映画会社のクレジットを見て、それが一番SFだったと言っている。

恐らく中国では公開されていないと思われるフェイクドキュメンタリーの『ブレア・ウッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』『シェアハウス・ウイズ・バンパイア』などの作品名が監督インタビューに自然に出てくるのは、インターネットの普及以降、カルチャーの世界平均化が進んでいる証だろう。中国映画の幅の広さを教えてくれる映画だ。

ガチ宇宙飛行士の 山崎直子さんと本作の主人公に自分を重ねた『月刊ムー』の編集長三上丈晴さんは以下のようにコメントしている。

つい笑ってしまう描写の中にある、宇宙への壮大な想い。それは、人類にとって普遍的かつ究極の問いかもしれません。宇宙も謎ですが、私たち人類も謎だらけ。だからこそ愛おしい。山崎直子(宇宙飛行士)

人は、なぜ未知なるものに魅かれるのか。その答えが、この映画にはある。UFOを通して、人生の意味を知る。都市伝説を超えたヒューマンドラマだ。気がつけば、UFO雑誌の編集者である主人公に自分を重ねていた。
三上丈晴(月刊ムー 編集長)

 

コン・ダーシャン 監督インタビュー


──あなたはもともとSF映画やUFOに関心があったのですか?

監督:いえ。SF小説についても、恥ずかしながら、あまり知りませんでした。この映画の脚本を書く過程で読み始めました。最初は参考程度でしたが、読んでいくうちにこのジャンルに興味が湧いてきて、かなり読みました。

──あなた自身は、UFOや宇宙人を見た経験はありますか?

ありません(笑)。でも子供の頃は、みんな、そういう未知の世界に興味があるものですよね。ところが大人になると、だんだんその気持ちを忘れていく。(主人公の)タン・ジージュンは、子供の頃の気持ちをずっと忘れずに探求しつづけている人なんです。

──では、この映画をつくるきっかけは?

北京電影学院監督学科の大学院生だったんですが、卒業するときに長編映画を1本作って提出しなければならないんです。それがきっかけになって、どんな映画を撮ろうかと考え始めて、たまたまその時にあるニュースを目にしました。映画の中にも取り入れたんですが、ある村の住民が「宇宙人を捕まえたので、皆さん、ぜひ僕のところに取材に来てください」とマスメディアに連絡し、そうしたらたくさんの記者たちが彼の家にやってきた。ところが彼が見せたのは、冷凍庫の中に保管されていたシリコンのおもちゃだったというニュースです。それがすごく興味深くて、この映画のきっかけになりました。

──今振り返って、なぜそのニュースに惹かれたのだと思いますか?

宇宙人を捕まえたいきさつを語る彼の様子は真剣そのもので、とても真実味があったんです。この人が他人を騙そうとしているなんて全然思えない。この上なく誠実に語っているように見える。実際に話していることは荒唐無稽なのにね。このギャップが、僕にはすごく面白かった。中国語の言い方でいえば「一本正経的胡説八道——あり得ない話を大まじめに語る」です。突拍子もないことを、とても真面目に、誠実に語る。このギャップに惹かれてしまったんです。

──編集部のモデルは雑誌[飛碟探索]だということですね。

脚本を書き始めた頃から、宇宙人を探す話にしようとは思っていました。では、今の時代、宇宙人探しに興味を持つ人が一体どこにいるのだろうか。僕は本能的に、2、30年前に中国で流行った[飛碟探索]などの宇宙雑誌を連想しました。その読者や編集者が、UFOに一番興味を持っていた人々だろうと。そして、30年後の今もUFOや宇宙人を探すことに変わらず夢中になっている人がいるとしたら、それはとても異質な人、現代社会と相容れない人に違いない、と想像しました。それで、(過去の時代ではなく)今の社会の中で宇宙人を探す人物を描いた方が面白いだろうと考えたんです。

──この映画のスタイルは「フェイクドキュメンタリー」と言えますが、このスタイルで撮影した理由を教えてください。

ドキュメンタリーは絶対的な本物、完全なリアルとして規定されますよね。一方で、この映画で語られる物語は荒唐無稽です。完全な本物を映す手法で、突拍子もない物語を撮る。このギャップが好きなんです。もう一つの理由は、登場人物たちと一緒に旅をしているような感覚、観客の作品への没入感をより強くするためです。観客に本当に彼らと一緒にこの旅を経験しているように感じてほしいと考えました。

──撮影現場はカオスだったとか?

確かに、僕の現場はかなりカオスだったでしょうね(笑)。フェイクドキュメンタリーなので、カメラは全部手持ちで、360度、いつどこにカメラが向くか分からない。僕はどこかに隠れているか、隠れる場所がなければカメラマンの後ろにぴったりとくっついて一緒に動かなくちゃいけなかった。しかも、モニターを手に持って見ながらね。そうやって足元の悪い泥道や山の中を歩き回ったわけです。撮影のときは慌てふためいていましたよ。

──ロイ・アンダーソンやアキ・カウリスマキが好きとインタビューで答えていらっしゃるのを読みましたが、他に影響を受けた監督はいますか?

もちろんです。映画を勉強しはじめた頃は岩井俊二監督が好きで、その後は中島哲也監督も好きになりました。他にもたくさんいますよ。宮藤官九郎監督、それに安藤桃子監督も好きです。安藤監督の『0.5ミリ』が大好きなんですよ。北野武や小津安二郎の影響も受けています。中国なら、チアン・ウェン監督、ニン・ハオ監督が大好きです。

──日本の映画人で一緒に仕事してみたい俳優はいますか?

蒼井優さん(即答)。岩井監督の映画の蒼井さんが大好きなんです。

──今の中国映画界の主流にいる監督たちと、自分を比べると、かなり違うと感じているところはありますか?

僕の作品はとても変な映画でしょうね(笑)。定義しにくい映画だと思います。SFかというとそれだけでもないし、じゃあコメディかといえば、万人受けするような笑いというわけでもない。スタンダードなコメディとは何か違う。ジャンル的に定義しにくいと思います。

──今後もそういう道を進もうと思いますか?

いえ、別に他の監督と違う存在でありたいとは思っていません。僕が興味を持っているのは、その作品にとって最もふさわしい方法をいかにして見つけ出すか、ただそれだけです。

──以前のインタビューで「次回作の予定はない」と答えていましたが、今も予定はないのですか?

今もです(笑)。

──どうしてですか?

怠け者だからですかね(笑)。今、この映画の中国公開が終わったばかりで、ようやく休む時間ができたんです。この映画を口実にしていろんな場所に旅することができますから。

──ところで監督は、孔子(「論語」で有名な中国春秋時代の思想家で哲学者)の子孫だと聞いたのですが、本当ですか?

本当です。僕は、山東省の曲阜(孔子の故郷)の出身で、75代目にあたる子孫です。孔子の子孫は110代まで名前にどの漢字を使うかが決まっていて、75代目は「祥」の字なので、僕の本名は孔祥山なんです。なぜ祥を使わずに、大山(ダーシャン)を監督名にしているのかというと……ダーシャン(大山)は子供時代の呼び名で、この方が“かわいい”と思ったからです(笑)。

 

コン・ダーシャン
[孔大山] Kong Dashan
監督・共同脚本
1990年生まれ。2011年、四川伝媒学院の卒業制作として短編『少年馬力傲的煩悩』を、卒業後の2014年には『長夜将尽』を監督。2015年、北京電影学院の大学院に入学。『法制未来時(法制の未来形)』(2015)、『親密愛人』(2016)、『春天, 老師們走了』(2017)などの短編を撮り、注目を集める。初の長編監督作となる本作『宇宙探索編集部』は平遥国際映画祭で最優秀作品賞、北京国際映画祭の「注目未来」部門の作品賞を受賞。中国を代表する映画批評誌「青年電影手冊」が選ぶ2022年の「今年の監督」、「今年の脚本家」賞に輝き、2023年Weibo映画賞でも「今年の新鋭監督」に選ばれるなど、現在中国で最も期待を集める若手監督の一人となっている。

 

ストーリー

かつては時代の波に乗りメディアにもてはやされ活気のあったUFO雑誌[宇宙探索]。今や編集部員も減り廃刊寸前、電気代さえ払えないほどの存続の危機を迎えていた。そんな時、[宇宙探索]編集長のタンは、中国西部の村に宇宙人が現れたという情報を掴み、仲間たちを引き連れて西へと向かう。そこで彼らを待ち受けていたのは、予想と人智をはるかに超えた出来事だった……果たしてタンたちは宇宙人に出会えるのか? そして、タンの心の奥にある想いとは?



『宇宙探索編集部』予告編

 

公式サイト

 

2023年10月13日(金) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

監督:コン・ダーシャン(孔大山)
出演:ヤン・ハオユー(楊皓宇)、アイ・リーヤー(艾麗婭)、ワン・イートン(王一通)、ジャン・チーミン(蒋奇明)、ション・チェンチェン(盛晨晨)

原題:宇宙探索編輯部|英語題:Journey to the West|2021|中国映画|118分|1.78:1|5.1ch

字幕:磯尚太郎 字幕協力:大阪大学外国語学部 古川裕
配給:ムヴィオラ

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