映画を何度もハグしたくなり、最後は映画にハグされるような圧倒的な多幸感― 『カモン カモン』マイク・ミルズ監督、ホアキン・フェニックス主演
ホアキン・フェニックスが『ジョーカー』の次に選んだのは、マイク・ミルズ監督の『カモン カモン』でダークヒーローから一転して、限りなく優しい大人を演じるが、ある意味どちらも人間というコインの裏表とも言える。NYを拠点にアメリカを飛び回るラジオジャーナリストのジョニーは、LAに住む妹が家を留守にする数日間、9歳の甥・ジェシーの面倒を見ることに。それは彼にとって、子育ての厳しさを味わうと同時に、驚きに満ち溢れたかけがえのない体験となるー
フェニックスが、本作に出演を決めた理由をこう語る。「ミルズ監督から脚本が送られてきて、非常に興味深く、無限の可能性があるように感じた。自分が共感できると思えるような瞬間とか、無限の可能性があるように感じたのが大きかった。で、脚本が好きだったから、監督に会いたいと思ったんだ。監督と会ってみて、僕が好きになれる人かどうかってことが大事で、ミルズ監督なら一緒にクリエイティブなことができると思え、自分からなにか今までとは違う何かを引き出してくれ、新しい視点を与えてくれると思った」。
【マイク・ミルズ監督、ホアキン・フェニックス』
ウディ・ノーマン演じる9歳の甥ジェシーの叔父ジョニーを演じたことについては「叔父というのは、友達みたいな存在なんだよ。この映画には、たとえ親でなくとも、子供に残す世界やとるべき行動について、僕たち全員が子供に対して責任があるということを描いていると思う。準備のために、僕の甥っ子にインタビューをして録音してみたんだ。非常に立ち入った質問だったし、すごく居心地が悪かったんじゃないかと思ってね。それで、終わった後に感想を聞いたら『すごくよかったよ、これまで叔父さんが聞いたことがないようなことを聞いてくれたから』って言ってくれたんだよね。僕自身は、これまで自分のインタビューが録音されているということに関していつも奇妙に思っていたんだけど、今回インタビューの力を知ったように思う。経験上、インタビューで大変なのは、それに応えなくちゃいけない自分のほうだと思っていたんだ(笑)。インタビューをする方は、楽しくて簡単なはずだってね。だけど実際にやってみたら、少なくとも僕にとっては質問をするのは実はすごく難しいとわかった(笑)」
『カモン カモン』予告編
マイク・ミルズ監督、ホアキン・フェニックス舞台挨拶
ニューヨーク・フィルムフェスティバル@リンカーンセンター
ーー自分の子供との会話から生まれた『カモン カモン』のオリジナル・アイデアはどのようにして生まれたのですか?
マイク・ミルズ:僕にとって良い映画を作る唯一の方法は、自分がよく観るもの、知っていること、関係性があることについて作ることだと思っています。ある晩、娘のホッパーをバスタブに入れているとき、私はこう思ったのです。子供をお風呂に入れる映画を作ろうかな、それはとてもおかしいのですけど。それって人が大きくなった時の話なのって言われたんですよ。そういうのは、全部は撮影できないけど、ちょっとしたある一コマなら映画にできるんじゃないかなと。
それで、自分の子供との関係だけでなく、すべての子供たちとの関係が始まったのです。私の子供が連れてきたすべての子供たち、他の母親、特に父親、両親、教師は、自分にとって多くのことを意味する世界です。
ーー子役のウディ・ノーマンはどうでしたか?
ホアキン・フェニックス:彼には感銘を受けたよ。彼はこの映画で演技をすることに関しての一種のバロメーターだったと思います。ミルズとこのプロジェクトに取り組むにあたって、僕もミルズも、自然でリアルに見えることを目標としてたのですが、でも、自然な演技をしている、というものにはしたくなかった。。どう説明したらいいのかわからなかったのです。どう説明したらいいのかわかりませんが、演技のようでありながら、自然な演技というか…、ある種の演技のスタイルみたいなものです。そんな中で、ウディがどうやればいいのかという例となり、毎日僕の目の前にいてくれた。
彼が目標を示してくれて、色々な意味で僕のガイドになってくれた。この映画の役作り、演技、制作過程で、僕にとって大事だったのは、ウディのやっていることをしっかりと聴くことでした。そして、彼のやったことを受けて反応するということ。ミルズは、本当に素晴らしかった。クリエイティブな表現をしやすい現場を作り、ウディが表現しやすいように計らい、そしてジェシーというキャラクターを作り上げていきました。
ーー『カモン カモン』をモノクロにした理由は?
マイク・ミルズ:モノクロ映画が好きで憧れています。モノクロ映画は映画の中でも違う"種"だと思います。私は、いつもその”種”と戯れたいと思い、そのことを頭の中で考えています。この映画は、ドキュメンタリーの手法で撮影したところもあり、とても現実的です。
一方、この映画は、寓話のようでもあり、大人と子供のおとぎ話の原型的なイメージのようなものでもあります。白と黒の絵が、現実世界から引き離すように強めたかった。それは、抽象化を強化することで、少なくとも映画監督である私の頭の中を納得させたかった。
そして、この映画は、ペインティング(絵画)ではなくドローイング(素描)なのです。
4月22日(金)TOHO シネマズ 日比谷他全国ロードショー
監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト
アメリカ/108分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.