『バーナデット ママは行方不明』かつて天才建築家として認められながらも夢を諦めた主婦の人生リスタート物語
かつて天才建築家として認められながらも夢を諦め、現在はシアトルに暮らす主婦バーナデットの、現実逃避から始まった南極への旅。この旅で再び創造する喜びに出会う彼女の人生リセット&リスタート物語である。本作は、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーに約1年間リスト入りした、アメリカの作家マリア・センプルによる小説『バーナデットをさがせ!』の映画化だ。
監督を務めるのは、劇映画でありながら主役の少年が大人になるまでの12年間を撮り続けたという『6オのボクが、大人になるまで。』で話題となったリチャード・リンクレイター。この作品はアカデミー賞®6部門にノミネートされ、ゴールデングロープ賞作品賞と監督賞、ベルリン国際映画祭監督賞を受賞した。主人公のバーナデットには、アカデミー賞®8度ノミネート2度受賞、ゴールデングロープ賞12度ノミネート4度受賞など、華麗な受賞歴を誇る女優ケイト・プランシェット。夫のエルジーには、『スポットライト世紀のスクープ』のビリー・クラダップ。娘のビーには本作が映画デビュー作となるエマ・ネルソン。
監督もケイト・プランシェットも、まずこのストーリーの虜になったそうだ。本作の主人公“バーナデット”は、彼女が自ら演じたいと熱望したのだという。また、グリーンバックで撮影し合成する予定だった南極のシーンでは、「海と氷は本物であるべき」というケイト・ブランシェットの強い希望で、グリーンランドでのロケが実現。巨大な氷山の広がる光景は、観る者に圧倒的開放感を与えてくれる。
なんといっても心憎いのは、南極への旅というロマン溢れるストーリーとアメリカらしいスケール感、主人公はかつて名を馳せた建築家でありながら、かつどこにでもいそうな人付き合いの苦手な「ママ」という卑近な設定。テーマソングには1984年に日本でも大ヒットしたシンディ・ローパーの「タイム・ アフター・タイム」。これらすべての要素が相まって、「人生は何度だってリスタートできるよ」と背中を押してくれる。周囲に振り回され、自分を見失ってもがいている多くの主婦たちへ、今すぐにでも贈りたい人生讃歌だ。
リチャード・リンクレイター 監督コメント
原作に一番惹かれたのは、芸術家やクリエイティブな仕事をしている人間が、様々な理由から創造することをやめてしまうという発想でした。クリエイターとして、僕自身にも経験があります。人生が停滞しているような感覚で、とても恐ろしいことでした。こんな言葉を聞いたことがありますか? 「世界で最も危険な人物は、仕事がない芸術家だ」。
本作の企画を立ち上げた時からの僕のミッションは、「誰かを完全に知ることはできなくても、知ろうとすることはできる」という原作の最初の文章を、映像で描くことでした。主人公のバーナデットは、非常に魅力的な人物です。周囲とうまく付き合えない女性でありながら、多くの人々の声を代弁する存在でもあります。だからこそ、バーナデットのことを皆さんに知ろうとしてほしい。映画を観た人に、彼女のことを理解してもらえるとうれしいですね。バーナデットというキャラクターに対して、実は個人的な結びつきもありました。僕の母親がバーナデットのように、何日も家族を置いて家を出たことが何度かあったのです。僕の母も頭が切れるけれど、少し突飛なところがある人なので、バーナデットを身近に感じることができました。
バーナデットが自分の芸術を実践できない理由の一つに、娘の存在があります。自分がこの世に送り出した小さな人間が、無事に育つまで見守らなければならないと決心しているのです。でも、いずれその子も社会に出て自立し、親も自分の道を歩まなければなりません。これは、バーナデットが自分を再発見するまでの物語です。20年間も見失っていたから、簡単にはいきませんが。僕の母にもきっと夢があったのだと思います。でも、母の世代は子育てが優先で、キャリアは後回しでした。母の夢を僕たち子供が邪魔しているのではないかと、悩んだこともありました。だから、バーナデットの未来を明る<描くことができて、よかったと思っています。
リチャード・リンクレイター
RICHARD LINKLATER
監督・脚本
1960年、アメリカ、テキサス州生まれ。88年に長編デビュー。2作目『Slacker』がサンダンス映画祭で絶賛され注目を浴び、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー主演の『恋人までの距離(ディスタンス)』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。『ビフォア・サンセット』、『ビフォア・ミッドナイト』とあわせ“ビフォア・シリーズ”として日本でもファンが多い。その他『バッド・チューニング』、『スキャナー・ダークリー』、『スクール・オブ・ロック』、『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』など幅広い作風で世界を魅了する。『6才のボクが、大人になるまで。』で2度目の銀熊賞を受賞した。近作に、アポロ計画を題材にした『アポロ10号1/2 宇宙時代のアドベンチャー』。『Hitman』は2023年のヴェネチア国際映画祭でプレミア上映される。
ストーリー
シアトルに暮らす主婦のバーナデット。
夫のエルジーは一流IT企業に勤め、娘のビーとは親友のような関係で、
幸せな毎日を送っているように見えた。
だが、バーナデットは極度の人間嫌いで、隣人やママ友たちとうまく付き合えない。
かつて天才建築家としてもてはやされたが、夢を諦めた過去があった。
日に日に息苦しさが募る中、
ある事件をきっかけに、
この退屈な世界に生きることに限界を感じたバーナデットは、
忽然と姿を消す。
彼女が向かった先、それは南極だった──!
『バーナデット ママは行方不明』予告編
公式サイト
2023年9月22日(金) 新宿ピカデリー、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
脚本:ホリー・ジェント、ヴィンス・パルモ
出演:ケイト・ブランシェット、ビリー・クラダップ、エマ・ネルソン、クリステン・ウィグ
2019年/アメリカ/英語/カラー/ビスタ/108分/原題:Where’d You Go, Bernadette/日本語字幕:石田泰子
配給:ロングライド
提供:バップ、ロングライド
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