『世界のはしっこ、ちいさな教室』子どもたちの教育に奮闘する女性教師たちの姿を『世界の果ての通学路』製作チームが追う感動の教室ドキュメンタリー!
日本でも大ヒットした『世界の果ての通学路』(2012)の製作チームが、今度は世界の果ての先生に注目した。今回、舞台になるのは3か国の学校。ソーラー発電はあっても、水道とガスはなく、スマホの電波も途切れがちなブルキナファソのティオガガラ村。シベリアの雪原で伝統的な遊牧民生活を送るエヴェンキ族のキャンプ地。年の半分は洪水で土地が消えるバングラデシュのスナムガンジ地方の農村。赴任するだけでも一苦労の僻地ばかりだが、「子どもたちには明るい未来がある」と、3人の先生は熱意、工夫、根気で教壇に立つ。相談相手になる同僚はおらず、時には無理難題を吹っかける保護者も相手にすることもある。孤立無縁の状況に心が折れかける先生を救うのは、日々進化する子どもたちだ。
3人の先生たちの奮闘を見守るのは、前作「MON MAITRE D'ECOLE」で、定年退職間近の恩師の風変わりな授業を記録したドキュメンタリー作品で高評価を得たエミリー・テロン監督。監督本人や教え子に影響を与えてくれた恩師のように、世界のどこかで希望の種を植える先生に密着するプロジェクトは、教育支援団体やジャーナリストなどの協力を得て実現した。
© Winds - France 2 Cinéma - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendôme Production
エミリー・テロン監督インタビュー
ーー映画の始まりについてお聞かせください。
前作『MON MAITRE D'ECOLE』の後、私は再び「伝達」というテーマに取り組みたいと考えていました。よりアクセスしにくく、より複雑な場所で職業を実践することで、子どもたちにより多くのものを与えられることが出来るに違いない。私はこのことについて掘り下げてみたいと思いました。「天職」という概念を探求したかったのです。そんな時に、同じテーマに取り組んでいたプロデューサーのバーセルミー・フォージェアに出会ったのです。
ーー本作の舞台は、ブルキナファソ、バングラデシュ、シベリア。なぜこの3つの場所を選んだのでしょうか?選んだ先生がたまたまその国にいたのですか?それとも地政学的な配慮でしょうか?
ドキュメンタリーの場合、常にアングルの問題があります。本作を作るにあたり、腕に覚えのあるようなベテランの先生を中心に据えたくはなかったのです。先生のデビューの瞬間や、変化を見逃したくなかったからです。そういう意味で、まだ完成されていない人を見つけたかったのです。その上で場所を選びました。アフリカや寒い国、全く違う環境にしたいと思っていました。
ーーこのプロジェクトは、どのように進めたのですか?
3か月間、ジャーナリストと一緒にたくさん調査しました。地域がどこであれ 、教師たちは、同じ困難に直面しています。資源の不足、教育とはしばしば相反する慣習、戦争、気候変動などです。人口が急増しているブルキナファソの場合、識字率を上げるために教師が緊急に派遣される。バングラデシュでは、貧困や伝統的な因習から学習を諦める子どもを減らすために教師が奮闘する。シベリアでは、エヴェンキ族が二重の文化を前提として学習することで、自分たちのルーツの消滅を防ぐ。この3つの例に大変惹かれました。
ーー例えば、サンドリーヌにとっては初めての任務です。彼女がどのように行動するのか、確信はあったのでしょうか?
いいえ、それは分かりませんでした。ですが、彼女が荷物をまとめ、小さな娘と別れたとき、そして、彼女が村に到着して校舎を見たとき、最初の授業、落ち込んだとき、勝利の瞬間・・・素晴らしいことに、私たちは、その瞬間に彼女と一緒に立ち会ったのです。国によって状況や困難は異なります。しかし、私はこの職業の素晴らしさは、変わらないと深く確信しています。
ーーナレーションにカリン・ヴィアールを起用したのは、なぜですか?
私がこの映画に強く望んでいた女優です。彼女の声、少しかすれ気味で、ハスキーで、柔らかい。声の抑揚、時々起こる小さな脱線、どれもとても美しく感動的です。彼女たちの物語は、いかにもパリジェンヌといったような白っぽい分かりやすすぎる声にはしたくなかったのです。彼女のエージェントに連絡すると、すぐに反応してくれて嬉しかったです。
ーー音楽についてお聞かせください。
国ごとに音楽を変えようとは思いませんでした。伝統的すぎたり、 エスニックすぎるのも違うと思いました。逆に、この映画に統一感を持たせるようなサウンドトラックが欲しかったのです。弦楽器や打楽器といった純粋な楽器で構成され、かつ有機的で現代的な音楽です。作曲したレミ・ブーバルは、ヴァイオリンをはじめとする弦楽器の音を、現代風にアレンジしてくれました。
バーセルミー・フォージェア(プロデューサー)インタビュー
ーーパスカル・プリッソン監督の『世界の果ての通学路』から7年後 、本作を 手がけました 。あなたは、世界における教育の役割をもっと大きくしたいと強く願っているようですね。
もちろんです!私たちには、一度や二度は人生観や自分自身を驚くほど変えてくれた先生がいますよね。すぐに名前も挙がるし、逸話だって出てくるものです。初めて先生に注目されたとき、信頼されたとき、自信を与えてもらったとき。先生が運命の扉を開けてくれたこともあったでしょう。そんな日常のヒーローに敬意を表し たいのです。
ーーあなたとエミリー・テロン監督は、同じプロジェクトに取り組んでいるときに出会ったそうですね。
私たちのお互いの映画を配給していたジャン=フランソワ・カミレリ氏が紹介してくれたのです。美しい出会いでした。私たちは、テーブルの上にアイデアを並べました。私たちは共鳴し、すぐにお互いを気に入りました。エミリーは実直で、強く、献身的な、美しい人です。彼女は物事を最後までやり遂げます。彼女の映画は、彼女そのものです。
ーー本作の製作で苦労したのは、どんなところですか?
私たちは3つのレベルで活動しています。ジャーナリストに呼びかけて、この問題に取り組んでいるすべての団体に連絡を取り、 調査を行い、情報を一元化する。ユネスコもその一つで、私たちの大きな助けになっています。同時に、私たちのネットワークであるトラベル・ドキュメンタリーのフィルムメーカーたち、つまり、私たちがよく知る世界中の監督、プロデューサー、共同プロデュー サーの友人たちにも声をかけ、情報を提供してもらいました。そして、総合的に判断するのです。今回は100人の候補を集めて、3人を決定しました。調査には長い時間と手間がかかります。たとえ、最終的に収集した情報の80%を削除しなければならないとわかっていても。これが優れたドキュメンタリーの代償です。
ストーリー
識字率アップが国家の使命である熱帯の僻地の村ブルキナファソの新人教師であり、2人の子どもの母でもあるサンドリーヌ。バングラデシュ北部のモンスーンで水没した農村地帯のボートスクールで、子どもや女性の権利を守るために粘り強く戦う若きフェミニストのタスリマ。広大なシベリアに暮らす現役の遊牧民でありエヴェンキ族の伝統の消滅を危惧するスヴェトラーナ。
彼女たちが直面する困難も個性も三者三様。子どもたちに広い世界を知ってほしいという情熱だけを胸に、家族と離ればなれになっても、両親から反対されても、「子どもたちには明るい未来がある」と、信じる道を進み続ける。先生たちと子どもたちの笑顔に、いつかの自分を思い出す感動の教室ドキュメンタリー。
© Winds - France 2 Cinéma - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendôme Production
『世界のはしっこ、ちいさな教室』予告編〈ショート〉
公式サイト
2023年7月21日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク京都 ほか全国公開
『世界のはしっこ、ちいさな教室』
監督:エミリー・テロン
ナレーション:カリン・ヴィアール
協力:ユネスコ、ÊtreProfプロジェクト、SUR LE CHEMIN DE L’ÉCOLE協会
プロデューサー:バーセルミー・フォージェア、デイジー・G・ニコラ、ルシール・モウラ
アソシエイト・プロデューサー:アンヌ=マリー・アデル、ミシェル・セドゥ―
撮影:シモン・ワーテル
録音:ミシェル・アダミック、ボリス・シャペル、ジュリアン・ロロン
編集:アンヌ・ロリエール、マキシム・ポッツィ=ガルシア、マルゴ・メニエ
音楽:レミ・ブーバル
ブルキナファソの先生:サンドリーヌ・ゾンゴ
シベリアの先生:スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ
バングラデシュの先生:タスリマ・アクテル
フランス映画|フランス語・ロシア語・ベンガル語|2021年|83分|5.1ch|ビスタ| 字幕翻訳:星加久実|原題:Être prof|英題:Teach me If you can
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
© Winds - France 2 Cinéma - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendôme Production