『探偵マーロウ』70歳のアクションスター、リーアム・ニーソンによる〈フィリップ・マーロウ〉が贈るクラシカル・ハードボイルド・ミステリー

『探偵マーロウ』70歳のアクションスター、リーアム・ニーソンによる〈フィリップ・マーロウ〉が贈るクラシカル・ハードボイルド・ミステリー

2023-06-09 09:25:00

探偵フィリップ・マーロウ――作家レイモンド・チャンドラーが1930年代に生み出した『大いなる眠り』(1939年)をはじめとするシリーズ小説の主人公だ。これまでシリーズの多くが実写化、ハンフリー・ボガート、ロバート・ミッチャムなど、数々の名優たちによって演じられてきた。

トレンチコートに帽子を被り、煙草を燻らせるダンディーな出で立ちと、強さと繊細さを兼ね備えたキャラクターが、探偵フィリップ・マーロウのイメージとして定着。「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」など、数多くの名言も生んだ。

そして今回、ブッカー賞受賞作家ジョン・バンヴィル(ベンジャミン・ブラック名義)の『黒い瞳のブロンド』を原作に本作が誕生した。マーロウを演じるのは、今年でデビュー45周年を迎えた70歳のアクションスター、リーアム・ニーソン。”ずっと演じてみたいと思っていた”念願の役どころだったそうで、本作が出演100本目の記念作品である。監督を務めるのは、『クライング・ゲーム』(92)の監督で作家でもあるニール・ジョーダン。共にアイルランド出身であるリーアムとのタッグはこれが4度目となる。

1939 年のロスを舞台にした、上質なクラシカル・ハードボイルド・ミステリー。リーアムの渋みの効いた佇まいは、歴代のマーロウ像を決して裏切らないはずだ。

 

ニール・ジョーダン 監督インタビュー



――映画のスタイルについて

一般的に人々はこういった作品をフィルムノワールと呼ぶのでしょうね。実際本作は白黒ではありません。確かに影を多く描いていますが、色彩豊かに仕上げています。どちらかというとハワード・ホークス監督の『三つ数えろ』よりも『ブレード・ランナー』に作品のスタイルは似ていると思っています。作品の舞台はチャンドラーがLAから構想を得た街でベイ・シティーと呼ばれています。彼は自身のフィクション作品のために街を一つ頭の中で作り上げたんです。なので私たちはこれを絶好の機会と考え、実在しない街を作ることにしました。

――発想について

チャンドラーの小説が元になっている映画はすべて見ました。その中で一番気に入っているのはロバート・アルトマン監督の作品『ロング・グッドバイ』です。設定は1970年代のLAです。本作は映画史においてもっとも軽妙で皮肉めいた作品だと思います。フィリップ・マーロウ役をエリオット・グールドが演じているのですが、彼が演じるマーロウは常に猫のエサを入手することに頭を悩ませているようなタイプでした。他にも70年代のLAの街中をヨガをやっているような裸の女性と歩き回ったり、ドラッグや妙なことをしている人々にいちいち首を突っ込んでいました。でもこう私は解釈することもできるんです: これはロバート・アルトマン監督が他の監督たちがやってこなかったことへ挑戦するために創作した斬新なコンセプトだった。そこで私も軸となる素材は大事にしつつも、思い切って好きなように表現しようと思いました。

――アプローチについて

いくつかありますよ。まずはコルバタ・クラブを作ったことです。我々は(ロケハンで)とても美しいカジノを見つけました。それはヨーロッパ調の建物で、大きなタイルが床に敷き詰められた廊下にアーチがかかっていました。撮影にプールが必要なのでジョン・ビアードと一緒に知恵を絞り、そこにプールを作ることにしました。この独特の雰囲気持つ建物をベースにしてセットを作る作業はワクワクするものでした。もうひとつパラマウントの敷地を除いてLAで実際見ることができなかった景色がブラナス(カタルーニャ州、スペイン)にありました。私たちはそこで見つけた製紙工場を映画の撮影スタジオに変えました。ダブリンをはじめアイルランドと違い、カタルーニャでは古い産業施設も保護していたんです。この製紙工場は保存状態が良く、実は現在も半分だけ稼働しているらしいです。美しいアーチがある建築の中に、思い描いた撮影所のセットをまるっと作り上げる経験は特別なものでした。

――リーアム・ニーソンについて

リーアムとは過去に3, 4回仕事をしたことがあります。リーアムとの最後の作品は『マイケル・コリンズ』。以前アラン(プロデューサーのアラン・モロニー)も関わっていた『プルートで朝食を』でリーアムは後に主人公の父親と判明する神父を演じました。彼の演技は見事で、そこからリーアムと特別な何かの役を作りたい、象徴的存在のマーロウを…と思うようになりました。マーロウと聞くとハンフリー・ボガードやロバート・ミッチャムを思い浮かべるでしょう。それくらいハマり役の役者がいると他の役者は想像できないと思います。しかし私はマーロウこそ素晴らしい冒険になるキャラクターだと思いました。再びリーアムと仕事をするのであればこれだと思っていましたが、本当にその通りでした。

リーアムは素晴らしい俳優で、この数年間も積極的に撮影にのぞみたくさんの役を経験しました。そして今や大御所アクションスターです。ゼロから冒険できるキャラクターをリーアムと作ることができて最高でした。私たちは玉ねぎの皮を一枚ずつ剥くように一緒にマーロウの新たな一面を探しました。チャンドラーが描いたマーロウはおそらくカナダ人かイギリス人だったと思っています。そこで私は最初からリーアムにマーロウは見た目的にアイルランド人だと思うと話し、せっかくならそれを設定に盛り込むことにしました。こうやってマーロウに新たな一面を加えていったんです。この作業は最高でした。マーロウを演じるにあたり、わざわざ言葉にアクセントをつけることはせず、リーアム自身の個性を役に注げる余白を作りました。リーアムとの撮影は本当に刺激的でしたよ。

――ダイアン・クルーガーについて

ダイアンは素晴らしい俳優です。彼女はまるで…彼女はヒッチコックテイストを求めるこちらの要求に応えてくれるんです。ブロンドの髪、透き通った氷のようなブルーの瞳、魅惑いっぱいで刺激的で、ミステリアス。彼女の過去作品をいくつか見てからずっといつか仕事をしたいと熱望していた女優でした。そしてダイアンはクレアを見事に演じ切ってくれました。ダイアンの役はファム・ファタールというより、真の目的を胸の内に秘め、それをマーロウの前で隠し通そうとする女性です。最終的にマーロウはすっかり騙されていたことに気づくのですから。

 

――ジェシカ・ラングについて

ジェシカからは別作品についてこれまで私と話していたんです。何年も前からマレーネ・ディートリッヒ…とくに晩年のマレーネを演じたいと言っていました。彼女はすでに脚本を用意していて監督に私を推してくれたのですが、資金的な理由でまだ形になっていません。このマレーネの映画の制作意欲はまだ彼女の中にあると思うのですが、そこで私は状況を飲んだうえで、もしこれ(マレーネの映画)が叶わないのであれば、本作の役を検討してもらえないかと話しました。彼女が快諾してくれたことは私にとってとてもラッキーな出来事でした。ご存じのように彼女は魅力的な女優です。この役にピタリとハマる要素としてジョーン・クロフォードを彷彿させる、ハリウッド黄金期に実在したような圧倒的なスターらしさが必要でした。ジェシカは大役ではないにも関わらず、私が求めた要素をすべて役に注ぎ込んでくれました。こうやってドロシー・クインキャノンが活きてきたと思います。

 

ニール・ジョーダン
監督・脚本
1950年2月25日生まれ。アイルランド出身。作家としてキャリアをスタートさせ、1976年に発表した初の短編小説集「チュニジアの夜」でガーディアンフィクション賞を受賞。その後、現在までに計8冊の小説を出版している。『殺人天使』(82)で長篇映画監督デビュー。『クライング・ゲーム』(92)でアカデミー賞脚本賞、『マイケル・コリンズ』(96)でベネチア国際映画祭金獅子賞、『ブッチャー・ボーイ』(97)でベルリン国際映画祭銀熊賞をそれぞれ受賞した。他の主な監督作に『狼の血族』(84)、『モナリザ』(86)、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)、『ことの終わり』(99)、『プルートで朝食を』(05)、『ビザンチウム』(12)、『グレタ GRETA』(18)など。2011年から放送されたテレビドラマ「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」では製作・監督・脚本をつとめた。

 

ストーリー

1939年、アメリカ・ロサンゼルスに事務所を構える探偵フィリップ・マーロウ(リーアム・ニーソン)を訪ねてきたのは、見るからに裕福そうなブロンドの美女クレア(ダイアン・クルーガー)。「突然姿を消したかつての愛人を探してほしい」依頼を引き受けたマーロウだったが、映画業界で働いていたというその男はひき逃げ事故で殺されていた…!? 捜査を進めるにつれ謎が深まる“ハリウッドの闇”――探偵マーロウが辿り着く真実や如何に!?

 

『探偵マーロウ』予告編

 

公式サイト

 

2023年6月16日(金) TOHOシネマズシャンテ、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

Cast
リーアム・ニーソン、ダイアン・クルーガー、ジェシカ・ラング、アドウェール・アキノエ=アグバエ、ダニー・ヒューストン、アラン・カミング

Staff
監督:ニール・ジョーダン
脚本:ウィリアム・モナハン
原作:「黒い瞳のブロンド」(ベンジャミン・ブラック/小鷹信光 訳 早川書房刊)

原題:Marlowe/2022年/アイルランド・スペイン・フランス/英語/109分/カラー/字幕翻訳:船越智子

配給:STAR CHANNEL MOVIES
©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films