『ミート・ザ・フューチャー』ここでは「出会う」のMeetではなく「肉」のMeat。培養肉でサスティナブルを目指すある博士を追ったドキュメンタリー

『ミート・ザ・フューチャー』ここでは「出会う」のMeetではなく「肉」のMeat。培養肉でサスティナブルを目指すある博士を追ったドキュメンタリー

2023-06-06 17:12:00

本作は、フード・テックの最前線をいく、クリーン・ミート、ピュア・ミートと称される培養肉のスタートアップ企業「アップサイド・フーズ(旧メンフィス・ミート)」のCEO兼共同設立者のウマ・ヴァレティ博士が、培養肉の開発に挑戦する姿を、2016年から2019年まで追いかけたドキュメンタリー。

2050年までに世界の肉の消費量が2倍になると予測され、既に畜産に使われている土地は世界の陸地の半分近くを占め、畜産由来の温室効果ガスは車から排出されるものより多いと言われる今、世界的に注目されているのが「培養肉」だ。従来の畜産業が抱える屠殺という倫理的問題と環境への影響を排除し、動物の細胞から肉を育てるものだという。

本人もベジタリアンであるリズ・マーシャル監督はこう語る。「世界中の人がベジタリアンやヴィーガンになるわけではありません。ですから、従来の肉を作る方法に対する解決策が必要なのです。培養肉は持続可能な社会を目指すテクノロジーによる一つの解決策のように思えます」。

英語原題の『MEAT THE FUTURE』のミートは、「出会う」のMeetではなく「肉」のMeat。果たして培養肉は、持続可能な社会を目指す一つの解決策となり得るのか? その挑戦に密着し、未来を探る。肉好きも、ベジタリアンも、見逃せない内容だ。

 

リズ・マーシャル 監督インタビュー

培養肉は工業的畜産に対する解決策としての可能性を秘め、世界を実際に変えられるかもしれないのです ーー リズ・マーシャル監督

 

ーーまずは前作について、教えてください。

10年前の2013年、『The Ghosts In Our Machine』が公開され、世界中で取り上げられました。それは動物の権利に関するドキュメンタリー映画でした。このことは、監督、そしてプロデューサーの1人として、それまで深いレベルで知らなかったことを学び、見る機会となりました。この映画の制作は私を変え、食用や他のあらゆる産業のための動物の扱い方への視点に影響を及ぼしました。

私たちの動物に対する扱いや、さまざまな産業における動物の利用について、映画は重大な問いを人々に投げかけています。そして、私が潜在的な解決策を描く映画を作ることに興味を持ちはじめ、培養肉という概念と、それが軌道に乗りつつあると知ったとき、これに探求したいと思いました。そしてその動機の中心は、この潜在的解決法に関する見聞を広め記録することでした。

ーーインド文化と、西洋文化の違いは、どんなものでしたか?

私は世界中でドキュメンタリーを撮影してきましたが、インドに行って撮影するのは初めてでした。インドにはそれまで行ったことがありませんでした。あのレクチャーの一環でウマ・ヴァレティ博士から学ぶ学生たちの情熱は、本当に刺激になりました。彼らは学びをとても真剣に捉え、欲しており成功したいと望んでいるんです。あのシーンの博士は、学生たち自身が育ち学んだ町、そして南インドの出身の尊敬できる人物の代表として、その場面に登場したのです。

科学、技術、未来だけでなく、世界的な問題に対する解決策にも興味を持つ、多くの若い女性を見ることができてとても良かったです。しかもウマ・ヴァレティ博士は実際に、世界を変えることのできる、主流となる解決策を提示できる人物なのです。あの場には、女性も男性も、たくさんの学生が部屋にいて、ロールモデルである博士から学ぼうと熱望していました。

ーー培養肉は、将来の人口問題への解決策になり得ると私は思いますが、いかがですか?

そうなんです。私たちには食料システムに対する解決策が早急に必要です。特に、工業化に対して。
動物を食用とすることは、気候によっては大打撃です。それにとても残酷で、利用される動物の運命はみな悲惨なものです。しかも必ずしも健康とは言えません。パンデミックや、あらゆる問題の原因となります。それは事実で、科学的にも証明されています。培養肉は工業的畜産に対する解決策としての可能性を秘め、世界を実際に変えられるかもしれないのです。

ーーこの映画の公開は6月9日ですが、映画の完成から現在までに、どのような進歩があったのでしょうか?

実は、私にも追えていません。それほどまでに世界の進歩は早いんです。

スタートアップは世界中でどんどん増えています。将来への現実的な解決策として、研究や開発に資金を投入している政府もあります。色々な視点から検討されているんです。2030年、2050年への解決策として、気候変動、食料安全保障の可能性から、そして健康問題の解決策とみられています。

なので、このドキュメンタリーの撮影後の2019年からの進捗状況をきちんとお伝えするのは、私には難しいのです。一方で、培養肉の製造者には、早急に解決しなければならない高いハードルや大きな課題がまだ残されています。

ーー1ポンドの培養肉の値段は現在いくらですか?

今の値段は、わかりません。培養肉産業全体の目標、国やスタートアップに関わらず製造者一人一人の目標に関してならお話できます。その目標は、従来のニーズと同等かそれ以下の価格に到達し、ゲームチェンジャーとなる可能性をさぐることです。


ーーあなたはベジタリアンですよね? 私は、人間がなぜ動物の肉を必要とするのかを疑問に思います。動物性タンパク質を取らなくても生きていけるのに、なぜ食べるのでしょうか?

ええ、確かに、すべての文化……すべてとは言い切れませんが、ほとんどの文化、世界の文化の大部分は、その、主に植物ベースの食事に一部、動物性のプロテインを足すかたちで繁栄できます。

しかし、近代の工業化によって、肉は工場で生産されることで製造が安価になり、巨大企業によりグローバル化され、サステナブルでも健康的でもない安いプロテインになってしまったんです。

私は、これほどの肉を食べるのは自然ではないと思っています。だから、人々がヴィーガン、ベジタリアンになる、あるいは動物性タンパク質を減らし植物性タンパク質の摂取を増やす決断をするなら、それこそが持続可能性と、健康への解決策になると考えています。

密集度の高い狭い施設で動物を生産することは、新たなパンデミックへの大きなリスクをはらむことも、認める必要があります。結局のところ、食料システム全体にとっても非常にリスクの高いことなんです。

私たちは、さまざまなバクテリア、ウイルス、病原体を通してそれを何度も認知してきています。不健康な上に、持続不可能なんです。そして動物にとっても残酷です。さらに、環境的にも、水資源を破壊しています。動物性タンパク質を生産するためだけに、世界中で広大な土地が占有されているんです。

だから、この映画と、そしてウェブサイトにも教育ガイドを載せています。データと、興味深い研究などです。

また、今ではこのテーマについて書く団体や、専門に扱う団体もたくさんあり、ワシントンDC(発)の「グッド・フード・インスティテュートGood food institute」も世界各地に支部があります。

そこでは素晴らしい科学者や専門家たちが、これを一般の人々のために噛み砕いて、抽象的な概念ではなく、理解しそれについて考え、議論することができるように取り組んでいます。


ーー次のプロジェクトは何ですか?

次のプロジェクトの半ばですね、ここで長編のドキュメンタリーを作っています。

カナダ西部のブリティッシュコロンビア州なんですけど、非先住民の、ヨーロッパ系入植者を祖先に持つ者としてここにいます。先住民族のルーツを持つ、もう一人の仲間の映画監督と彼のコミュニティの先住民族の長老たちの物語を記録するプロジェクトに招待されたんです。非常に興味深くて、素晴らしいプロジェクトです。

完成は8月を予定していて、『ミート・ザ・フューチャー』とはまた全く違う作品になると思います。


リズ・マーシャル
監督・脚本家・演出家・プロデューサー
カナダ出身。1990年代から世界中でタイムリーな問題やテーマを取り扱うインパクトのある人物主体のドキュメンタリーの脚本、監督、制作、撮影を務める。なかでも2013 年に絶賛された動物の権利活動家、フォトジャーナリト、作家のジョアン・マッカーサーを特集した映画 『The Ghosts in Our Machine』(2013)や水利権活動家、作家、公人であるモード・バーロウを特集した『Water on the Table』(2010)でよく知られている。本作『ミート・ザ・フューチャー』(2021)は、ウマ・ヴァレティの目を通して、「培養肉」産業の誕生を記録したドキュメンタリー。

 

ストーリー

動物を繁殖、飼育、屠殺する必要もなく、本物の肉が持続的に生産される世界。これはもはやSFではなく、身近なところにあります。
この最前線にいるのは、メイヨークリニックで訓練を受けた心臓専門医のウマ・ヴァレティ博士です。
ウマ博士はカリフォルニア州バークレーに拠点を置く人工培養肉製造会社アップサイドフード(旧メンフィス・ミート)の共同設立者兼CEOであり「培養肉」革命に関する主要な人物です。

本作では、ヴァレティと彼のチームを4年間にわたり追跡し、1ポンドあたり18,000ドルの世界初のミートボールから、初めて半分のコストで誕生したチキンフィレまで差し迫るミライの肉「培養肉」の誕生に、消費者の関心を寄せていきます。

業界の在り方をガラリと変える、このタイムリーなソリューションの探求『ミート・ザ・フューチャー』は、動物行動学者であり作家のジェーン・グドールがナレーションを担当し、多くの著名ミュージシャンの作品を手掛けたモービーが音楽を担当します。

 

『ミート・ザ・フューチャー』予告編


公式サイト

 

2023年6月9日(金) YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

2023年6月23日(金) アップリンク京都

 

監督:リズ・マーシャル
音楽:モービー
ナレーション:ジェーン・グドール

出演:ウマ・ヴァレティ、ニコラス・ジェノベーゼ、エリック・シュルツ、ケーシー・カーズウェル、ダニエル・デスメット、マシュー・レオン、マイケラ・ウォーカー、ムルナリ二・パルヴァタネニ、ブルース・フリードリヒ、アマンダ・リトルほか

2020/カナダ/84分/英語・ヒンディー語/原題:MEAT THE FUTURE

配給・宣伝:アップリンク
©︎2021 LizMars Production Inc.27