『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』ヴェネチアンガラス職人だけが集うムラーノ島で唯一工房を構える日本人・土田康彦の8年間の密着ドキュメンタリー

『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』ヴェネチアンガラス職人だけが集うムラーノ島で唯一工房を構える日本人・土田康彦の8年間の密着ドキュメンタリー

2023-06-06 17:10:00

『マゴーネ』は、監督、田邊アツシの「土田康彦『運命の交差点』についての研究」とタイトルにあるように映像による研究論文と言えるのはないだろうか。

『運命の交差点』とは、ヴェネチア・ムラーノ島にスタジオを構える唯一の日本人アーティスト・土田康彦による、「運命の交差点」と名づけられたガラス作品のシリーズを写真で紹介する書籍だ。

そして、田邊監督の研究の結果導き出されたのはタイトルの「マゴーネ(Magone)」だ。マゴーネは北イタリアの方言で「夕日を見る時の胸を締めつけられるような感覚」の意味であり、土田は日本の諺にある“袖振り合うも多生の縁”とも繋がる感覚だと語るのだった。

田邊監督の研究は、大阪の辻調理師専門学校を卒業し、ヴェネチアのハリーズ・バーで4年間働いた経験をもつ土田のガラス工房奥の台所に招かれたゲストとの関係を描写することで進められる。

ゲストには、フェンシング選手の宮脇花綸、映画監督の臺佳彦、3人の建築家、彌田徹、辻琢磨、橋本健史、医学博士の大友香里、そしてミュージシャンのTERU。

田邊監督は映画の中で問いかける、「人はなぜ惹き合うのだろう」と。

その答えとして土田の書籍の中の一文を引用する。

「僕の人生をたった一度でもよこぎるものは、そこに消すことのできぬ何らかの痕跡を残すのであろう」

その痕跡を捉えたのが『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』だ。

土田康彦プロフィール

土田康彦(つちだ・やすひこ)
ヴェネチアンガラス作家・料理家
ヴェネチア・ムラーノ島にスタジオを構える唯一の日本人アーティスト。作風は多様であるが、特筆すべきは強いメッセージやコンセプト、哲学が各作品の根底に一貫して存在している点である。その作風より「ガラスの詩人」の異名をもつ。近年、執筆、食、建築、映画、ファッション、音楽などジャンルを超えた活動を展開し、各分野の作家とのコラボレーションが注目されている。2015年に作品集『運命の交差点』を出版。フジサンケイビジネスアイ賞・金賞をダブル受賞する。同年のミラノ万博では、書家・紫舟氏の書をガラスで造形した彫刻作品を発表。2016年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展では、403architecture [dajiba]の『ガラスの橋』に制作協力。それぞれ最優秀金賞と審査員特別賞を受賞する。2016年放送のNHK『SWITCH インタビュー達人達』では、パティシエ小山進氏との対談が大きな反響を呼んだ。2019年には日展に入選し、2021年に処女作となる青春群像小説『辻調鮨科』が祥伝社より出版された。2023年5月、日本橋三越本店にて大規模な集大成展を開催され、2作目の小説『神戸みなと食堂』が托口出版より出版される。

 

田邊アツシ 監督コメント

私自身のモノローグで語られる物語は、サンマルコ広場での土田との出会いを回想する序章「FLOW」から始まる。第一章「WALK」では、土田がヴェネチアという異国の地でどのように生きるのかを「歩く」という視点から描き出す。第二章「TASTE」では土田の自伝的小説「辻調鮨科」を取り上げ、食とアートとの関わりを探る。亡き妻の骨壷を探す映画監督、臺佳彦との出会いを通じて、土田作品を彩る光と影を浮き彫りにする第三章「PRAY」。土田の創作の長年のモチーフである「渦巻き」の考察を深める「SPIRAL」。死と再生という観点から作品制作のプロセスをたどる第五章「FOG」。最終章「SENUHIMA」では、夕日を見つめた時の郷愁や胸の奥がうずくような感覚「マゴーネ」への洞察と、土田と彼を取り巻く人々の生活を 通して、芸術や文化が果たす役割を語る。

田邊アツシ(たなべ・あつし)
制作・撮影・編集・脚本・ナレーション・監督
映像作家。自らのカメラによるアーティストのドキュメンテーション、美術館・博物館・文学館等の展示映像を主軸に、TVCM、企業等のVP、ミュージックビデオの企画制作も多数手掛ける。長編映画初監督作となる『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』においても撮影に加え、編集、脚本、ナレーションまでこなし、従来のドキュメンタリーともフィクシィンとも異なる表現、映画・文学・美術の境界を超えて「私」を見つけるひとつの試みに挑戦した。

ストーリー

監督兼語り手である田邊アツシは、土田康彦の著書『運命の交差点』に触発され、ヴェネチアに長く住むこの異色のガラス作家に会いに行き、8 年間、彼の姿を追い続けました。映画は 7 つの章に分かれており、其々が土田の人生と創作に関する様々な要素を紹介しています。章が進むにつれて観客は、土田と「マゴーネ」という言葉の秘密を知ることになります。



『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』予告編


公式サイト

 

2023年6月9日(金) シネスイッチ銀座、アップリンク京都、ほか全国順次ロードショー

 

出演:土田康彦
宮脇花綸、臺佳彦、403 architecture[dajiba]、大友香里、TERU

制作・撮影・編集・脚本・監督:田邊アツシ
プロデューサー:杉本理恵子
音楽:小久保隆、Andrea Esperti
劇中歌・エンディング曲「the other end of the globe」(GLAY)
ナレーション:田邊アツシ

2021年/日本/96分/カラー/シネスコ/ステレオ/イタリア語題:Magone uno studio sui “I crocevia del Fato” di Tsuchida Yasuhiko/映倫G/協賛:株式会社エムビーエス、山口マツダ株式会社

制作:ラングラフ/配給:えすぷらん/配給協力:プレイタイム