『幾春かけて老いゆかん 歌人馬場あき子の日々』歌を詠み能を愛し、朝日歌壇の選者を今も務める歌人・馬場あき子のドキュメンタリー

『幾春かけて老いゆかん 歌人馬場あき子の日々』歌を詠み能を愛し、朝日歌壇の選者を今も務める歌人・馬場あき子のドキュメンタリー

2023-05-23 15:30:00

およそ一世紀に渡り、時代を駆け抜け、さまざまな「滅び」に直面しつつ生き抜いてきた歌人・馬場あき子の「老い」と人生観に迫る本作。2019年に文化功労者に選ばれ、現在95歳を迎える歌人、馬場あき子の93 歳から94 歳にかけての1 年を見つめたドキュメンタリーである。

監督を務めるのは、TV界でディレクターを長年務め、構成作家に転じて、数々の賞を受賞するドキュメンタリー作家の田代裕。また、味わい深い口調でナレーションを務めるのは、自身も数々の映画で活躍する名優・國村隼。さらに、NHK大河ドラマ『利家とまつ』や映画「平成モスラシリーズ」など、多岐にわたる幅広い作曲活動を手がける渡辺俊幸が、本作の音楽を手がける。

朝日歌壇の選者として、2000枚以上届いたハガキを見事なスピードで捌いていく彼女に、「先生、どういうのがいい歌なんですか?」と問いかけると、彼女はこう答える。「"今"を感じている歌がいいですね。現前が大事なんです。現前の中に歴史・文学・音楽や自分の内部のものと共鳴し合う何かがあるという、そういう歌がいいですね」。なるほど、いつまでも現役の人というのは、確かに彼女のように、常に今を感じ、今を生きていて、過去の概念や枠に留まることなど決してなく、どことなく風のような軽やかさを纏っているものだ。

いくつになっても好奇心を忘れず、人生を味わい尽くす、闊達な口調とたおやかな表情、凛とした眼力が印象的な女性、馬場あき子。その瑞々しく洗練された感性は、95 歳を迎えるいま、縦横無尽に広がり、ますます研ぎ澄まされていくように見える。エネルギッシュに活動を続ける彼女の日常を見つめる本作には、その時々にしたためられた彼女の歌を通して、「老い」や「滅びゆくもの」と同時に「成熟」や「熟達」とは何かという問いに対する彼女らしい答えが軽やかに散りばめられている。


馬場あき子

昭和3年生まれ。
戦争中は軍需工場に学徒動員され、空襲で家を焼け出される。
昭和22年、短歌結社「まひる野」に入会し、本格的に短歌の道へ。
また、時を同じくして能の喜多流宗家にも入門。
教員生活を送りながら、夫の岩田正とともに短歌結社「かりん」を主催。
61年「葡萄唐草」の迢空(ちょうくう)賞受賞をはじめとして、数多くの短歌にまつわる賞を受ける。
平成29年には夫・岩田正が急逝。
平成31年、文化功労者に選ばれる。
『朝日新聞』歌壇選者、NHK市民大学などラジオ・テレビでも活躍。古典や能への造詣を背景に艶麗な歌境を提示。評論に「鬼の研究」などがある。

 

田代 裕 監督

田代 裕
監督
1956 年、東京文京区生まれ。慶應義塾大学文学部卒。在学中に発表した16mm作品「さよなら17 歳」は、当時「ぴあ」と双璧をなしていた情報誌「シティロード」誌上で1979 年度・読者が選ぶ自主映画のベストワン。大学卒業後はテレビの世界で13 年にわたりサラリーマン・ディレクターを務め、構成作家に転じて独立し現在に至る。ザ・ノンフィクション「マリアのニューヨーク」でATP ドキュメンタリー最優秀賞、ノンフィクションW「映画で国境を越える日」で放送文化大賞、BS-TBS「通信簿の少女」で文化庁芸術祭優秀賞、その他ギャラクシー奨励賞など。

 

ストーリー

本作は93 歳から94 歳にかけて歌人馬場あき子の1 年を見つめたものです。少女時代から短歌に親しみ、19 歳で短歌結社「まひる野」に入会。以後、教員として戦後民主主義教育の現場にも身を置きながら経済復興による創造と破壊や60 年安保などを駆け抜け、うつろな豊かさに至るまでの日本を見つめて1 万首以上の歌を詠んでいます。歌への傾倒と同時に、初めて「隅田川」を観たことをきっかけに能の喜多流にも入門。80 過ぎまで自ら舞い、新作能も書き下ろしてきました。精力的に活動する一方、親、夫、そして歌の仲間や能の友たちは、一人また一人と先立っていきます。今、馬場の胸に去来する思いとは……。

 

『幾春かけて老いゆかん 歌人馬場あき子の日々』予告編



語り・國村隼のコメント

 

公式サイト

 

2023年5月27日(金) 新宿K’s cinema、ほか全国ロードショー

2023年6月9日(金) アップリンク京都

2023年6月16日(金) アップリンク吉祥寺

 

馬場あき子
語り:國村隼 音楽:渡辺俊幸 監督:田代裕

題字:金澤翔子 音響効果:中嶋尊史 EED:池田聡 MA:富永憲一
宣伝協力:木村洋子 宣伝デザイン:池田樂水、齊藤賢太郎 WEB製作:kumayan
プロデューサー:森川健一 製作・配給・宣伝:ヒッチハイク
助成:文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業

2023年/日本/113分/ステレオ/16:9

©ヒッチハイク/FOR田代裕事務所

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