『バンクシー 抗うものたちのアート革命』バンクシーを学習し、知識をアップデートするのに最適な作品

『バンクシー 抗うものたちのアート革命』バンクシーを学習し、知識をアップデートするのに最適な作品

2023-05-15 16:17:00

『バンクシー抗うものたちのアート革命』は、あなたの知っているバンクシーについて、彼の活動を時系列で整理してくれ、アップデートすることのできる映画だ。

イギリス西部の港湾都市ブリストルのストリート・アーティストがバンクシー。答えはイエスだ、ただそれは20年前のこと。非合法の活動を行うので、覆面をして匿名性を保っている。答えはイエスだが、ブリストル市の依頼で、市の美術館で展覧会も開催している。

作品がオークションで高額で競り落とされるアーティストになったことを本人がどう思っているのかを作品として発表したのもバンクシーだ。オークション成立の木槌の音と共にバンクシー自身の絵画がシュレッダーで裁断され、裁断された作品の値がさらに上がるという彼の想定通りの美術界の現象が起きる。

ブリストルのストリートアートから美術界の話題のアーティストになり、そこで大金を得て満足するわけでは当然なく、バンクシーはパレスチナ、シリア、ウクライナなどの世界の紛争地でサイトスペイシックアートを発表しその場所を意識させるメッセージを世界に発信する。

従順な社会に反逆するには数人で十分だということわかっているバンクシーの集団。世界のどこかでボムされた彼の作品は、インターネットにより即刻世界に知れ渡るのが現状だ。


現在開催されているカンヌ国際映画祭の『カンヌNEXT』では、バンクシーがウクライナで描いたグラフィティを3D撮影の技術により現場をキャプチャーしその映像を作品とした15分のインスタレーション作品『MURALS』が展示されている。

 

カンヌNEXT『MURALS』の展示風景

 

 


バンクシー”BANKSY”とは

イギリスを拠点に活動する正体不明のアーティスト。世界中の都市の壁、橋などを舞台にして神出鬼没の作品を発表している。世界の芸術界においてバンクシーは反資本主義や反権力など政治色が強いグラフティを残したり、メトロポリタン美術館や大英博物館などの館内に無許可で作品を陳列したりするなどのパフォーマンスで衝撃を与えている。またテーマパークや宿泊施設のプロデュース、ドキュメンタリー映画の監督など、幅広く活動。ステンシル(型版)を使用した独特な作風は、ストリートアートや音楽家のコラボレーションが活発なイギリス西部の港湾都市ブリストルのアンダーグラウンドカルチャーで育まれた。

エリオ・エスパーニャ 監督インタビュー


――バンクシーへの個人的な興味と、なぜこの映画を作ろうと思ったのかを、お聞かせください。

20世紀の芸術や文化に興味がある人なら、バンクシーに興味を持つに違いありませんし、もちろん映画製作者も20世紀の芸術や文化に興味があるはずです。ストリート・アートは、このミレニアム(millennium)の最初の重要な芸術運動であり、ミレニアム以降の芸術の形を決定づけ、バンクシーは他の人々とともにその運動を築き上げました。その上、彼の匿名性が、なぜこれほど魅力的な主題であり続けるのか、ご理解いただけると思います。

私にとって、バンクシーについての映画を作るというアイデアは、2018年にサザビーズで行われた「Girl With Balloon」のシュレッダー事件(今ではそれ自体が芸術作品として知られ、「Love Is In The Bin」と呼ばれる事件)の直後に初めて思いつきました。

その時、私はフランスにいたのですが、この作品について多くの会話が交わされ、人々は驚き、喜び、刺激されました。そして、10~15年前、バンクシーが美術館への侵入やその他のいたずら、スタントを行っていた時の人々の反応を思い出したのです。あの時、人々を笑わせたことを思い出し、違法行為であるにもかかわらず、人々は彼を応援し、当時は庶民のために打撃を与えているように感じたのです。サザビーズのイベントもそうで、同じような反応を示していました。そして、彼や他の誰かがそのようなことをするのは、かなり久しぶりなのではないかと思いました。

サザビーズの数年前、バンクシーは初期のスタントよりも、ディズマランドやウォールド・オフ・ホテルのような大規模なインスタレーションに力を入れていました。バンクシーのキャリアがいかに長く、その後、現代アートの世界でこれほどまでに文化的重要性を獲得した人物はいないことを思い知らされました。そろそろ回顧的にみてみる時期だと思いました。

バンクシーが登場したのは私が10代後半から20代前半の頃で、彼は私より数歳年上ですから、同じような文化的な参照枠を共有していることになります。彼がラディカライズした人民税暴動は、私の人生においても大きな出来事であり、私自身のポリティックスに影響を与えました。クリミナルジャスティス法も同様で、彼も私も若者だった当時、イギリスの若者文化を迫害することを目的とした法律でした。私は、ショアディッチのリヴィントン通りに最初の制作オフィスを開設したのだが、その頃、彼はリヴィントン通りのトンネルで最初の違法な「ストリート展」を開催していました。

彼の現在では有名なあのネズミがあちこちに出没し、彼とベン・アイネ、シェパード・フェアリ(Shepard Fairey)や他のストリート・アーティストたちが飲んでいたドラゴン・バーで、時々飲んでいたのを覚えています。これまでの私の映画とは異なり、この作品は、私自身が同時代人として生きてきた時代の物語を語る機会であり、非常に魅力的でした。

――バンクシーと彼の作品を知っている人たちにとって、あなたの映画はどんな新しい視点をもたらしてくれるのでしょうか?

その匿名性のせいもあり、また彼は時々新しいストリートピースやびっくりするような展覧会を開いては現れるので、人々はバンクシーの作品が作られた時に、自然にバンクシーの作品に触れるだけで、だから、バンクシーのストーリーをきちんと追跡し、文脈を明らかにしたものはありません。

それ自体もすごい話ですが、現代のストリートアートムーブメントの最初の、そして間違いなく最も認知された人物の一人としてです。バンクシーの物語は、グラフィティから生まれたストリートアートの物語でもある。社会が潰したいと思い、都市が法執行機関のあらゆる資源を投入して迫害した芸術運動が、21世紀で最も重要な芸術運動となったのです。

バンクシーの全貌を、ストリートアートの発展や作品のテーマとともにたどることは、これまでになかったことであり、私がやりたかったことでもあります。

――監督から日本の観客に向けてのメッセージ

この度、この映画を日本で公開することができ、大変うれしく思っています。日本は、映画にとってもストリートアートにとっても重要な場所です。グラフィティ、ヒップホップカルチャー、ストリートアートは日本との間には常に密接な関係があり、ロンドンのような国際都市で育った私はそれを常に強く意識していました。ロンドン中心部に位置する最もクールなエリア・ショアディッチのストリートアートシーンの初期には、多くの日本人がバンクシーの初期の作品を見に来たり、シーンに参加したりしていましたから、常に強いつながりがあったのだと思います。

実は、この映画のサウンドトラックを作曲家のピート・ワイツと一緒に作っていた時, 私は日本の作曲家であり、テクノミュージシャン、DJの横田進さんの楽曲を参考にしてくれと頼みましたので、本作で流れる音楽は日本の影響を受けています。日本の観客の皆さんには、ぜひとも、この映画を楽しんでいただきたいと思います。また是非とも感想を聞かせていただきたいです。

エリオ・エスパーニャ
監督・脚本・編集

脚本家、監督、プロデューサーとして、エリオ・エスパーニャは20年以上にわたる幅広い作品群を有している。ロンドンを拠点とするトム・オデルとの制作会社スピリットレベル・シネマを通じて、歴史、社会、文化、政治など幅広い文脈の中でテーマを探求する厳格なドキュメンタリー映画で高い評価を得ている。批評家から高く評価された長編映画には「Down in the Flood: Bob Dylan, the Band & the Basement Tapes」、「Prince: Slave Trade」、「Brian Wilson: Songwriter」などがある。Discovery Networks、UKTV、Sky、Viasat、Netflix、Ovation、AXS、Apple TV、Peacock、Amazonなど、数多くのテレビ局やストリーミングプラットフォームで放送されている。

 

TOMOKA
プレゼンター

オンラインギャラリーART808 メンバー、イベントプロモーター
軍艦島⽣まれ。10 歳よりレッドツェッペリンを聞き、ロックに⽬覚め、パンク、ノイズ⾳楽への興味を拡げる。また幼少期よりクラッシック⾳楽愛好家であり、武蔵野⾳⼤ピアノ科卒業。90 年代始めにタイなどでレイブパーティを経験し、その後、ロンドンに移住。ロンドンを中⼼としたイギリス各地で⾏われるレイブやフリーパーティを訪れ、DIY カルチャーとの関わりを深める。2000 年代初旬にはバンクシーの作品他、様々なアーティストの作品に触れDIY ストリートアートにも興味を持つ。2006 年より⽇本とイギリスのカルチャーを結ぶパーティーをオーガナイザーとして始動。ブリストルの出版者/ギャラリストのJon Lewis とプロジェクト「ART808」と連携し、バンクシーの活動をおさめた写真集「バンクシーキャプチャード」等の書籍を⽇本に紹介。90年代のアンダーグラウンド・シーンで知り合った友⼈と連携し、イギリスのカウンターカルチャーを⽇本に紹介することで、⽇本⼈の豊かなセンスに、⾃由な⾃⼰表現、独創性、個性を守る事の重要性をメッセージに、幅広く活動している。

 

ストーリー

世界で最も有名なアーティスト・バンクシー。
彼が築き上げた帝国、そして影響を与えてきた数々の運動。
その裏側に迫ったドキュメンタリー映画がついに日本初上映!
彼が世に放った政治的芸術、犯罪的スタント、大胆な侵略は、
20年以上にわたって社会体制や支配階級を激怒させ、同時に大衆を魅了し続けてきた。
しかし、彼自身の人生についてはほとんど知られておらず謎に包まれている。
本ドキュメンタリー映画「Banksy & The Rise of Outlaw Art」では、
犯罪サブカルチャーのルーツからアート革命のリーダーとしての彼の姿まで、
知られざるバンクシーのストーリーが明らかになる。



『バンクシー 抗うものたちのアート革命』予告編

 

公式サイト

 

2023年5月19日(金) シネ・リーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次ロードショー

 

監督・脚本・編集:エリオ・エスパーニャ
ナレーション:マーク・ホルゲート ⾳楽:ピート・ウェイツ
出演:バンクシー、ジョン・ネーション、フェリックスFLX ブラウン、スティーブ・ラザリデス、ベン・エイン

製作年:2020 年/UK/113 分/⾔語:英語/DCP/5.1ch/ビスタ/映倫:G 区分

原題:Banksy and the Rise of Outlaw Art
提供:TOMOKA LTD, FATHBES / TRIBE / F.A.I
配給:oneʼs + 配給協⼒:マウンテンゲートプロダクション
宣伝:中道真記⼦/⼾梶美雪

© Spiritlevel Cinema Ltd.

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