『ライフ・イズ・クライミング!』仲間がいるから冒険できる。視力を失ったクライマーと相棒の登る喜びを追ったロードムービー!

『ライフ・イズ・クライミング!』仲間がいるから冒険できる。視力を失ったクライマーと相棒の登る喜びを追ったロードムービー!

2023-05-18 00:00:00

視力を失ったクライマー・コバ(小林幸一郎)。彼の視力となるサイトガイド・ナオヤ(鈴木直也)。出会いから20年、世界選手権4連覇を成し遂げたふたりが、次に目指したのは、ユタ州の大地に聳え立つ真っ赤な砂岩フィッシャー・タワーズの尖塔に立つこと。

監督は、本作が映画デビュー作となる中原想吉。2016年にTV 番組「ザ・ノンフィクショ ン」でコバを密着取材。その後、交流を深め、映画制作にいたる。主題歌は、MONKEY MAJIKの「Amazing」。コバのクライミングに衝撃をうけ、映画をイメージして完成させた楽曲だ。

 

中原想吉監督コメント

コバさんと出会って早6年、ようやくこの映画を世の中の皆さんにお届けすることができます。コバさんとナオヤさん、最高の2人が最高の奇跡を起こす瞬間を、この映画に収められたと思います。企画したのは2019年。その後、コロナ禍の煽りをモロに受けながらも、あきらめることなく取り組めたのは、何があっても前を向いて歩き続けるコバさんナオヤさんのおかげです。パラクライミング世界選手権4連覇という偉業を成し遂げたコバさんですが、私が描きたかったのは「スーパーマン」小林幸一郎ではありません。押し付けがましくなく、爽やか、でもなんか気持ちを鼓舞される、そんな不思議な魅力がコバさんとナオヤさんの2人にはあります。いろんな壁に立ち向かう2人の姿は「自分もちょっと頑張ってみるか」という勇気を観る人に与えてくれるはずです。とりたてて何の取り柄もない私や、そんな風に感じている人が、少しだけ自分の可能性を信じたくなる、そんな映画を目指しました。

 

中原想吉監督メッセージ

コバさんの番組を制作中だった野澤監督から、「中原ちゃん、今日コバさんの取材があるんだけど、代わりに行ってくれないか」と、コバさんの運営するつくば市のクライミングジムに行き、取材もそこそこに人生で初めてボルダリングというものを経験した。コバさんは、NPO法人の代表で「障害のある人もクライミングを楽しめる」ことを広めるために人生を賭けていた。コバさんのことは、自分の先を行く先輩だと思っているし、その関係性は出会った日から始まっていた。

その後、コバさんからの相談は、「今度、ナオヤとアメリカにクライミングしに行くのだけど、撮影してくれないか」というものだった。キャンパーバンを借りて、車中で寝泊まりしながら、コロラドやユタでクライミングをするという。以前、コバさんの家に行った時に壁に飾ってあった写真。背景には絶景が広がる岩場に、若かりしコバさんが片手でぶら下がっていた。こんなシーンを撮影できたら面白いのになと思ったものだった。気づいたら「せっかくなら映画にしませんか?」と提案していた。本当に気づいたら口にしてしまっていた。あの写真から受けていた鮮烈な印象が掘り起こされ、もう忘れられなくなってしまっていた。何かしないと絶対に後悔するという直感だけがあった。

ナオヤさんの第一印象は、とにかく表裏がない人だなということ。表裏がないどころか、少年かと思うような素直さ、屈託のなさを感じた。とにかく、クライミングを愛しているということ。ナオヤさんは、砂岩に囲まれたモアブというところが、いかに素晴らしいかを話してくれた。そして、コバさんが真っ赤な砂岩の上にそびえる、にょろっとした奇妙な形のフィッシャー・タワーズに登ることが、いかに素晴らしいかを熱く語ってくれた。

この映画は何なのか?となった時に、クライミング・ムービーではない何か他の拠り所を明確に持つ必要があると感じ、私はこの映画を「ロード・ムービー」と位置付けることにした。コバさんは、なぜ視力を失ってからも壁に挑み続けるのか?ナオヤさんは、なぜそんなコバさんの「目」となってサイトガイドという役割を担ってきたのか?なぜこの2人は、あえてフィッシャー・タワ ーズに挑むのか?その答えを探すロード・ムービーなのだと位置付けたら、ようやく本当に映画になるような気が自分でもしてきたのだった。

コバさんと親交のある人気ロックバンドの「モンキーマジック(MONKEY MAJIK)」が映画のために楽曲を提供してくれるというのだ。「Amazing」というタイトルが付けられたその曲は、コバさん、ナオヤさんの2人にインスパイアされて書かれた楽曲らしく、映画の主題歌にまさにうってつけの曲だった。

間近にそびえるフィッシャー・タワーズは、大聖堂のような荘厳さと、手つかずの自然が持つ荒々しさが同居する、なんとも言えない出立ちで我々を出迎えてくれた。コバさんがクライミングシューズを履き、最初の一手で岩をつかんで登り始めた時、私は人知れず、1人で涙を流していた。まだ登り始めただけで、まだまだこれからが本番だと言うのに、なぜだろうか?自分でも全くもって理由が説明できないけど、「あ、コバさん、本当にこの岩登るんだ」と今更ながら、なんてことに挑戦するんだと驚いたのかもしれない。コバさんがフィッシャー・タワーズの頂上に立った瞬間は...ただただ無心だった。頭も気持ちも真っ白。感無量とよく言うけど、本当に感動する時、人は「無」になるのかも知れない。こんなことって人生の中でもそうそうあることではないと思う。

岸壁の上を一直線に伸びる割れ目(クラック)に手を差し込みながら登るクライミング。目の見えないコバさんにとっては、緊張の度合いが高いクライミングである。オプティメーターを前にしたコバさんは、かなりナーバスになっていた。フィッシャー・タワーズの時よりも言葉数が少なかったように思う。それを見たナオヤさんは「コバちゃんが少しでも不安を感じているようなら、今日はやめよう」と言い始めた。それまでのナオヤさんからは感じたことがない、強い語気を含んでいた。無理だと思ったら、ちゃんと引き返せるというのもクライマーには必要な資質なのだろう。結局、コバさんは登るという決断をして、見事やり遂げた。帰国してから観た映像には、コバさんの表情や息遣いが見事に収められており、あれほど緊張するのも無理はないと、遅ればせながら合点がいったものだった。コバさん、ナオヤさんの繰り広げてきた冒険には、スリリングなだけではなく、何か人を鼓舞するような、自分の可能性を信じたくなるような力があることは確信していた。

(アップリンク京都での中原想吉監督)

中原想吉監督プロフィール

1976年12月2日生まれ。東京都出身。フジテレビ「ザ・ノンフィクション」で、2017年8月13日放送の「ザ・ノンフィクション ~ある日、視力を失って ~」の撮影でコバと出会い、本作を製作するにいたる。 映画『WAKITA PEAK』(2018 年)のエグゼクティブ・プロデューサーを務め、本作で商業映画初監督デビュー。現在、 インタナシヨナル映画の代表取締役社長。

 

ストーリー

視力を失ったクライマー・コバ(小林幸一郎)と、彼の視力となるサイトガイド・ナオヤ(鈴木直也)。ふたりの出会いは2001年。「右手、1 時半、遠め。右、右、右!」、相棒・ナオヤの声を自分の目のように頼り、8の字結びのロープでつながり、命をゆだねて岩を登るクライマー・コバ。やがて彼らは、パラクライミング世界選手権で4連覇を成し遂げ、2021年、ユタ州の大地に聳え立つ真っ赤な砂岩フィッシャー・タワーズの尖塔に立つことを目指し、アメリカへと旅に出る。想像を超える大自然、何億年もかけて作り上げられたダイナミックな岩山の絶景、コバの人生を変えた恩人で、世界7大陸の最高峰を制覇した全盲クライマーエリック・ヴァイエンマイヤー氏との再会。そこには、とびきりポジティブな心と溢れる笑顔、そして、ゆるぎないふたりの絆があった。そして、旅の目的地、フィッシャー・タワーズへ。不思議な造形をした岩の尖塔に、視力を失ったクライマーが相棒の声だけを頼りに、一体どうやって登るのか?不可能とも思える無謀な挑戦にふたりが臨む。

【コバ:小林幸一郎/Kobayashi Koichiro】
1968年2月11日生まれ╱東京都出身。16歳の時にフリークライミングと出会う。28歳で「網膜色素変性症」と言う目の進行性難病を発症し、近い将来の失明宣告を受ける。37歳、2005年にNPO法人モンキーマジックを設立。「見えない壁だって越えられる」をコンセ プトに、障害者クライミング普及活動を開始。競技者として2006年、世界初のパラクライミングワールドカップに出場し、視覚障害クラスで優勝、2014年から2019年まで(46~51 歳)、鈴木直也をサイトガイドに迎え、パラクライミング世界選手権視覚障害男子B1クラス(全盲)にて4連覇を達成。パラクライミング界のレジェンド中のレジェンドといえる存在。

【ナオヤ:鈴木直也/Suzuki Naoya】
1976年1月18日生まれ╱東京都出身。15歳の時にアメリカでフリークライミングと出会う。その後、単身で渡米。2003年に日本人初のアメリカ山岳ガイド協会公認のロッククライミングインストラクターとなる。2011年から、パラクライミング世界選手権の日本代表チームに同行。2013年には株式会社サンドストーンを設立。国内外問わずクライミングガイドをしながらクライミングジム「クライミングバム」を横浜と大阪で経営する。

『ライフ・イズ・クライミング!』予告編

公式サイト

公式Twitter

2023年5月12日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開

5月19日(金)アップリンク京都

『 ライフ・イズ・クライミング!』
出演:小林幸一郎、鈴木直也、西山清文、エリック・ヴァイエンマイヤー
監督:中原想吉
音楽:Chihei Hatakeyama
主題歌:MONKEY MAJIK「Amazing」
製作:インタナシヨナル映画株式会社、NPO 法人モンキーマジック、サンドストーン、シンカ
配給:シンカ
2023 年/日本/本編 89 分/5.1ch/1.90:1/UD キャスト対応
(C) Life Is Climbing 製作委員会

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