『ウィ、シェフ!』移民大国フランスの頑固な一匹狼シェフと強制送還寸前の少年たちの崖っぷちハートフル・コメディ!

『ウィ、シェフ!』移民大国フランスの頑固な一匹狼シェフと強制送還寸前の少年たちの崖っぷちハートフル・コメディ!

2023-05-04 00:00:00

本作は、移民大国フランスの深刻な問題を社会派コメディ『社会の片隅で』(2018)を発表したルイ=ジュリアン・プティが、実在する移民プロジェクトからヒントを得て物語を構築した。主人公カティ・マリーのモデルとなるフードインストラクターのカトリーヌ・グロージャンは、保護者なしでフランスに入国した未成年の移民たちに職業適格証(Certificat d’Aptitude Professionnelle=CAP)を取得させ、フランスで安定した暮らしが送れるような支援活動に尽力している。監督は、1年に及ぶ事前調査で、同伴者のない移民児童が18歳までに何かしらの資格や教育を受けなければ、国外追放となることを知り、その過酷な現状を世に示したいと考えた。

出演は、『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2018)のオドレイ・ラミーと『最強のふたり』(2011)のフランソワ・クリュゼ。映画に登場する子どもたちは、実際に移民支援施設で暮らす若者の中から選ばれた。移民少年のメインキャストにも、あえてシナリオを渡さない演出で自然な演技を導き出し、全編を通してリハーサルをせず、ほぼファーストテイクで構成されている。

原題の『La Brigade』は小隊を意味し、料理長が自分のチームを説明するときにもよく使われている。人づきあいが苦手で個人主義のカティが少年たちと出会い、自分の欠点を克服して天職に気づき、料理を通してチームを構成し、職業学校の教師として自己実現していく。今回も、難しい社会問題をテーマとしているからこそ、誰もがストーリーに入ることができて観やすく、ユーモアを交えて楽しめるルイ=ジュリアン・プティ監督ならではのハートフル・コメディとなっている。

ルイ=ジュリアン・プティ監督インタビュー

ーーこの映画のはじまりについて。

『社会の片隅で』の撮影以来、フランスにおけるあらゆる形態の統合の問題に興味を持ち続けています。そんな中、プロデューサーのリザ・ベンギーギが、脚本家・ドキュメンタリー作家のソフィー・ベンサドゥンを紹介してくれました。彼女は「同伴者のいない未成年移民の統合というテーマを料理を通じて描く」という映画のアイデアを持っていました。私はこのアイデアをとても面白いと感じ、リサーチしてみることにしました。

ソフィーの紹介で、職業高校の教師カトリーヌ・グロージャンに会う機会がありました。彼女は未成年の移民たちに職業適格証を取得させて、フランスでの安定した暮らしを得られるよう手助けする社会活動を行っていました。彼女の強い個性と生徒に対する教育法を知ったとき、私はこの映画の向かうべき方向を理解しました。この物語を輝かせるためには、難しい背景を持つ若者たちを色とりどりのキャラクターに対峙させる必要があったのです。

フランス各地を取材している間に出会ったさまざまなシェフからインスピレーションを受け、カティ・マリーは、この世界を統合するためのヒロインになりました。シェフになることを永遠に夢見る料理人で頑固な彼女は、移民の少年たち自立支援施設で数ヶ月を過ごすことになります。彼女はこの物語を通して、自分が持っていると思いもしなかった資質、すなわち「教育力」のおかげで、自分の夢を違った形で実現することになります。その結果、施設の中で本当の家族を再現し、自分自身をも満たすことになるのです。

ーー何も持たない彼らが全てを手に入れるまでについて。

私が望んだのは、社会派コメディを作ることでした。初めて映画を撮ったときから大好きなジャンルです。難しい社会問題に取り組むのは得意なほうだと思っています。チャレンジしたのは、未成年の移民たちの問題に現実的に対処し、彼らの頭上にあるダモレスクの剣、すなわち18歳になる前に職業訓練に参加することが出来なければ、強制送還されるという事実を、楽観的で喜劇的なタッチを保ちながら描くことでした。

この点で、カティーの性格は私にとって理想的でした。自分勝手で自信家の彼女がこの施設に放り込まれるという冒頭からシチュエーション・コメディを展開し、そして、カティーも観客と同じように、国外追放の危機にさらされながらもフランスに溶け込もうと努力する若者たちの旅の現実を知っていくことになるのです。カティがチームのひとりひとりの物語を本当に理解したとき、喜劇が感動へと変わるのです。最後に、この映画の3分の1は、観客にとって本当の意味でコミカルなものにしたかったのです。つまり、現代劇で非常に特殊なリアリティ番組に飛び込んだのです。カティーが嫌う無慈悲な世界。しかし、それが彼女にとって、チームにスポットライトを当てる唯一の方法だったのです。

ーーオドレイ・ラミーについて。

オドレイは、コメディからドラマへと瞬時に移行できる人間味あふれる女優です。だから、私は彼女のために脚本を書きました。彼女は、台詞を完璧にマスターした上で、プロでない俳優を前にして即興で演技する力も持っています。そして、素晴らしい星付きレストランの厨房で数ヶ月、指に匂いがつくまで調理を特訓しました。マチュー・パコーとクリストフ・ヴィレルメの両シェフのもとで修行を積み、数週間後には、プロの料理人の中に溶け込んでいて、私は彼女を見分けられませんでした。

カティーも夢を叶えましたが、オドレイもフランソワ・クリュゼと共演する夢を叶えました。彼女は、クリュゼと共演できると知ったとき、あまりの嬉しさに涙を流しました。二人の共通点は、映画よりも自分が前に出ることを好まないことです。このことが二人の成功の秘訣だと思っています。彼らは映画に奉仕し、監督が求める全てに自らを差し出すのです。彼らを起用出来たことは、私にとって非常に幸運なことでした。

ーーフランソワ・クリュゼについて。

彼がロレンゾを演じているのを夢見ていました。このキャラクターは、この映画の社会的な問題を体現しています。未成年者は18歳になる前に教育カリキュラムに参加しなければならず、そうでなければ国から追放される。そのために解決策を見出そうとする慈愛に満ちたキャラクターです。その一方で、閉鎖的な制度や行政の遅さにも直面します。演技の幅の広さと限りのない寛容さにおいて、オドレイ・ラミーの対抗馬として、フランソワ・クリュゼに勝る人はいないでしょう。

ーー未成年の移民たちについて。

少年たちのキャスティングは、2020年7月から10月までパリで行われました。キャスティング・ディレクターが撮影した300人以上の若者たちのインタビュー、つまり300時間分のビデオをすべて見ました。自分の人生や旅路を語るビデオです。私は、この映画のエネルギー源となるような個性を探していたのです。一次選考の後、150人に会うために演劇のワークショップを開催し、エシャロットテストのシーンをリハーサルしました。そして40人ほどの若者たちに、この映画の出演者に選ばれたことを発表しました。選ばれなかった人たちにも、エキストラとして参加してもらいました。台本は渡さず、物語のアウトラインだけを伝えました。彼らの真摯な姿勢と、カティのキャラクターを一歩一歩発見していく過程を大切にしたかったのです。


©︎Naïs Bessaih

ルイ=ジュリアン・プティ監督プロフィール

1983年9月6日 英国・ソールズベリー生まれ。2004年にESRA(École Supérieure de Réalisation Audiovisuelle)を卒業後、リュック・ベッソンなど著名な監督のもとで、約30本のフランス映画や国際的な長編映画で助監督を務める。いくつかの短編映画を手掛けた後、2013年に『Discout』でアングレーム映画祭でヴァロワ賞を受賞。本作では、食料廃棄を告発し、予告編で得た広告収入をレスト・デュ・クール協会に寄付した。2018年にはホームレス女性のための受け入れセンターの日常を描いた『社会の片隅で』を発表し、フランスで130万人を超える動員を記録し大成功を収めた。

 

ストーリー

⼀流レストランのスーシェフとして働くカティ(オドレイ・ラミー)。夢はいつか⾃分のレストランを開くこと。だが、シェフと⼤ゲンカして店を⾶び出し、ようやく⾒つけた職場は移⺠の少年たちが暮らす⾃⽴⽀援施設だった。質より量、まともな⾷材も器材すらない。不満をぶつけるカティに施設⻑のロレンゾ(フランソワ・クリュゼ)は、少年たちを調理アシスタントにするアイデアを提案する。フランス語がちょっと苦⼿な少年たちと、天涯孤独で⼈づきあいが苦⼿なカティ。料理が繋げた絆は少年たちの将来だけでなく、⼀匹狼だったカティの世界も変えてゆく‥‥。

 

『ウィ、シェフ!』予告編

 

公式サイト

2023年5月5日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー アップリンク京都

 

監督:ルイ=ジュリアン・プティ
脚本:ルイ=ジュリアン・プティ、リザ・ベンギーギ、ソフィー・ベンサドゥン
出演:オドレイ・ラミー、フランソワ・クリュゼ ほか

2022年/フランス映画/フランス語/97分/5.1ch/シネスコ/原題:La Brigade/英題:Kitchen Brigade/字幕翻訳:星加久実

後援/在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ
提供/ニューセレクト
配給/アルバトロス・フィルム 
*G指

© Odyssee Pictures – Apollo Films Distribution – France 3 Cinéma – Pictanovo – Elemiah- Charlie Films 2022

 

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