『大阪古着日和』社会問題を掘り下げるとか、喪失や痛みのテーマが通底するとかは一切ないお買い物映画

『大阪古着日和』社会問題を掘り下げるとか、喪失や痛みのテーマが通底するとかは一切ないお買い物映画

2023-04-20 09:37:00

『大阪古着日和』は人気youtube番組『東京古着日和』が映画という規模に大きくなったスピンオフ作品だ。『東京古着日和』のガイド役は光石研、谷山武士監督がさらば青春の光の森田哲也にオファーして大阪編が出来上がった。

空前の古着ブームだという。東京で上映される渋谷パルコ、吉祥寺パルコには新しく古着屋さんがオープンしている。映画の原題は『OSAKA VINTAGE DIARY』、邦題は『大阪古着日和』。「古着が20万円もするんか、中古品やろ」と思うかどうかが、古着の買い物の価値観を左右するポイントだろう。

谷山監督は次のように語る。「テーマはやはり“お買い物”です。社会問題を掘り下げるとか、喪失や痛みのテーマが通底するとか、そういったものは一切ありません。そこにあるのは”古着が欲しい” ”買い物が楽しくてしょうがない”といったシンプルな感情だけです」

 

谷山武士 監督インタビュー


──企画の成り立ちについて

2019年からはじまった光石研さん主演の『東京古着日和』がきっかけです。この作品は光石さんにおんぶにだっこの現場でした。今回の映画へとつながった大恩人も光石さんです。おかげさまで『東京古着日和』は1話目から人気を博し、YouTubeからBSフジさんでの放映とチャネルも広がっていきました。現在はシーズン2に入っていますが、シーンズ1の最終話でタイトルに「さらば青春の、古着屋めぐり」というタイトルをつけたんです。これは僕からの、さらば青春の光の森田さんへのメッセージというか、ラブコールでした。


YouTubeチャンネル<東京古着日和>





以前から“さらば”さんのYouTubeチャンネルを観ていて、森田さんの着ている私服に注目していました。ぼんやりですが「いい感じの古着のスウェットを着てるなあ」と。ちょっと偉そうで恐縮ですが、森田さんの古着に対するスタンスは好感が持てるな、と感じてたんです。古着に対する「愛」のようなものがすてきだな、と。そんなわけでタイトルに“さらば青春”と入れたら、森田さんのSNSやYouTubeのアルゴリズム?に引っかかって、森田さんのデバイスにいつの日か届くのでは、と企んだんです。結果は後日談ですが森田さんから「そんなまどろっこしいことしないで、一本事務所に電話くれたら」とつっこまれました。森田さんはそもそも『東京古着日和』が好きで観てくださっていたようで、話はすんなり通ったというわけです。

じつは森田さんも当初は、『東京古着日和』に脇役でちょこっと出るくらいの心づもりだったようです。それがまさかの映画、そして主演ですからね。驚かれたと思います(笑)。そのあたりの顛末は、森田さんのYouTubeチャンネル<五反田ガレージ>「【大阪古着日和】映画初主演をサプライズ発表!!」で、いわゆるドッキリ形式で動画になっていますので、ぜひご覧になっていただければと思います。

前置きが長くなってしまいましたが、なぜ映画化にまで至ったかというと、この話を、この展開を、大きくしたほうがおもしろくなりそうな予感がしたからです。『東京古着日和』からの流れですので、テーマはやはり“お買い物”です。社会問題を掘り下げるとか、喪失や痛みのテーマが通底するとか、そういったものは一切ありません(笑)。そこにあるのは「古着が欲しい」「買い物が楽しくてしょうがない」といったシンプルな感情だけです。そんなものを、映画という舞台、そして劇場という大きな場所で披露したら、さぞかしおもしろいことになるだろうなと思ったのと、そもそも森田さんたちがやられているコントが大好きなので、おこがましいんですが、それに近いものをスクリーンにのせてみたいなと。

YouTubeチャンネル<五反田ガレージ>
【大阪古着日和】映画初主演をサプライズ発表!!

 

──大阪について

僕自身も古着が好きなので東京の古着屋さんにはあちこち出かけます。ですが大阪の古着屋さん事情はまったく知らなかったので、詳しい方々にいろいろ教わりました。シナリオハンティングで何度も大阪を訪れはしましたが、そのほんの一部を知るようにはなった、という程度です。大阪で古着といえばアメ村です。聞いたところによれば、アメ村だけで古着屋は200軒以上あるそうです。そんな街、世界中どこを探してもないですよね? しかもただの中古、セカンド品を売っているわけではなくて、こだわりのある店も多い。

映画のなかでも訪れていますが、中崎町のあたりはアメ村とはまた趣向の異なるお店がたくさんあって、ちょっとやそっとではまわりきれない規模、多彩さです。あとは東京よりもちょっと安い、というのも古着好きにはたまらない魅力です。これまでは大阪というと、仕事で行く場所という感じでしたが、映画を撮ってからは、1泊2日で、古着屋をめぐって美味しいごはん食べに行く所、という認識に改めました。映画のなかでメインの舞台となっている古着屋は架空のものですが、そのほかの古着屋さん、ごはん屋さんは実在のお店です。登場する店主のみなさんも実在するご本人です。そのあたりは東京古着日和のスタイルを踏襲していまして、本物のみなさんにご登場いただいて、リアルな接客、試着、ないしは料理をいつもどおりにつくっていただいて、演者のみなさんにも普通に食べていただくようにしました。

撮影も一部はどうしても無理だったんですが、可能な限り順撮りで進めました。お店に入った瞬間の驚き、好みの古着を手にしたときの喜び、人との出会い、その後の距離感など、できるだけ素で、普通で、リアルな雰囲気を目指しました。『東京古着日和』からそうですが、基本はリハーサルもほぼやらずに、ほぼ一発撮りで、少々のトラブルは内包して(笑)、カメラを回し続けます。ちなみに、哲矢(森田)とナナ(花梨)が蕎麦を食べに行くシーンがありますが、そこに出てくる蕎麦屋さんは森田さんの実のお父さんが営むお店ですし、お父さんにもお父さん役として出ていただいています。

──主演の森田さんについて

脚本を渡すときは本当にドキドキしました。森田さんはコントや漫才の「ネタを書く」ほうですし、朗読劇をはじめとしたお芝居の脚本も手掛けられていて、本も執筆されています。そんな人にジャンルでいえばコメディの脚本を見せなくてはいけないんですから、プレッシャーです。実は脚本の中身について森田さんの感想やコメントは聞いていなくて、しれっとそのまま撮影に入ったので、実際にどう感じていらっしゃるのかは、いまでも知りません(笑)。

現場に入った森田さんはもう「さすが」のひと言です。なかでも光石さんとの居酒屋でのシーンは、おじさんふたりが古着トークでワチャワチャ盛り上がるんですが、劇中のこととはいえ、“共通の話題で盛り上がれる新しい友だちが大人になってからできた!”みたいな景色がそこにはあって、なんだか羨ましいなあと、正直、思いました。

谷山武士
監督・脚本・編集
山口県生まれ。映像作家。ドキュメンタリーからドラマ、ファッションから食と、ジャンルを横断して活躍。映像作品に『東京古着日和』、著書に『パイナップルぷるぷる本』『くるま』などがある。二玄社にて雑誌『NAVI』編集記者、雑誌『助六』編集長を経て、2008年に株式会社ブエノ(TT BOOKS & FILMS)を設立。現在は映像制作を中心に活動。雑誌や書籍の編集者出身という映像作家としては異色の経歴の持ち主。

森山将人
撮影監督
新潟県生まれ。カメラマン。スタジオ勤務を経て、独立。スチールの世界では、雑誌の表紙から広告までいま引っ張りだこの超人気フォトグラファー。近年はムービーにも力を入れ、アーティストのMVやCMなども数多く手がける。

 

ストーリー

古着を愛する男の物語。生まれは大阪・堺。職業お笑い芸人。名は哲矢(森田哲矢)。単独ライブのために訪れた大阪。仕事の合間に立ち寄った店は古着好き、アメカジ好きにとって夢のような場所だった。

あれも欲しい、これも欲しいと、物欲で悶絶する哲矢。なんの気なしに手にした一枚のスウェットは極上のレアもので、その古着をきっかけに店員のナナ(花梨)と急接近!?さらには、お店にナナの叔父である六(ロク:光石研)がやってきて哲矢と古着の奪い合いになり、果てはナナを挟んで珍妙なつばぜり合いが巻き起こる──。

哲矢は、一着の古着とそしてひとりの女の子と、運命的な出逢いを果たす。大阪を舞台に三日間という限られた時間のなかで繰り広げられるストーリー。

古着と恋、そしてお笑い。芸人・哲矢 はそれぞれにどんな恋文を送ったのだろうか。

 

LOCATION

【古着屋】

BONCOURA
大阪府柏原市大県4-17-21
*普段はBONCOURAのオフィス兼アトリエ

It's A Beautiful Day
大阪府大阪市中央区西心斎橋2-13-13 ショウザンビル 1F

mecca
大阪府大阪市中央区西心斎橋2-13-13 ショウザンビル 1F

FLAG
大阪府大阪市中央区西心斎橋2-17-13新すみやビル1F

【飲食店】

白扇(うどん屋)
大阪府八尾市清水町2-1-27

ぬんぽこ(居酒屋)
大阪府大阪市北区天神橋6-2-18

唐変木(そば屋)
大阪府堺市北区新金岡町5-6-103

マリンカ(喫茶店)
大阪府大阪市北区中崎西2-5-15


【その他】

新十三大橋付近
大阪府大阪市淀川区新北野1丁目

白龍大神
大阪市北区中崎西1-9

服部緑地 都市緑地植物園
豊中市服部緑地1-1

大泉緑地
大阪府堺市北区金岡町128

大和川河川敷緑地公園
大阪府柏原市安堂町1番地先

 

『大阪古着日和』予告編

 

公式サイト

 

2023年4月21日(金) 渋谷ホワイトシネクイント、アップリンク京都、ほか全国順次ロードショー

2023年5月19日(金) アップリンク吉祥寺

 

Cast
森田哲矢(さらば青春の光)
光石研  花梨  東ブクロ  森島久
熊手萌  森田啓二  田仲俊博  内藤久純  前田健太  緒方美穂  井口裕弘  戸田克
杉本義訓  森島悠輔  森島弘明

Staff
監督・脚本・編集:谷山武士
脚本:谷山武士 廣川祐樹

エグゼクティブ・プロデューサー:浅野由香
プロデューサー:穂上愛  近藤智之
撮影監督:森山将人 音楽監督:MOODMAN 
音楽:MANTASCHOOL 音声:清水勇輝
スタイリスト:小林新 助監督:八木智大 
アシスタントプロデューサー:堤谷華 撮影:小川尚寛
ヘアメイク:大島千穂 デザイン:稲葉厚
企画協力:「東京古着日和」(CCC Media House)
衣装協力: ブルックス ブラザーズ ジャパン
配給:ラビットハウス  製作:TT BOOKS & FILMS

2023年/日本/カラー/98分/シネスコ/5.1ch

©2023 TT BOOKS & FILMS