『高速道路家族』愛なのか、暴力や虐待なのか!?観る者の心をかき乱し、余韻を残す傑作

『高速道路家族』愛なのか、暴力や虐待なのか!?観る者の心をかき乱し、余韻を残す傑作

2023-04-20 00:00:00

本作は、ホームレス一家と裕福な夫婦の偶然な出逢いが火種となり、予測不可能な展開を巻き起こし、現代社会に強烈なメッセージを投げかけた話題作である。本国では、「『パラサイト 半地下の家族』に次ぐ大傑作!」「可笑しくて、心をかき乱されて、とんでもなく面白い」「予測できない衝撃の展開」など、衝撃の結末に賛否両論の嵐でスマッシュヒットを記録した。

監督の新鋭イ・サンムンは、繁華街で「お金がないから貸してくれよ」と言い寄る人たちの生き方や気持ちが気になり、ホームレスへのインタビューなどから、彼らが人々から傷つけられた人たちで、その傷が世の中への怒りにつながり、社会の中での暮らしを諦めながらも、彼らなりに生きる時間を楽しむ努力をしてることも感じた。「表面では、まるで旅をしているように生きるギウ一家の色合いは、そこから影響を受けた」とヒントを得た。

高速道路のサービスエリアには、食べ物や公共施設、休息スペースなどあり、人が暮らせる環境だと気付き、「とある家族が設備の整ったサービスエリアで遊ぶように暮らしたらどうなるのか」と考えて、自然に『高速道路家族』のタイトルが決まった。実際に中古家具店を営む義両親をモチーフにして、「捨てられた家具を直してきれいにした後、別の人の元で新しい命を得るということが、もしかすると人もそうなのかもしれないという考えが芽生えた」とストーリーを膨らませた。

今回、初の長編作品であるにも関わらず、韓国を代表する演技派俳優たちの今まで見たことのない新しい姿も演出した。ホームレス一家の父親ギウ役には、ドラマ「太陽を抱く月」など多くの大ヒット作品に出演し、本作が7年ぶりのスクリーン復帰となるトップスターのチョン・イルが選ばれた。「チョン・イルさんは、役が決まった後、髪も切らずひげも剃らなかった。話し合いながらギウという人物を作っていったので、彼のアイデアがたくさん反映されている。特に感情をコントロールできず暴走するシ ーンや警察との追撃戦やアクションシーンなど、ひと際肉体的に苦しいシーンが多かったが、その全てのシーンを自ら演じ、全身全霊を注いだ。何よりもギウに対する哀れみを見せてくれて、自分の役を心から愛していると感じた」と期待通りだった。

「シナリオ作成時からラ・ミランさんをヨンソン役に当てはめていた。彼女が演じてくれることは、私も含め全スタッフたちには夢のような出来事だった。驚くことに台本を送るとすぐに快く承諾してくださった。 これは奇跡のようなことである」と『正直政治家 チュ・サンスク』(2021)で青龍映画賞主演女優賞を受賞したラ・ミランをヨンソン役に当て書きした。「彼女の笑顔の裏に深く染み込んだ影は人の心を揺るがせ、幅広い表現力とリアルな演技は、観客を説得させる力がある」と評し、中古家具店でヨンソンがウニにハングルを教えるシーンでは、「彼女たちのやり過ぎていないが、繊細にその時の感情を表現する演技に圧倒された。想像以上の出来で、撮影しながら一緒に泣いてしまった」と打ち明けた。

台本作りから編集段階まで『高速道路家族』が何を伝えるのかと悩み、「このエンディングは、監督として観客に質問を投げかけている。私たちはこんな家族や子どもたちを抱きしめられるのか?個人の善良な意志が全ての状況を解決できるのか?その答えを観客自らが決めるという点で、この映画は主体的な映画なのだ」と、誰かにとってはハッピーエンドだが、誰かにはまだ解決されていない問題と現実を映し出す鏡のような結末となった。

映画音楽は「全体的に幻想的で情緒的なトーンで、合間合間に独特な雰囲気の曲をイ・ミンフィさんのアイデアで挿入し、雰囲気を盛り上げた。とくにエンディング曲は、音楽監督が作り、自ら歌った曲である。観客の皆さんはエンドロールを最後まで見てほしい」とエンディング曲「Walking On」も見逃せない。

イ・サンムン監督コメント

大げさに感じるかもしれないが、世の中に対する恐れと心配、それでも感じられる人との温もり、そして互いへの愛と許しを伝えたかった。私たちが生きているこの世界と共に生きていく人々について、考えられる映画になればと思う。

監督プロフィール

これまで韓国映画史に残る大ヒット作『スキャンダル』(2003)のイ・ジェヨン監督に師事し、映画『バッカス・レディ』(2016)『大人たちは知らない』(2021)やドラマ「アテナ」「失踪ノワールM」の助監督など長期の現場で活動し、しっかりとした準備過程を経た。

ストーリー

「財布を失くしてしまったので、2 万ウォンだけ貸してくれませんか?」テントで寝て、夜空の月を照明として暮らすギウ(チョン・イル)と3人の家族。彼らは、高速道路のサービスエリアを転々とし、再び遭遇することのない訪問者に2万ウォンを借りながら食いつないでいる。ある日、すでにお金を借りたことのあるヨンソン(ラ・ミラン)と別のサービスエリアで再び遭遇してしまう。不審に思ったヨンソンは、ギウを警察に届け出る。ヨンソンは、残されたギウの妻ジスク(キム・スルギ)と子ども2人を放っておけず、家へ連れて帰り一緒に暮らすことに。何不自由のない生活を送るジスクと子どもたち。そんな家族をギウは取り戻そうとするが...。相反するニつの家族の出逢いがとんでもない結末を迎えることとなる。

『高速道路家族』予告編

公式サイト

4月21日(金)  よりシネマート新宿、アップリンク吉祥寺 ほか全国順次公開

4月28日(金)   アップリンク京都

監督・脚本:イ・サンムン
音楽:イ・ミンフィ 『ひと夏のファンタジア』『最善の人生』
美術:ソン・ソイル 『ポエトリー アグネスの詩』『バーニング 劇場版』
出演:チョン・イル、ラ・ミラン、キム・スルギ、ペク・ヒョンジン、ソ・イス、パク・ダオン
英題:Highway Family
字幕翻訳:具美佳
2022 年/韓国/韓国語 5.1ch/128 分/G 指定

配給:AMGエンタテイメント

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