『わたしの見ている世界が全て』佐近監督の「怒りに近い気持ちがふつふつと込み上げてきた結果」出来上がった映画

『わたしの見ている世界が全て』佐近監督の「怒りに近い気持ちがふつふつと込み上げてきた結果」出来上がった映画

2023-03-27 13:11:00

『わたしの見ている世界が全て』で描かれる物語が生まれた動機を佐近圭太郎監督はこう語る。

「”何かを成し遂げるためには犠牲が必要だ”と時折耳にするフレーズがあります。これは自己犠牲の範疇ならば自由ですが、他者を巻き込んだ上で、これを前提化することは自己実現を目的とした欺瞞であり、ただの暴力でしかないぞ!という怒りに近い気持ちがふつふつと込み上げてきた結果、『わたしの見ている世界が全て』という物語が立ち上がりました」

チラシにはこう書かれている「個人主義へのささやかな挑戦を描いた社会風刺エンタテインメント」

部下へのパワハラを理由に、所属するベンチャー企業で退職に追い込まれた主人公熊野遥風(森田想:マドリード国際映画祭主演女優賞)は「成し遂げるには”犠牲”が必要だから、わたしは一人で生きていく。これまでも、これからも」と呟いている。その結果、起業をするために兄弟が住む実家を売ろうと決める。

監督の想いに呼応する形で映画評論家の宇野維正氏はツイッターでこう呟く

「いやはや、これはびっくり。イデオロギーでもアレルギーでもない新自由主義への真摯な問いかけ。無駄な台詞や無駄なショットどころか、無駄な間すら一瞬もない完璧に引き締まった82分間。『わたしの見ている世界が全て』、今年に入ってから見た日本映画でベストです」。

「わたしの見ている世界が全て」と信じて疑わない主人公が行き着く先とは?本作は、共感型とは一線を画すストーリー展開の中で、現代社会の空気を見事に映し出した映画だ。

佐近圭太郎監督コメント

タイトルにも込めましたが、私は自分から見えている世界だけを信奉し、その他の世界への想像力を持たない人や、その振る舞いに対してずっと違和感を抱いてきました。というより、この映画を作ることを通して、自分が心の奥底で抱いていた気持ちに気づいた。というのが本音です。
みんなが色々な苦しみや葛藤を抱えて日々を生きてるし、それは決して他者から簡単に見えるものではないという想いを込めた映画です。
この想いを、東京のみならず、全国に暮らす人々と分かち合うことができたらこんなに嬉しいことはありません!よろしくお願い申し上げます!

監督プロフィール

1990年、千葉県育ち。日本大学芸術学部映画学科監督コース首席卒業。池松壮亮主演の短編『家族の風景』がTAMANEWWAVE映画祭特別賞・主演男優賞など多数受賞。短編『女優川上奈々美』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭に入選、ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2018にて正式上映される。2020年には初の長編『東京バタフライ』が劇場公開。2022年にはEXILEの小林直己主演ドラマ『アイの先にあるもの』の監督を務めた。

 

ストーリー

遥風(はるか)は、家族と価値観が合わず、大学進学を機に実家を飛び出し、ベンチャー企業で活躍していた。しかし、目標達成のためには手段を選ばない性格が災いし、パワハラを理由に退職に追い込まれる。復讐心に燃える遥風は、自ら事業を立ち上げて見返そうとするが、資金の工面に苦戦。母の訃報をきかっけに実家に戻った遥風は、3兄妹に実家を売って現金化することを提案する。興味のない姉と、断固反対する兄と弟。野望に燃える遥風は、家族を実家から追い出すため、「家族自立化計画」を始める。

 

予告編

 

公式サイト

3月31日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺アップリンク京都ほか全国公開

監督・編集:佐近圭太郎
脚本:末木はるみ、佐近圭太郎
出演:森田想、中村映里子、中崎敏、熊野善啓、松浦祐也、川瀬陽太、カトウシンスケ、小林リュージュ、堀春菜、三村和敬、新谷ゆづみ

2022年/日本/82分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch

製作・配給:Tokyo New Cinema

©2022 Tokyo New Cinema