『触れッドペリー』タイトルや予告編からは想像もつかないような人間の心の傷に寄り添った41分の物語

『触れッドペリー』タイトルや予告編からは想像もつかないような人間の心の傷に寄り添った41分の物語

2023-03-09 19:43:00

「触れッドペリー」、タイトルからまず惹きつけられる。しかし、どんな映画か見当もつかない。主人公は、フレッドペリーのポロシャツを着た、どこにでもいそうな風貌の青年。作品の冒頭では、一見普通な彼の風変わりな半生が描かれる。彼は、人間に“触れる”ことに対して異常なまでの執着心を持っていた。しかしそれは、フェティシズムとはまた違った、根源的に人との繋がりを求めるような行為なのだ。さらに、その原因は子ども時代の親からの愛の欠如にあった。冒頭のわずか数分を観るだけで、グッと作品との距離が縮まり、社会の至る所で起こり得る物語なのかもしれないと思えてくる。

仕事を転々とする中で、青年は食堂のオーナーであるハナと出会い、食堂の裏で行われている仕事に誘われる。ハナによって「ペリー」と名付けられた青年は、見ず知らずの人間からかかってくる電話をひたすら取り話を聞き続ける、“トーキングボーイズ”の仕事を始めるのだった。

仕事を続けるうち、ペリーのもとにある少年から夜中に定期的に電話がかかってくるようになる。他愛もない会話を楽しむ二人だったが、ある事をきっかけに楽しいひと時は突然終わりを告げ、ペリーは少年を探しに飛び出していく。

この先ペリーがどうなるのかは、是非自分の目で確かめてみてほしい。ペリーはあまり口数が多いタイプの人間ではない。しかし、陽気なハナやユニークなトーキングボーイズの同僚たち、電話の少年との出会いを通して、彼の表情は変化していく。他人に受け入れられること、他人に求められることを肌で感じ、彼の凝り固まった心は次第に解きほぐされていく。

個性的なキャストたちと、独特なテンポ感で描かれる41分の物語。
タイトルや予告編からは想像もつかないような人間の心の傷に寄り添った物語に、ペリーと同じように心が解きほぐされていく感覚を覚える人も少なくないのではないだろうか。

 

イリエナナコ監督プロフィール

東京生まれ。現在はフリーランスとして活動。監督作に『愛しのダディー殺害計画』『謝肉祭まで』など。映画制作のほか、コピーライティング、クリエイティブディレクションの仕事、絵と言葉の作品の展示などの作家活動を行う。2020年にワンピース専門ブランド「瞬殺の国のワンピース」立ち上げ。

『愛しのダディー殺害計画』はDICE+でも無料配信中。紹介ページはこちらをクリック。

 

ストーリー

ペリーは“触れられること”に飢えている。幼い頃の母親との関係が、大人になった今でも彼の心に穴を開けたままにしている。恋人にも心を開けず、仕事を転々とするペリーに、食堂のオーナーのハナが声をかけ、食堂の裏の仕事に誘う。それは知らない人間たちからの電話を受け、話を聞き続ける仕事だった。そのうち、幼い少年・リュウから電話がかかってくるようになる。

 

予告編

 

公式サイト

3月10日(金)~3月16日(木) アップリンク吉祥寺にて公開

監督・脚本:イリエナナコ
主題歌:ROTH BART BARON「氷河期#2 -Monster-」(SPACE SHOWER MUSIC)
撮影:JUNPEI SUZUKI、録音:中島浩一、助監督:田中麻子、小川修平、川崎僚、
美術:熊澤一平、衣装:萩原慎太郎、ヘアメイク:東川綾子、スチール:小野寺亮、
ポスターデザイン:徳原賢弥
キャスト:横田光亮、野田英治、佐倉星、不二子ほか

2021年/日本/41分/カラー/シネマスコープ/ステレオ

配給:惑星ナナコス

© 惑星ナナコス

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