『エッフェル塔~創造者の愛~』当時としては異例の300mに及ぶエッフェル塔の建設の裏に隠された苦悩や愛の物語を、史実を基にしながらも自由に描く
本作の主人公は、フランスの技術者ギュスターヴ・エッフェル。その名からも想像できる通り、彼は1889年の建造以来パリのシンボルとして世界中に知られているエッフェル塔を設計した人物だ。かの有名な「自由の女神像」の骨組みを設計したのも彼である。
『エッフェル塔~創造者の愛~』は、当時としては異例の300mに及ぶエッフェル塔の建設の裏に隠された苦悩や愛の物語を、史実を基にしながらも自由に描いたエンターテイメント作品である。監督は、2023年ヨーロッパ最大の話題作として注目されているアレクサンドル・デュマの「三銃士」の映画化作品に抜擢されたマルタン・ブルブロンが務める。
1886年、3年後に「パリ万国博覧会」を控えたフランスでは、シンボルとなるモニュメントとして誰が何を作るのか決めるコンクールが開催された。最初は興味を抱かなかったエッフェルであったが、大臣とのパーティーの席でコンクールへの参加を決意する。
最後に彼の背中を後押ししたのは、久し振りに再会した友人で記者のレスタックの妻であり、かつて心から愛し合っていた女性でもあるアドリエンヌからの「野心作を見てみたい」という言葉だった。
建設途中のエッフェル塔を実物大で再現した美術や『ブレードランナー 2049』で視覚効果を担当していたオリヴィエ・カウフェのVFXにより、建造の様子が壮大に尚且つ臨場感あふれる形でスクリーンに映し出されていく。
しかし、建造の道のりは決して華やかなものではなかった。バチカン市国から「ノートルダム大聖堂より高いのは侮辱である」と批判されたかと思えば、作業員たちからも賃金や工事の安全性について不満の声が上がり始める。
また、その裏でエッフェルとアドリエンヌは急接近していく。その先に過酷な運命が待っているとも知らずに。
それでもエッフェルは立ち止まることなく、ひたすら塔の完成へと突き進んでいくのだった。
1889年3月31日の落成日から約3億人が訪れているというエッフェル塔。いかにしてエッフェルが数々の難題と向き合い、塔の完成にまでこぎ着けたのか。そして、なぜ途中で投げ出さなかったのか。本作で描かれている内容は、あくまでフィクションである。しかし、史実を基に想像・推理したドラマであると制作陣は語っている。その真偽がどうであれ、建造の裏にあったであろうドラマを想像すると、より一層塔の存在が特別なものに思えてくる。
エッフェル塔を実際に見てみたくなる、『エッフェル塔~創造者の愛~』はそんなパワフルなエンターテインメントだ。
マルタン・ブルブロン監督コメント
──アドベンチャー映画と壮大なラブストーリーの融合を目指した脚本
歴史上にぽっかり空いたままになっている隙間を埋め、創り上げた仮説が本作の前提になっている。つまり、鉄塔建設に関わることを拒絶していたエッフェルが、アドリエンヌへの愛の証として、プロジェクトを引き受けることにしたという仮説だ。僕ら全員が、大きな感動を呼ぶ壮大な映画を作りたいと思った。
──美術について
完成した形の塔よりも、建設途中の様々な段階の映像の方が、観客の目を惹きつけるだろうとも感じていた。特殊効果を背景にとどめ、キャラクターたちを前面に出す形で一体化させたいと考えた。専門技術をひけらかすことなく、じかに捉えた没入感のあるものを作りたかった。
──9 か月間もの月日を投入した編集と(アレクサンドル・デスプラによる)音楽
アレクサンドルは、いろいろなサンプルを聞かせてくれた。彼の着眼点と様々な提案のおかげで、それまでと違う角度から見ることができたシーンがいくつかあった。曲がついたことで、役者たちやフレームを違う観点から見ることもできた。彼はすぐにライトモチーフを作り、それを基に曲調や色合いの異なる様々なバリエーションを作ってくれた。親密さと壮大さのバランスが見事だった。
監督プロフィール
1979年、フランス生まれ。父はベルトラン・タヴェルニエ監督作品を数多く手掛けたプロデューサーのフレデリック・ブルブロン。短編映画『Sale hasard』(2004)で監督デビュー。コメディ映画『Papa ou maman』(2015)が大ヒットとなり、アルプ・デュエズ国際コメディ映画祭で最優秀作品賞にあたる観客賞を受賞、続編『Papa ou maman 2』(2016)も監督する。これらの作品と本作の手腕が高く評価され、アレクサンドル・デュマの「三銃士」の映画化で、『Les trois mousquetaires: D'Artagnan(原題)』(2023)と『Les trois mousquetaires: Milady(原題)』(2023)の二部作となる超大作の監督に抜擢される。出演はフランソワ・シビル、ヴァンサン・カッセル、ロマン・デュリスらで、2023年ヨーロッパ最大の話題作として注目されている。
ストーリー
アメリカの自由の女神像の完成に協力したことで名声を獲得したギュスターヴ・エッフェルは、「パリ万国博覧会」のシンボルモニュメントの制作を政府から依頼される。だが、倒壊を恐れる住民や景観破壊を主張する芸術家たちが反対運動を巻き起こし、建造は中止になってしまう。栄光の頂点から絶望へと突き落とされたエッフェルの前に、かつて激しい恋の果てに彼の元を去ったアドリエンヌが現れる──。
予告編
公式サイト
3月3日(金) 新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク京都ほか全国公開
監督:マルタン・ブルブロン
脚本:カロリーヌ・ボングラン
音楽:アレクサンドル・デプラ
編集:ヴァレリー・ドゥセーヌ
美術:ステファン・タイヤッソン
出演:ロマン・デュリス、エマ・マッキー、ピエール・ドゥラドンシャン、アレクサンドル・スタイガー、アルマンド・ブーランジェ、ブルーノ・ラファエリ
2021年/フランス、ドイツ、ベルギー/フランス語/108分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/シネスコ/原題:EIFFEL/R15
字幕翻訳:橋本裕充
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
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