『あつい胸さわぎ』「ジブリの主人公みたいだ」という吉田美月喜のアップになった眼を見ていると、まさに"未来は明るい"と思わせる映画だ

『あつい胸さわぎ』「ジブリの主人公みたいだ」という吉田美月喜のアップになった眼を見ていると、まさに"未来は明るい"と思わせる映画だ

2023-01-26 17:06:00

“ 若年性乳がん ”と診断された女子大生(吉田美月喜)とシングルマザー(常盤貴子)、親子それぞれが想いを寄せる相手がいるが、恋愛関係は思い通りにはいかない。和歌山県の港町を舞台に描かれる本作は、毎日を、明日を生きるということの大切さを映画を観るもの全員に気づかせてくれる映画だ。

「今、私が ”乳がんです” と言われたら、本当にどうしていいかわからず、たぶん頭の中が真っ白になると思います」と語るのは、主役の武藤千夏を演じる吉田美月喜。

乳がん患者は約9万人(2021年)でそのうち30歳未満は0.5%の450人と少数だが、乳がん患者は近年増えているという。

映画は、乳がんと診断された千夏を追っていくが、決して病気に悩む少女だけにフォーカスを当てるわけでなく、親子の生きていく日常に、婦女暴行疑惑の新任上司、ちょっと人とは違った少年、未成年の男子と恋愛をする女性(前田敦子)、そしてそんな日常の空気を一気に変える漁港にやってくるハレの時間「サーカス」と、多彩なエピソードで綴っていく。

映画、『あつい胸騒ぎ』は、演劇ユニットiakuの横山拓也が作・演出の舞台「あつい胸さわぎ」を、『恋とさよならとハワイ』のまつむらしんご監督と『凶悪』の脚本家、髙橋泉とのタッグで映画化された。あまりにも映画的に脚色された脚本からは、空間が固定された舞台はどんなだったのだろうと想像もできない。

映画が醸し出すどんな場合でも生きていくことを肯定するバイブレーションは、常盤貴子が語る製作現場にあったようだ。
「これまでの映画界には根性論があったと思うんだけれど、『あつい胸騒ぎの』の現場は、まったく違うところにいて。基本的にみんな褒め合っていた。みんな自由だった本当に、未来は明るいなと思った」。

若年性乳がんを描いた映画ではあるが、監督や共演者が現場で言っていたという「ジブリの主人公みたいだ」という吉田美月喜のアップになった眼を見ていると、まさに"未来は明るい"と思わせる映画だ。

まつむらしんご監督

第31回ぴあフィルムフェスティバルに入選後、 早稲田大学大学院に進学。『ロマンス・ロード』が 2013年SKIPシティ国際Dシネマ映画祭長編コンペティション部門SKIPシティアワードを受賞、第18回釡山国際映画祭アジアの窓部門に正式出品される。2017年『恋とさよならとハワイ』は大阪アジアン映画祭JAPAN CUTS Award、上海国際映画祭アジア新人賞部門【脚本賞 ・撮影賞】受賞。台北金馬映画祭NETPAC賞にノミネート他、台湾では 3都市で劇場公開される。

 

ストーリー

港町の古い一軒家に暮らす武藤 千夏(吉田 美月喜)と、母の昭子(常盤 貴子)は、慎ましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。小説家を目指し念願の芸大に合格した千夏は、授業で出された創作課題「初恋の思い出」の事で頭を悩ませている。千夏にとって初恋は、忘れられない一言のせいで苦い思い出になっていた。その言葉は今でも千夏の胸に“しこり”のように残ったままだ。だが、初恋の相手である川柳 光輝(奥平 大兼)と再会した千夏は、再び自分の胸が踊り出すのを感じ、その想いを小説に綴っていくことにする。一方、母の昭子も、職場に赴任してきた木村 基晴(三浦 誠己)の不器用だけど屈託のない人柄に興味を惹かれはじめており、20年ぶりにやってきたトキメキを同僚の花内 透子(前田 敦子)にからかわれていた。

親子ふたりして恋がはじまる予感に浮き足立つ毎日。そんなある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけてしまう。娘の身を案じた昭子は本人以上にネガティブになっていく。だが千夏は光輝との距離が少しずつ縮まるのを感じ、それどころではない。「こんなに胸が高鳴っているのに、病気になんかなるわけない」と不安をごまかすように自分に言い聞かせる。少しずつ親子の気持ちがすれ違い始めた矢先、医師から再検査の結果が告げられる。初恋の胸の高鳴りは、いつしか胸さわぎに変わっていった……。

 

予告編

 

公式サイト

1月27日(金) 新宿武蔵野館、イオンシネマ、アップリンク京都ほか全国公開

監督:まつむらしんご
脚本:髙橋泉
原作:戯曲『あつい胸さわぎ』横山拓也(iaku)
音楽:小野川浩幸
出演:吉田美月喜、常盤貴子、前田敦子、奥平大兼、三浦誠己、佐藤緋美、石原理衣

2022年/日本/94分/カラー/2K/5.1ch

配給:イオンエンターテイメント、SDP
製作:オテウデザール

©2023あつい胸さわぎ製作委員会

未来への希望を持たせてくれるお勧め映画