『夢の裏側』本物のシエン村で本物の広州だ。でもサッカーをする子供は役者、これがこの映画の基本スタイルだ。フィクションではあるが、現実と緊密に繋がっている

2023-01-18 20:03:00

世界初公開『シャドウプレイ【完全版】』メイキング
中国の鬼才、ロウ・イエ監督の映画制作＝夢の裏側

『シャドウプレイ【完全版】』の脚本家、ロウ・イエ夫人、マー・インリー監督作品。
クランクインから7年の歳月を経てついに世界初公開となる『シャドウプレイ【完全版】』の貴重なメイキングフィルム。
過酷を極めた「洗（シエン）村」での撮影秘話、検閲との闘い、ロウ・イエ・スタイルの秘密に迫る。

外のシーンは決定として住民の生活を撮ろう。さっき通った椅子を並べたお茶屋とか日常風景を。それは確定だが衝突場面は後で決める。
──ロウ・イエ監督

本物のシエン村で本物の広州だ。でもサッカーをする子供は役者、これがこの映画の基本スタイルだ。フィクションではあるが、現実と緊密に繋がっている。だから広州全部が我々の現場で、シエン村は中心的な場所だ。まず創りたいと思ったのはそういう映画だ。今起こっていることは、脚本に書いた。歴史や個人史、家族の歴史をだ。そして大部分は今、現実に起きていることだ。
──ロウ・イエ監督

この物語は80年代に始まるけど監督が嫌がったのは、いかにも型にはまったような時代物になること。時代の特徴はとらえても完全な再現ではなく、大まかな雰囲気がつかめれば縛られなくてもいい。その時代の雰囲気が出てれば、当時作られた服じゃなく、実際は去年売られてた洋服でもその時代風ならいいの。
──マイ・リンリン：メイク・衣装デザイン

タンの古い家の構造から、シエン村の地理的配置まで美学的につかめていれば大丈夫。映画はそこで成立するはずだ。そう考えるとデザインはもう完成している。あとはビジネス中心街とシエン村の関係についてあらゆることを具体的に動かすだけだ。
──ロウ・イエ監督

監督は、もっと自由にという。だから自由の幅を考えるんだ。準備の段階でテストシュートも含めどの程度自由にしていいのか常に試してきたが、僕が思ったより監督の自由の幅はもっと広い。
──ジェイク・ポロック：撮影監督

この作品は他の映画なら意識しない点にこだわる。「なぜそこを歩くのか」「なぜタバコを吸うのか」人の行為を撮る映画とも言える。どの映画もそうだがこの作品は特にカメラが具体的な行為を追っていく。
──ロウ・イエ監督

リンの悲劇は愛の欠如だ。この時ヤン刑事を好きにならなかったら、彼女は完全に悲劇的な人物になってしまう。だが彼女はヤンに惹かれた。清潔で若い刑事に。それも悲劇だ。彼女の闇を引き立てるから。愛しても愛さなくても悲劇なのだ。
──ロウ・イエ監督

脚本は200枚の写真がベースだ。以前パワーポイントの写真はメインではなく補助的に使っていただけだが、今回は早くからビジュアルを先行させた。写真の雰囲気に基づいて脚本を修正するのは、この映画の特別なところだ。
──ロウ・イエ監督

商業映画かそうでないかの区別はないと思う。「私は商業映画に出る」とか言わないだろ。あるいは「芸術映画に出る」とか役者としては区別はないはずだ。商業映画でも同じく演じる。どんな人物でどんな感情なのか同じだよ、監督の仕事にも違いはない。違いがあるとすればストーリーだけだ。
──ロウ・イエ監督

ロウ・イエ監督は一つずつの要求がすごく細かい。照明にここまでこだわる監督は本当に滅多にいないよ。どの要求もとにかくものすごく細かい。でも出来上がった作品はそれを感じさせない。普通に撮影現場に行くと自然とそこに人がいて、ドアを開けて階段を上り、部屋に入る。ごく普通のことも綿密な演出の成果だ。痕跡を残さずに劇的成果を発揮する。
──ジェイク・ポロック：撮影監督