『夜、鳥たちが啼く』佐藤泰志が函館ではなく関東近郊の街を舞台に描いた短編小説が原作の映画

『夜、鳥たちが啼く』佐藤泰志が函館ではなく関東近郊の街を舞台に描いた短編小説が原作の映画

2022-12-08 11:11:00

『夜、鳥たちが啼く』は私小説のような味わいのある映画だ。と書くと、それはそうで、『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』などで知られる作家・佐藤泰志が、函館ではなく関東近郊を舞台に描いた傑作短編小説を原作とし、同2作の映画化を手掛けた高田亮による脚本を城定秀夫が監督した作品だ。 

物語は「結婚もしていないのに、家庭内別居」をした関係を築く男女の話だ。若くして小説家デビューして注目を集めたが、その後、注目集めることもなく昼はコピー機のメンテナンスを行い、自分自身を題材に小説を書き続ける慎一を山田裕貴が演じ、シングルマザーの裕子を松本まりかが演じる。

ロケ地として選ばれたのは、原作者である佐藤泰志の故郷の函館ではなく、埼玉県の飯能市。函館と比較すると特徴らしい特徴もない日本の地方都市だ。映画では、その凡庸な風景の中で生活をする人々を見つめていくことになる。その街では自然との関わりとかはなく、人と人の関係だけが世界を構成する要素で、映画は、その関係の変化を私小説のような味わいで見せていくのだった。

城定秀夫監督プロフィール

1975年9月2日生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学在学中から8mm映画を制作。同校卒業後、フリーの助監督として成人映画、Vシネマなどを中心にキャリアを積む。2003年に映画『味見したい人妻たち(押入れ)』で監督デビューし、ピンク大賞新人監督賞を受賞。その後Vシネマ、ピンク映画、劇場用映画など100タイトルを超える作品を監督。2016、2017、2018、2019年、4年連続でピンク大賞作品賞を受賞。2020年公開の『アルプススタンドのはしの方』がミニシアター系では異例の大ヒットを記録。初日満足度1位(Filmarks調べ)、TAMA映画祭特別賞、「キネマ旬報」ベスト・テン第10位、「映画芸術」ベストテン第3位など数々の栄冠を獲得した同作では、自身もヨコハマ映画祭と日本映画プロフェッショナル大賞で監督賞を受賞。2022年には本作のほか『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』などの監督作品が公開、2023年以降も『恋のいばら』(23年1月公開予定)ほか撮影中の作品や公開待機作品が多数控えている。

 

ストーリー

若くして小説家デビューするも、その後は鳴かず飛ばず、同棲中だった恋人にも去られ、鬱屈とした日々を送る慎一(山田裕貴)。そんな彼のもとに、友人の元妻、裕子(松本まりか)が、幼い息子アキラを連れて引っ越してくる。慎一が恋人と暮らしていた一軒家を、離婚して行き場を失った2人に提供し、自身は離れのプレハブで寝起きするという、いびつな「半同居」生活。自分自身への苛立ちから身勝手に他者を傷つけてきた慎一は、そんな自らの無様な姿を、夜ごと終わりのない物語へと綴ってゆく。

書いては止まり、原稿を破り捨て、また書き始める。それはまるで自傷行為のようでもあった。

一方の裕子はアキラが眠りにつくと、行きずりの出会いを求めて夜の街へと出かけてゆく。親として人として強くあらねばと言う思いと、埋めがたい孤独との間でバランスを保とうと彼女もまた苦しんでいた。そして、父親に去られ深く傷ついたアキラは唯一母親以外の身近な存在となった慎一を慕い始める。慎一と裕子はお互い深入りしないよう距離を保ちながら、3人で過ごす表面的には穏やかな日々を重ねてゆく。だが2人とも、未だ前に進む一歩を踏み出せずにいた。そして、ある夜・・・。

 

予告編

 

公式サイト

12月9日(金) 新宿ピカデリー、アップリンク吉祥寺ほか全国公開

監督:城定秀夫 
脚本:⾼⽥亮
原作:佐藤泰志『夜、⿃たちが啼く』(所収『⼤きなハードルと⼩さなハードル』河出⽂庫刊)
出演:⼭⽥裕貴、松本まりか、森優理斗、中村ゆりか、カトウシンスケ、藤田朋子、宇野祥平、吉田浩太、縄田カノン、加治将樹

2022年/日本/115分/ビスタ/DCP/5.1ch/R15

製作・配給:クロックワークス

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