『泣いたり笑ったり』南イタリアの美しい港町ガエータを舞台とした初老男性×中年男性のロマンティック・コメディ
ローマとナポリの間、ラツィオ州ラティーナ県にある港町ガエータ。解放的なロケーションも魅力の美しきフィールグッド・ムービーが日本の劇場にやってくる。
本作が二作目となるシモーネ・ゴーダノ監督がテーマとして選んだのは、初老男性×中年男性のロマンティック・コメディ。イタリアの下院議会では、2016年5月11日の時点で、同性カップルの結婚に準ずる権利を認める「シビル・ユニオン法」が可決された。しかし、作中でも描かれているように、いざ自分が当事者となると心が追い付かないということは今でも起こり得るだろう。同性には興味を抱いてこなかった漁師のカルロと、セレブで自由奔放な初老のトニ。彼らの恋の行方と、「父親同士の結婚」を素直に受け入れることのできない彼らの家族の変化を描いたのが、『泣いたり笑ったり』なのだ。
相手を想っているが故に、苦しかったり受け入れられなかったりする。トニの娘であるペネロペは、父親からの愛情に飢え、「普通の家族」を求めていたからこそ、二人の結婚に対して拒否反応を示す。しかし、「普通」が変わりつつあるという事実を、受け止め、理解していくことが私たちには求められている。
「その時々に人生に驚かされることの美しさに身をゆだねる」
監督のこの言葉を胸にしまっておけば、本作を観た後にハッピーな気持ちになれるに違いないだろう。
シモーネ・ゴーダノ監督コメント
(左からファブリツィオ・ベンティヴォッリオ、アレッサンドロ・ガスマン、シモーネ・ゴーダノ監督)
──多くの映画をひとつに
プロットを練り上げる段階で、すぐに落とし穴が見つかりました。私たちは、同性愛、社会的対立、(かつてはその逆でしたが)親の選択に対する子どもの判断、家族内の葛藤など、扱うべき問題がいくつもあることに気づいたのです。しかし、それにひるむことなく、私たちはこの広大なテーマを、他者を受け入れるという共通項のもとで材料に変えていかなければならないと考えました。
──悪人の不在
本作の鍵となるのは、悪人が登場しないことです。しかし、美談や偽善に陥ることなく、そんな映画を作るにはどうしたらいいのでしょうか?そこで選んだのは、良くも悪くも全ての登場人物に「寄り添い」、彼らの視点を通して理解することでした。ポジティブなキャラクターであるカルロ(アレッサンドロ・ガスマン)を中心に、一見ネガティブな面を持つ3人のキャラクター、ペネロペ(ジャスミン・トリンカ)、サンドロ(フィリッポ・シッキターノ)、トニ(ファブリツィオ・ベンティヴォッリオ)が物語を展開しています。私は、この3人にも寄り添いながら、なぜ彼らがそんな風に行動するのかを理解し、守りたいとも思ったのです。登場人物たちを愛すること、それが私にとってこの物語の出発点でした。
──愛と家族
これは基本的に愛と家族についての映画です。2人の男たちの愛、そして、それぞれの子どもにとっての2人の父親たちの愛。この作品は何よりもペネロペとカルロの愛の物語であり、道に迷った娘が、自分から最も遠い存在の中に、自分にはいないと思っていた父親の存在を見出すまでの物語です。この物語で、登場人物たちは妥協させられることなく、ただ相手の気持ちを受け止め、ありのままに受け入れる余地を持つことが求められています。「その時々に人生に驚かされることの美しさに身をゆだねる」よう求められるのです。
監督プロフィール
1977年8月31日、イタリア、ローマ生まれ。ローマのDAMSで映画を学び、2002年から短編映画の撮影を始め、FilmmasterやMercurioでは広告の仕事にも携わる。2010年に手掛けた短編監督デビュー作となる『Niente orchidee』では、ジョゼッペ・フィオレッロ、バレリア・ソラリーノが共演し、ヴェネツィア国際映画祭で上映された。また、テレビ番組のディレクターとしての仕事もスタートさせる。2017年に、映画監督・脚本家・プロデューサーのマッテオ・ロヴェーレとの出会いにより、『Moglie e marito(妻と夫)』で長編映画監督デビューを果たす。結婚10年目に離婚の危機に直面した夫婦が、科学実験の結果により中身が入れ替わってしまうという奇想天外なストーリーに、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、カシア・スムトゥニアクが共演した本作では、ナストロ・ダルジェント賞コメディ作品賞にノミネートされた。監督第2作目となる本作『泣いたり笑ったり』では、イタリア・ゴールデングローブ賞でジャスミン・トリンカが主演女優賞に輝き、ナストロ・ダルジェント賞のコメディ部門でコメディ作品賞、さらにアレッサンドロ・ガスマン、ファブリツィオ・ベンティヴォッリオが主演男優賞にノミネートされる。最新作は、ステファノ・アコルシ、ミリアム・レオーネ出演、Netflixで配信中の『マリリンの瞳は黒かった』(2021)。
ストーリー
バカンスを過ごすため南イタリアの港町ガエータの別荘を訪れたのは、快楽的に人生を享受する裕福なカステルヴェッキオ家と、代々漁師の労働者階級のぺターニャ家。価値観や家族観もまるで対照的な2つの家族を待ち受けていたのは、両家の父親トニとカルロの再婚の知らせだった。父親にひとかたならぬ思いを抱く、双方の家族は大混乱!元恋人や娘、息子たち、果ては両家の孫まで巻き込んで、バカンスは予測不能な大騒動に。果たして両家の諍い、トニとカルロの恋の行方は――。
予告編
公式サイト
12月2日(金) YEBISU GARDEN CINEMA、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
12月16日(金)よりアップリンク京都にて公開
監督:シモーネ・ゴーダノ
出演:アレッサンドロ・ガスマン、ジャスミン・トリンカ、ファブリツィオ・ベンティヴォッリオ、フィリッポ・シッキターノ
2019年/イタリア/イタリア語・フランス語/100分/2.35 : 1/5.1ch/原題:Croce e delizia、英題:An Almost Ordinary Summer
字幕:山田香苗
特別協力:イタリア文化会館 後援:イタリア大使館
提供:日本イタリア映画社 配給:ミモザフィルムズ
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