『戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン』戦争中も不屈の精神でワインを造り続けたレバノンのワインメーカーたちのドキュメンタリー
古くから地中海の交易の中心のひとつであった中東の小国レバノン。
1975年以降、断続的に内戦や隣国との軍事衝突が続くこの国は、その不安定な情勢を報じられることがほとんどで、世界最古のワイン産地の一つであるということはあまり知られていない。レバノンワインの起源は5千年前とも、一説には7千年前とも言われ、レバノン南部では2500年以上前のワイナリー遺跡も発見されているという。
内戦によって建物や道路が次々と破壊される中、気候風土に恵まれた美しいこの国のワインを死守してきたワインメーカーたちがいる。これは、戦争という巨大なストレスに晒されながらも未来に希望を見出し、不屈の精神でワインを造り続けてきた人々の生き様であり、ワイン界の著名⼈ジャンシス・ロビンソンやマイケル・ブロードベントなども交えてレバノンワインの魅力を綴ったドキュメンタリーである。酒神バッカスに見守られながら古くから受け継がれてきたレバノンワインには、どこか崇高で原始的な「命」の息吹が宿っているように見える。
監督を務めるのは、マーク・ジョンストンとマーク・ライアン。本作は、この監督2人がマイケル・カラム著『Wines of Lebanon』に感化され、レバノンのワインメーカーらと共に中東の小国レバノンの印象を変えていこうとする試みから始まったのだという。
映画では、語り手たちに共通する瞳の輝きにまず、目を奪われる。戦火に翻弄されながらも、日々を精一杯前向きに柔軟に粛々と生きることで、ワインも人も研ぎ澄まされ、強くなってゆくのだ。中でも印象的なのは、ワインメーカーらを牽引してきたシャトー・ミュザール2代目で、「レバノンワインの父」と評され、小説家エリザベス・ギルバート(『食べて、祈って、恋をして』の著者)が「心の師匠」と仰ぐ、セルジュ・ホシャール氏の慈愛に満ちた笑顔と含蓄溢れる言葉たち。眼から鱗の名言が次々と発せられる。
彼は「ワインはうまい、まずいではない。そこに命があれば、うまいまずいを超越して心を揺さぶる」という。それはもしかすると、優れた土地柄という甘味と、戦争という試練の苦味、両者を超越したところに「命」の宿る味が出現するということも示唆しているのかもしれない。
ワインに興味のある人はもちろん、そうでない多くの人にも、戦地でのワイン造りを通じて得た人生哲学の奥深さに、ハッとするような珠玉の気づきが何かしらある違いない。
ストーリー
戦争ではなく平和をもたらすために内戦中にワイン造りを始めた修道院の神父。レバノンに加えて内戦下のシリアでもワイン造りを続ける兄弟。自分で身を守れるようにと11歳で銃の扱い方を教えられ、父の遺志とワイナリーを受け継ぐ女性。内戦中、虐殺が起こった故郷の村で、村の再起のためにワイナリーを続ける夫婦。
極限の状況でもワインを造り続けてきた11のワイナリーのワインメーカーたちが語る人生哲学や幸福に生きる秘訣とは?
「私がセルジュから学んだものは、ワインのことよりも人の生き方についてだった」と語る『食べて、祈って、恋をして』の著者エリザベス・ギルバートや、ワイン界の著名人ジャンシス・ロビンソンやマイケル・ブロードベントが、あなたをレバノンワインの世界へご招待する。
マーク・ジョンストン監督
MARK JOHNSTON
エグゼクティブ・プロデューサー兼ドキュメンタリー作家。全米1位の映画学校である南カリフォルニア大学を卒業。家を持たず、映画製作のためのお金を貯めるためミニバンに引っ越したこともある。長編映画、ドキュメンタリー、短編アニメーション、ライブイベント番組など、膨大な予算となろうが創意工夫で成功させてきた。「Stones 100k Ultra Marathon」にも挑戦した。
マーク・ライアン監督
MARK RYAN
ロサンゼルス出身。南カリフォルニア大学で映画製作の学士号を取得し、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ美術学校で大学院の学位を取得。過去20年以上にわたり、プロデューサー、ディレクター、撮影監督として5大陸と北極で活躍している。キャリアの初期、アリゾナのホピ族に、30年ぶりに前例がないほど接近した撮影隊の一員であった。ジェームズ・ビアード賞を受賞した短編映画「The Scent of Black」や「Stewards of the Land」など、数々の映画作品に出演。また、MTVのヒット番組「Pimp My Ride」ではプロデューサーを務めている。
『戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン』予告編
公式サイト
2022年11月18日(金) アップリンク吉祥寺、ほか全国ロードショー
監督:マーク・ジョンストン、マーク・ライアン
脚本 : マーク・ジョンストン、マーク・ライアン、マイケル・カラム
プロデューサー:マーク・ジョンストン
製作総指揮:サージ・ド・バストロス、フィリップ・マスード
撮影:マーク・ライアン
音楽:カリム・ドウアイディー
編集:マレク・ホスニー、マシュー・ハートマン
出演:セルジュ・ホシャール、マイケル・ブロードベント、ジャンシス・ロビンソン、エリザベス・ギルバート、ミシェル・ドゥ・ブストロス、サンドロ・サーデ、カリム・サーデ、ジェームズ・パルジェ、ジョージ・サラ、ジャン=ピエール・サラ、ナジ・ブトロス、ジル・ブトロス、ロナルド・ホシャール、ガストン・ホシャール、ファウージ・イッサ、サミー・ゴスン、ラムジー・ゴスン、マイケル・カラムほか
95分/アメリカ/2020年/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル