『ソウル・オブ・ワイン』観ればワインを飲みたくなること間違いなしの映画

『ソウル・オブ・ワイン』観ればワインを飲みたくなること間違いなしの映画

2022-11-04 15:11:00

『ソウル・オブ・ワイン』は、観ればワインを飲みたくなること間違いなしの映画だ。映画の中に出てくる生産者や、ソムリエやレストランオーナーのようにあらゆる形容詞を尽くしてワインの味を語ることができなくても、その言葉も意味や、その形容詞から想像するワインの味の違いを理解する教養がなくても本作品は楽しめるはずだ。

監督のマリー・アンジュ・ゴルバネフスキーはこう語る「私はワインの専門家でも、大の愛好家でもありません。どちらかと言うと、音楽、絵画、映画、詩歌などの芸術一般に興味がありました。ワインは飲んでいましたが、この映画に出てくるようなワインは一度も飲んだことがありませんでした。グラン・ヴァン(偉大なワイン)が何かも知りませんでした」。

ゴルバネフスキー監督のようにアートに関心があるならば、監督が伝えるワインの魅力を映画を通じて知っていくことができる。超基礎知識として、フランスには、ワインの2大産地、ボルドー(南西部)とブルゴーニュ(東部)があり、この映画はブルゴーニュを舞台としていること。ボルドーワインのボトルはいかった肩のボトル、ブルゴーニュワインのボトルはすらっとしたなで肩のボトルということを知っておくだけで十分だろう。

映画の中で2020年に亡くなったワインの権威ジャック・ビュイゼ氏が語っている。
「ワインの本質にある生きた側面を知ることだ。本質を知ることで言葉で表現することじゃない」と。要するに「良いワインを飲みなさい」と。

ワインの素人だったゴルバネフスキー監督も映画を作り終えて達した領域は次のようなものだった。

「この映画を撮って、私の自然との関係は変わりました。大地は生きているということが分かりました」

 

マリー・アンジュ・ゴルバネフスキー監督インタビュー

──何があなたにこの映画を撮らせようと決意させたのですか?

ある日、大のワイン愛好家たちに出会いました。彼らは私の知らないドメーヌについて語り合っていました。私には、彼らの言っている名前を上手く発音することすらできませんでした。しかし、ワインは知れば知るほど、味わえば味わうほど、他のワインも知りたくなるものだということは分かりました。彼らが話すのを聞いていて、ワインとは枠のない世界、広い、奥の深い世界なのだと直感しました。

──結局、この映画を撮る目的は、単純に学ぶことだったのですか?

私は学ぶために映画を撮りません。映画を撮るのは、何かを伝えるためです。知らない世界を発見するだろうという直感はありました。もちろん、勉強し、話を聞かなくてはなりませんし、私自身を偉大なブドウ生産者や本で読んだこと、ソムリエ、そしてジャック・ピュイゼに導かれるままの状態にしておく必要がありました。そして彼らから学んだことのおかげで、この映画までの自分の道を見つけることができました。でも、私の第一の目的は学ぶことではなく、伝えることです。

──どうしてブルゴーニュワインに興味を持ったのですか?

ワイン全般の歴史に関する本を読みました。芸術に関する私の個人的な情熱から、とても早い段階でブルゴーニュに注目しました。芸術を通してブルゴーニュには愛着を感じていました。私にとってブルゴーニュのワインは、大好きな中世芸術と繋がっています。ブルゴーニュのグラン・ヴァンの歴史は中世にまでさかのぼります。またそこにある土と、ブドウ畑と、ワインとの関係にも魅了されました。

──つまり、いわゆるあなたのワインへの愛や食の好みというより、芸術によってブルゴーニュワインに興味を持ったのですね。

はい。全くその通りです。

──この映画で私が魅了されたのは、映像の美しさです。映画の中では、冬のワイン畑ですら美しい。あなたの美に対するある種の崇拝を感じます。

映像が美しいのは、撮ったものが美しかったからです。私は何も変えていません。私たちのチームはとても謙虚な気持ちで撮りました。何も加える必要はありませんでした。ただただ美しかったのです。

──あなたは物事をじっと観察され、たとえば、偉大な映画監督の1人で、私の大好きなジャン=ピエール・メルヴィルを思い出します。

ジャック・ピュイゼが私に何度も言いました。「人は命の要素の動きを速さで置き換える」と。私は映画のリズムによって、この命の要素の動きを取り戻そうと試みました。

監督プロフィール

パリのソルボンヌ大学で美術史を学んだ後、IIIS(Institut international de l’image et du son/国際映像音響学院)で視覚メディアを学び、映画監督としての訓練を受ける。ドキュメンタリーの手法を使い、「命の演出」の豊かさと、詩と、真実をとらえようとしてる。『Promenade dans un Jardin』(2002)ではパリのリュクサンブール公園で流れる時間の詩を、『Le Plus Grand Marché du Monde』(2006)ではランジス市場の魂を、『Les Dentellières』(2008)ではレース職人の繊細な作品に向き合う謙虚さを、『Une Leçon de Musique』(2014)では音楽に自分を開く子供の心を、そして『ソウル・オブ・ワイン』(2019)ではワインの魂など。常に少し変わった場所や人々をフィルムに収め、触れることのできないが重要なものを映し出してきた。

 

ストーリー

ロマネ=コンティをはじめとする世界最高峰のワインを生み出すワイン愛好家の聖地、フランス、ブルゴーニュ地方。1年を通じて名だたる畑を守る生産者たちの、普段は見ることのできない貴重な舞台裏に密着。
彼らがワインとテロワール(土壌や生育環境)について語り、最高級のワインが生まれる貴重なプロセスを、フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリーを思わせる眼差しで、詩的で芸術的な映像にのせて映し出す。
冬から春、収穫を経て、ワインができるまでを体験し、何世紀も繰り返され、またこれからも黙々と繰り返されるであろう日常をじっと見つめるうちに、自然の真理や哲学を見るがごとき感覚が生まれるだろう。

 

予告編

 

公式サイト

11⽉4⽇(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督:マリー・アンジュ・ゴルバネフスキー
出演:ベルナール・ノブレ、クリストフ・ルーミエ、ドミニク・ラフォン、オリヴィエ・プシエ、フレデリック・ラファルジュ、カロリーヌ・フュルストス、オリヴィエ・バーンスタイン、ステファン・シャサン、ジャック・ピュイゼ、オベール・ド・ヴィレーヌ、石塚秀哉、手島竜司

2019年/フランス/フランス語/102分/カラー/1.85:1/5.1ch/原題:L'âme du vin

字幕:齋藤敦子 字幕監修:情野博之 協賛:株式会社ファインズ 
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本、一般社団法人日本ソムリエ協会
配給:ミモザフィルムズ

©2019 ‒ SCHUCH Productions ‒ Joparige Films ‒ 127 Wal

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