第12 回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル

第12 回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル

2022-03-31 12:30:00

『テディ』

ブケルマ兄弟が狼男神話を再解釈し、社会から顧みられることの少ない人々を温かくも辛辣な目線でコミカルに描き出す。

両親のいない19才のテディは高校を中退し、田舎のマッサージ店で働きながら、里親のもとで鬱々と暮らしている。一方で恋人のレベッカには、高校卒業後の明るい未来が待っている。その夏も普通に過ぎゆくはずだったが、周囲では羊の大量死や老婆の死亡事件が起こり、不穏な空気に包まれる。ある満月の夜、テディは正体不明の獣に襲われ、不可解な衝動に突き動かされていく...。

2020年・第73回カンヌ国際映画祭(新型コロナウイルスの影響で通常開催を見送り)のオフィシャルセレクション「カンヌレーベル」作品。

監督:リュドヴィック&ゾラン・ブケル

出演:アントニー・バジョン、ノエミ・ルヴォウスキー

製作:Les Films Velvet, Baxter Films

フランス/2021年/89分

 

『優雅なインドの国々 バロック meets ストリートダンス』

©︎Les films pelleas

フランスの作曲家ジャン=フィリップ・ラモーによるオペラ=バレエの傑作『優雅なインドの国々』は、フランスが植民地を拡大していた1735 年に創作された作品。タイトルの“インド”は、ヨーロッパ以外の異国の地を指している。2019年、パリのオペラ・バスティーユの舞台に初めて立つエネルギッシュなダンサーたちにより、バロックオペラの傑作に若い息吹が吹き込まれ、欧州の歴史が違った角度から見えてくる。監督は『椿姫ができるまで』のフィリップ・ベジア。

ヒップホップ、クランプ、ブレイクダンス、ヴォーギングなど、総勢 30 名のダンサーがパリのオペラ・バスティーユに集い、クレマン・コジトアの演出とビントゥ・デンベレの振り付けで斬新な賭けに出た。フランスの作曲家ラモーのオペラ音楽にストリートダンスをかけ合わせ、バロックオペラ『優雅なインドの国々』を現代に蘇えらせたのだ。そのリハーサルから初演までの様子をおさめたドキュメンタリー映像から、人間模様や現代社会の闇が浮き彫りになる。バスティーユは今を生きるアーティスト達の手に落ちるのか?

監督:フィリップ・ベジア(『椿姫ができるまで』)

製作:Les Films Pelléas

フランス/2021年/108分

 

『ナディア・バタフライ』

パスカル・プラント監督は、長編 2 作目となる本作で、キャリアを捨てて自由を夢見る一人のアスリートの姿を描いた。元競泳選手でオリンピックのメダリストでもあるナディア役のカトリーヌ・サヴァールが、トップアスリートが抱える憂鬱、孤独、不安、葛藤をヒリヒリするほどリアルに見せてくれる。

カナダ代表の競泳選手ナディアは 23 才にして、競技人生に終止符を打ち、不安ながらも新たな人生に踏み出す決意をする。東京オリンピックでの最後のレースが終わり、つかの間の解放感を味わうものの、プールの外に広がる未知の世界で、自分はいったい何者なのかという疑問を抱く。

(字幕協力:大阪アジアン映画祭)

監督:パスカル・プラント

出演:カトリーヌ・サヴァール、アリアン・マンヴィル

製作:Nemesis Films Productions

カナダ/2020年/107分

 

『プレイリスト』

注目の女性BD作家ニーヌ・アンティコが、自由に今を生きる 2 人の女性の日々を描いたヌーヴェルヴァーグへのオマージュ的作品。サラ・フォレスティエとレティシア・ドッシュの最強コンビが、おかしくもほろ苦い現代女性の姿をテンポよく好演。

デザイナー志望だけれどデザインスクールに通ったことのない28才のソフィーは、真実の愛に出会える日を心待ちにしている。恋にも仕事にも積極的なソフィーは傷つくことも多いけれど、怖れてはいない。ダニエル・ジョンストンの名曲「TRUE LOVE WILL FIND YOU IN THE END(最後には愛が君を見つけだす)」が、真実の愛を待つソフィの背中を押す。

監督:ニーヌ・アンティコ

出演:サラ・フォレスティエ(『太陽のめざめ』、『ルーベ、嘆きの光』)、レティシア・ドッシュ(『若い女』、『シンプルな情熱』)

製作: Atelier de Production

フランス/2021年/88分

 

『イカした人生』

親が変性疾患にかかったら...という思いもよらない事態にあわてふためく家族の様子を描いた、ラファエル・バルボニ監督とアン・シロ監督の長編デビュー作。認知症や心の闇に直面し、なんとか乗り越えようともがく家族の光と影が交錯する、ほろ苦くも愛おしい物語。メインキャスト3人の生命力あふれる繊細な演技には、深い感動を覚えること必至。

そろそろ子どもが欲しい30代カップルのアレックスとノエミだが、アレックスの母親スザンヌにおかしな行動が目立つようになる。スザンヌは「意味性認知症」という病気にかかっており、お金を湯水のように使ったり、夜な夜な近所を訪ねてはサンドイッチをねだったり、ハサミとノリで偽の運転免許証を作ったりとやりたい放題。子供に戻ってしまったような母親に手を焼くノエミーとアレックス。子どもが欲しかったはずだけど…...!?

監督:アン・シロ&ラファエル・バルボーニ

出演:ルーシー・ドゥベイ、ジョー・デスール、 ジャン・ル・ペルティエ

製作:Hélicotronc

ベルギー/2020年/87分

 

『ハニー・シガー 甘い香り』

人生を自分の手で切り拓こうとする少女を、イザベル・アジャーニの姪で、自身もアルジェリアにルーツを持つゾエ・アジャーニが好演。少女の成長に家族の物語と植民地の歴史を重ね合わせ、家父長制について考えさせる、カミール・アイヌーズ監督による青春映画。

1993年、パリ。ベルベル人のブルジョワ家庭で育った17才のセルマ。魅力的な青年ジュリアンと出会い、強く惹かれていく中で、家父長的な家族制度による束縛に気がつく。そんな折、故郷のアルジェリアでイスラム過激派が台頭し、内戦が激化、家族にも影響が及ぶ。セルマは本当の自分を発見し、自由を求めて一歩を踏み出す。

監督:カミール・アイヌーズ

出演:ゾエ・アジャーニ、アミラ・カサール

製作:Willow Films, Eliph Productions

フランス/2020年/96分

 

『アリスの空』

©Moby Dick Films

ファンタジーテイストの演出を織り交ぜて、家族の実体験をつむいだ、クロエ・マズロ監督の長編デビュー作。イタリア人女優アルバ・ロルバケルとレバノン出身のカナダ人劇作家ワジディ・ムアワッドの演技が光る。

1950年代、若かりし日のアリスはスイスを去り、陽光あふれるレバノンへ向かう。そして、レバノン発の宇宙飛行士を誕生させることを夢見る遊び心たっぷりの宇宙物理学者ジョセフと恋に落ちる。そんな彼の家族にも受け入れられ幸せをつかんだように思えたが、数年後、内戦が勃発し、残酷にも夢のような生活に終わりが近づく...。

監督:クロエ・マズロ

出演: アルバ・ロルヴァケル、ワジディ・ムアワッド

製作:Moby Dick Films

フランス/2020年/90分

 

『地平線の彼方』

©Box Productions et Entre Chien et Loup crédit photo Gjorgji Klincarov

それぞれに問題を抱えた主人公たちが必死に生きるさまを描いた、デルフィーヌ・ルエリシー監督による話題作。フランスの農村を舞台に、レティシア・カスタとクレマンス・ポエジーが禁断の愛を繰り広げる。

1976年、歴史上最悪の干ばつがスイスを襲った夏。容赦なく照りつける太陽の下、13歳のギュスは無邪気な少年時代に別れを告げる。自然災害を引き金に、家族の間にひび割れが生じ、ガスの大切にしていたものはガラガラと音を立てて崩れていく。ギュスの上にかかる雨雲は、大嵐が吹き飛ばしてくれるだろうか…。

監督:デルフィーヌ・ルエリシー
出演:レティシア・カスタ、クレマンス・ポエジー
フランス、ベルギー/2019年/110分