『a20153の青春』たった一人の存在が孤独な一人を救うことができる

『a20153の青春』たった一人の存在が孤独な一人を救うことができる

2022-10-19 13:00:00

映画タイトルの「a20153」は、派遣社員の登録番号。  川島拓也は少年時代に母親のネグレクト、養父からの虐待を受け、そこから事件に発展する。少年刑務所で過ごし出所した時、社会はコロナ禍に襲われていた。 彼が住むアパートには最低限の生活品、寝具と冷蔵庫とパソコン、そして派遣会社と連絡を取る携帯だけがある部屋。

人はなぜ生きるのか、何のために生きているのか。本一冊もなく、Wi-Fiも当然なく、映画を観たり音楽を聴く事もなく、要するに文化と接する事は一切なく、食うために日雇い労働を続けるだけの毎日。死なないために生きる川島だったが、生きる糧は学生時代にある女性から誕生日に腕時計をプレゼントされたという思い出だった。

この世に生きるどんな人も孤独である、自分の存在を認めてくれる人がこの世界でただ一人でいいのでいれば人は生きていくことができる、普通は親がその存在なのだが、そうでない場合の疎外感は大きい。
ホームレスの人は、自分自信を承認してくれるのを犬や猫に求める人が多いと先日テレビで紹介していた。彼らはペットを川原などで飼っているという。

『a20153の青春』は、たった一人の存在が孤独な一人を救うことができるということがわかる映画といえるだろう。

 

北沢幸雄監督コメント

いわゆる炊き出しに並ぶ方がコロナ前はおおよそ60名ほどだったのがコロナ禍で約10倍の人数に膨れ上がっていると支援団体が伝えています。それに円安による物価高が重なって、支援物資の寄付などが減っていき、底をついてしまうかもしれないと言う話もあります。これは子ども食堂にも言えるそうです。コロナ禍で確実に生活が苦しくなっているんです。最低賃金が先進国最低レベルで、非正規雇用として働く人が労働人口の40%にも増えたことが生活を不安定にしています。先日池袋を歩いていたら20代と思われるホームレスの若者を見かけました。コロナ以前はこのような若者のホームレスは見かけませんでした。

映画『a20153の青春』は派遣として働く主人公の青年がコロナ禍で追い詰められてゆく姿を描いています、弱い立場の若者が行政による支援も受けられないまま孤立してしまう、今回の映画ではそんな若者達に連帯表明をしたい、と言う思いで製作しました。主人公の青年は親からのDV、同級生からのいじめに苦しみ、もがきながらも必死に生きてゆきます。孤独と向き合い、立ち向かっていきます。脚本、監督の映画はこれまでもありましたがプロデューサーも兼ねた作品は初めてでした。すべて一人でこなすのはかなりしんどい作業でしたが、作品に思いを込めることはできたと感じています。

コロナ禍で仕事が減り、アパートを追い出され、ホームレスになる、これを自己責任では片付けられないと思います。社会的な問題として捉え、支援が必要です。若者を孤立させてはいけない。『a20153の青春』は連帯表明をキーワードに多くの若者に観ていただきたいと切に願っています。

 

ストーリー

川島拓也は少年時代、ネグレストの母親と再婚した義父から虐待を受け、そして学校でも酷いいじめに遭っていた。そんな拓也の唯一の理解者は同級生の下館結衣だけだった。

ある日、拓也が結衣から貰って大切にしていた誕生日プレゼントの腕時計を、母親が見つけて酒代にしてしまう。拓也の中で何かが壊れた。酔って寝ている義父と母親に、今までため込んだ鬱憤を晴らすがごとく刃を向け、そして少年刑務所に入った。結衣は、そんな拓也に、希望を捨てないよう手紙を送り続けた。二人の純愛は拓也が刑務所に入っても壊れることはなかった。

出所後拓也は、派遣社員として登録番号No.a20153を付与され、普通の社会人として一人で生計を立てられるように懸命に働く。いつか結衣に逢いに行くために。しかし、運命はそんな彼らに、ありえない現実を突きつける。

 

北沢幸雄監督

東京都出身。株式会社アイ・エム・ティ代表取締役。ユニークフェイスの女性を主人公に描き海外でも話題になった『AZA-ARI』から6年、コロナ禍における格差社会の歪を描く本作。幼児虐待・いじめという題材を扱いながら、あえて映倫指定Gにこだわり、良質のサスペンス作品に仕上げた。

 

予告編

 

公式サイト

10⽉21⽇(金) アップリンク吉祥寺にて公開

監督・脚本:北沢幸雄 
製作:井口秀和、飯泉幸夫 
撮影監督:倉本和人 
照明:淡路俊之 録音:山口勉 編集:佐藤芳郎 ヘアメーク:関東沙織 
キャスティング協力:レイ・グローエンタテインメント 
エンディングテーマ曲:「あなたのように」(歌:Toshie、作詞:ひとりぼっち秀吉、作曲:富澤タク、編曲:ひとりぼっち秀吉、今泉尊州)
出演:兼次要那、神倉千晶、丸純子、寺島ジェイク、外波山文明、風祭ゆき、松田賢二

2022年/日本/104分/カラー/ステレオ

製作・配給:株式会社アイ・エム・ティ

©︎IMT

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