『バビロン』タイムカプセルから解き離れた必見のレゲエ映画

『バビロン』タイムカプセルから解き離れた必見のレゲエ映画

2022-10-06 19:00:00

1978年ジャマイカでレゲエ映画の傑作『ロッカーズ』が製作され、その2年後イギリスで『バビロン』が製作された。

映画の中でラスタファリアンが主人公にこう説く「東にはアフリカ、西にはジャマイカ、第1のバビロン。北にはイギリス、第2のバビロン。人が進む全ての道とその旅路の全てが欺瞞と虚栄に満ちている。虚栄に次ぐ虚栄で人はバビロンから抜け出せない」。

タイトルのバビロンとはラスタ用語で「国家、システム、クソ社会」という意味。ジャマイカは1962年にイギリス植民地から独立し、イギリスは1948年から西インド諸島からの移民を受け入れた。舞台は、アフリカ系、カリブ系の移民が多く住むロンドン南部のブリクストン。

主人公ブルーはレゲエ・クルー「アイタル・ライオン」に所属するDJ。バビロンの中でひとときの自由を得るには大音量のサウンドシステム倉庫に設置しクラブ化した空間が必要なのだ。

1980年にカンヌで批評家週間のサイドバーでプレミア上映された『バビロン』は、イギリスの公開時には、人種的暴力シーンがあるため、レーティングではX指定された。イギリス西部の港湾都市ブリストルでは、初日の夜に一部の観客が座席を引き裂いたりと騒動が起きセンセーショナルな話題を巻き起こした。

監督・共同脚本のフランコ・ロッソはイタリア出身で、共同脚本家のマーティン・スティルマンは、ザ・フーの『四重人格』で脚本を担当している。撮影監督は、後に『キリング・フィールド』や『ザ・ミッション』でオスカーを受賞するクリス・メンゲス。彼のカメラは、クラブの熱気、湿度の高い蒸し暑さ、そして、ロンドンの灰色の風景といった外の世界とのコントラストを的確にとらえている。また本作では英語に加えブルーたち移民がジャマイカの言語パトワ語喋る当時のロンドンをキャプチャーしている。(なおアップリンク吉祥寺のマーケットでは「パトワ語ハンドブック」を発売)

『バビロン』は、長らくイギリス国外で上映されたことがなく、アメリカでは2019年に公開され、日本でようやく公開される。第1のバビロン、ジャマイカで撮影された『ロッカーズ』と同じ時代の第2のバビロン、ロンドンを舞台にした『バビロン』はレゲエファン、音楽ファンならずとも必見のタイムカプセルから解き離れたレゲエ映画だ。

ストーリー

マリファナのくすんだ煙霧が、フロアでゆらゆら揺れている──。サウス・ロンドンに住む青年ブルーは、白人たちの度重なる嫌がらせに耐える日々を送りながらも、昼間は整備士として働き、夜は仲間たちと結成したユニット<アイタル・ライオン>の DJ として活動している。この街のどこにも居場所はないが、力強いレゲエのリズムこそが彼らのアイデンティティであり、音楽活動の拠点であるガレージだけがメンバーにとって唯一の“楽園”だった。サウンドシステム競技を勝ち抜き、強敵ジャー・シャカとの決勝戦を前に意気揚々とする彼らだったが、ある日、大切なガレージが何者かによって荒らされ、ブルーはついに怒りを爆発させてしまう......。

 

フランコ・ロッソ監督

1941年8月29日、イタリア・ピエモンテ州トリノにて生まれる。監督、プロデューサーで、特に1980年にナショナル・フィルム・ファイナンス・コーポレーションが支援したロンドン南部の黒人ジャマイカの若者を描いたカルト映画『バビロン』で知られる。2016年12月9日に他界。

 

予告編

 

公式サイト

10⽉7⽇(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督:フランコ・ロッソ
脚本:マーティン・ステルマン、フランコ・ロッソ
撮影:クリス・メンゲス 音楽:デニス・ボーヴェル、アスワド
出演:ブリンズリー・フォード、カール・ハウマン、トレヴァー・レアード、ブライアン・ボーヴェル、ヴィクター・ロメロ・エバンス、アーチー・プール、T.ボーン・ウィルソン、ジャー・シャカ

1980年/イギリス/94分/カラー/原題 : Babylon

配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
宣伝:VALERIA

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