『PIG/ピッグ』溺愛するブタを奪還するべく戦う寡黙な男を描いた異色のリベンジ物語

『PIG/ピッグ』溺愛するブタを奪還するべく戦う寡黙な男を描いた異色のリベンジ物語

2022-10-03 11:30:00

山奥で共に暮らす相棒の豚がある日盗まれ、取り戻すために跡を追う寡黙な男のリベンジ物語。男の内に秘めた想い、愛、哀しみが、最後には清々しい風となって心を通り抜けていくような、鮮烈なカタルシスをもたらしてくれる映画である。

新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2022/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2022」で好評を博し、単独劇場公開に漕ぎ着けた本作。アカデミー賞俳優、ニコラス・ケイジ主演の最新作で、鬼気迫る視線の演技がとりわけ見事だ。

監督を務めるのは、本作が脚本・監督を担う長編デビューとなるマイケル・サルノスキ。本作にて高い評価を受け、『クワイエット・プレイス』シリーズ第3弾の監督抜擢へとつながった。

元アメリカ大統領、バラク・オバマ氏が選ぶ2021年度お気に入りの映画12本に『ドライブ・マイ・カー』、『ウエスト・サイド・ストーリー』とともに挙げられ、数々の映画祭で高い評価を得ている。米批評サイトのロッテントマトでは97%フレッシュを獲得。主演、ニコラス・ケイジ自身も後世に残したい3本の映画のひとつとして本作を挙げた。

さて、つい先日公開されたばかりの『LAMB/ラム』は羊、本作『PIG/ピッグ』は豚が主役の物語である。ほぼ同じ時期に日本で公開されたこの2作品は、図らずも動物が重要な役割を演じ、どことなく、そこはかとなく、なにかが似ている。

「ネイチャースリラー」「リベンジスリラー」とそれぞれ銘打った、いずれもスリラーであること、主役の動物は近くにいる人間にとってかけがえのない大切な存在として描かれていること、誰もが楽しめるような類の映画ではないが、映画批評家やシネフィルの間で高い評価を得ていること。さらには、『LAMB/ラム』のヴァルディミール・ヨハンソン監督と『PIG/ピッグ』のマイケル・サルノスキ監督、それぞれのデビュー作であり、脚本・監督を同時に担っているところまで同じである。

羊と豚という動物が持つ固有のイメージが対照的である以外、重厚感、リアリティ、映像美……完成度の高さまでどこか似ていると感じるのは気のせいだろうか。興味を持たれた方はぜひ、劇場で見比べてみていただきたい。

 


ストーリー

オレゴンの山奥で、孤独な男ロブ(ニコラス・ケイジ)はトリュフ狩りをする忠実なブタと住んでいた。

ロブはトリュフバイヤーのアミール(アレックス・ウルフ)と希少で高価なトリュフを売買し、わずかな物資で生活していたが、ある日大切なブタが何者かによって強奪されてしまう。

ロブはブタを奪還するためにポートランドの街まで下り、アミールと手がかりを捜す。

ロブはブタの行方を辿る中、故郷でもあるポートランドで自身の壮絶な過去と向き合うことになる。

 

 

マイケル・サルノスキ 監督

マイケル・サルノスキ
監督・脚本

アメリカの監督、脚本家、編集者、作家。本作「ピッグ」(2021)で監督デビュー。イェール大学に通ったプロデューサーのヴァネッサ・ブロックと共同で脚本を書きあげた。最初に出演し、プロデュースした映画(短編ドラマ)は『ファイトナイトレガシー』(2011)。

 

『PIG』予告編

 

公式サイト

 

2022年10月7日(金) 新宿 シネマカリテ、アップリンク京都、ほか全国ロードショー

 

Cast
ロブ:ニコラス・ケイジ 『ウィリーズ・ワンダーランド』、『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』
アミール:アレックス・ウルフ 『ヘレディタリー/継承』、『オールド』
アミールの父:アダム・アーキン 『セッションズ』
ローリー:カサンドラ・バイオレット

Staff
監督・脚本:マイケル・サルノスキ 『A Quiet Place Part Ⅲ(原題)』
脚本:ヴァネッサ・ブロック

2020年/アメリカ/ 英語/ 91分/ カラー/シネスコサイズ/原題:PIG/日本語字幕:渡邉貴子

配給:カルチュア・パブリッシャーズ
2020 Copyright © AI Film Entertainment, LLC