『メイクアップ・アーティスト:ケヴィン・オークイン・ストーリー』すべての女性は本来美しく、メイクアップはその美しさを発見するためのツールに過ぎない

『メイクアップ・アーティスト:ケヴィン・オークイン・ストーリー』すべての女性は本来美しく、メイクアップはその美しさを発見するためのツールに過ぎない

2022-10-03 11:11:00

『メイクアップ・アーティスト:ケヴィン・オークイン・ストーリー』は、「すべての女性は本来美しく、メイクアップはその美しさを発見するためのツールに過ぎない」という"美の哲学"の持ち主ケヴィン・オークインの仕事と人生を描いたドキュメンタリー。

彼が2002年に40歳で鎮痛剤のオピオイド中毒で亡くなってから今年が20年目にあたる。映画は、プロフェッショナルとしてメイクアップアーティストの仕事に人生を捧げた姿勢と自身のセクシャリティを受け入れられてもらえず、イジメに遭っていたルイジアナ州時代のパーソナルなストーリーも描く。

1983年、若干21歳でレブロンのクリエイティブディレクターとして抜擢され、画期的なコンセプトの化粧品 "ザ・ニューネイキッズ" を発売。その後90年代に資生堂の "インウイ" のクリエイティブディレクターに就任し、ニュートラルというコンセプトに引き継がれる。

ザ・ニューネイキッズが発表された時代、アメリカでは、白人女性向けと、黒人女性向けメイクが販売されていた。ケヴィンは、すべての肌色のためのメイクアップをデザインすることに取り組み、何層もの製品で覆い隠すのではなく、女性の自然な美しさを明らかにするという哲学で化粧品とメイク法を提案したのだった。

アメリカ南部のルイジアナ州で養子として育ったケヴィンは、子供の頃からメイクアップに興味があり、いつも姉や妹にメイクアップを行い、その結果をポラロイドカメラで撮影していた。

バーブラ・ストライサイドが幼少のケヴィンの憧れの対象で、街では変わった存在であった。映画では、ニューヨークに行き、その天才的なメイクの実力が認められ、VOGUEの仕事で、憧れだったバーブラのメイクをするエピソードも描かれる。

ケヴィンが活躍した90年代のニューヨークは、スーパーモデルの時代で、ケイト・モス、ナオミ・キャンベル、チャンドラー・ノース、リンダ・エヴァンジェリストなどトップ・モデルなど何百人とのセレブとの仕事を行い、そして時代がMTVの時代になると、アーティストとの仕事も増え、マドンナ、ホイットニー・ヒューストン、ジャネット・ジャクソン、ティナ・ターナー、ビョークなどのメイクを行い、モデル自身がケヴィンを指名するようになっていった。

本作のティファニー・バルトーク監督が一番好きなケヴィンのアーティストの仕事はマイケル・ジャクソンとジャネット・ジャクソンのミュージック・ビデオ『Scream』だという。

映画の中ではケイト・モスがケヴィンに頭をガシッと押さえつけられ、眉毛を抜かれて細眉にされたエピソードを語っており、一気に細眉が流行になったことが語られる。日本でも安室奈美恵をはじめ細眉のメイクがトレンドとなった時代を知っている方も多いだろうが、そのメイクのオリジナルはケヴィン・オークインだったことを本作で知ることができる。

バルトーク監督によるとアメリカで一番ケヴィンの仕事として支持されたのは細眉にしたジェニファー・ロペスのMV『Wating For Tonight』だったという。

映画は、ケヴィンの幼少時代を兄弟姉妹が語り、そして恋人ジェレミーとのハワイでの結婚式などのプライベートなパートと、本作が何よりも魅力的なのは、スーパー・モデルのケイト・モスや、女優のイザベラ・ロッセリーニなどケヴィンと関わりのあった多くのセレブのインタビュー、そしてケヴィン自身の言葉により、彼の「女性は本来美しい」という " 美の哲学" が伝わってくることだろう。

バルトーク監督は本作を観る日本の観客に向けて次のようなメッセージを言っている。

「映画をご覧になるみなさんが、楽観的でポジティブな気持ちで映画館を出てくださるといいなと思います。”何でも可能だ ! ” という気持ちになってもらえたら。ケヴィンはそんなふうに考えていましたし、彼の人生を映画館でご覧になった方にもそうなってほしいと思うでしょう」

ストーリー

1990年代、細眉、リップライナーが流行、そして光と影を駆使して立体感を出す「コントゥアリング」が爆発的に広まった。その革新的なモードメイクによって世界を席巻したのは、21才の若さでレブロンのULTIMAのクリエイティブ・ディレクターとして起用され、そして資生堂ブランドINOUIの全盛期のクリエイターだったことでも知られる天才メイクアップ・アーティスト、ケヴィン・オークイン。しかし、このように人気絶頂だった彼は、頭痛と共に精神的苦痛に長年悩まされ、オピオイドによる中毒で2002年に突然の死を遂げる。

*オピオイドは手術中・手術後の痛み、分娩時の陣痛等、急性痛や長期間続く慢性痛に対する鎮痛薬として用いられる。

 

ティファニー・バルトーク監督

フィラデルフィアのザ・アーツ大学で美術学士号を取得後、バルトーク監督はニューヨークで女優業をしていたが、メイクアップ・アーティストとしての才能があることに気づき、撮影現場の有名人やスタッフを相手にメイクの技を磨くようになる。しかし最終的に映画そのものに魅せられ、映画制作の道に進む決心をした。これまでに携わった作品には、ドキュメンタリー『Altered by Elvis』(2006年/ジェイス・バルトークと共同監督)や、短編作品『Little Pumpkin』(2008年)、『Fall to Rise』(2014年/ジェイス・バルトーク監督)、『Suddenly』(2014年/メラフ・エルバス監督)、『Cocked and Locked』(2017年/メラフ・エルバス監督)、『Last Chance』(2020年)などがある。『メイクアップ・アーティスト:ケーヴィン・オークイン・ストーリー』はバルトーク監督の長編デビュー作品である。現在、ニューヨークを中心としたエンターテインメント業界における平等を訴える非営利団体であるFilm Fatalesの一員として、ティファニーは、バーレスターのディタ・フォン・ティースを紹介するドキュメンタリー映画を制作している。

 

 

予告編

 

 

公式サイト

10⽉7⽇(金) 渋谷ホワイトシネクイント
10⽉14⽇(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺、シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸ほか全国順次公開

監督:ティファニー・バルトーク
出演:ケイト・モス、リンダ・エヴァンジェリスタ、ナオミ・キャンベル、シェール、イザベラ・ロッセリーニ、ブルック・シールズほか

2017年/アメリカ/102分/原題:Larger Than Life: The Kevyn Aucoin Story

字幕翻訳:額賀深雪 
配給・宣伝:アップリンク 宣伝協力:NEGA

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