セザール賞新人監督賞受賞イタリア人監督が描く南仏のアパルトマンで暮らす二人の女性
南仏のアパルトマンの最上階に住む二人の女性。恋愛関係でありながら、表向きはただの隣人同士にみえるように暮らしている。
『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』は、踊り場のあるフランスのアパルトマンの最上階の空間を舞台とし、1980年生まれのイタリア人監督フィリッポ・メネゲッティが、二人の女性のラブストーリを、スリラーのコードを借りながら描いた。長編監督デビュー作の本作で2021年セザール賞の新人監督賞を受賞した。
フィリッポ・メネゲッティ監督コメント
私の描く主人公たちの人生の選択の複雑さと、家族に関しては、彼女たちがその選択を完全に自分のものにすることできないことについてのインスピレーションは、私が知る多くの人々から得たもので、彼らの軌道が深く印象に残っているからです。長年にわたって、そうした人々についての映画を作りたいと思って来ました。
ある日、友人の家のドアベルを鳴らした時でした。最上階から声が聞こえてきて、様子を見に上ってみると、そこにある二つの部屋の玄関の扉が開いていて、それぞれの部屋から、お互いに話しかけている二人の女性の声が聞こえたんです。後で友人から聞いた話によると、その二人の女性は70代になる未亡人で、常に扉を開けたままにすることで、二つの部屋の踊り場を最上階全体に広がるアパルトマンの一部にしてしまい、孤独を回避していたそうです。
それが、頭の中で何かの引き金となって、物語が思い浮かびました。互いに繋がったこの二つのアパルトマンは主人公たちの生活空間であると同時に、彼女たちが外の世界とどう関わっているのかを反映し、表している象徴的な空間でもあります。
踊り場は、二つの部屋をつなぐ非常に重要な空間です。最初は常に開かれていた二つの玄関の扉はやがて閉じられ、この簡単に侵入できた空間をある種の境界に変えてしまいます。 開かれた扉、閉じられた扉というイメージは、マドレーヌの家族によって排除されたニナを表すシンプルで効果的なメタファーだと思いました。
そのおかげで、ジャンルの面でも楽しむことができました。私は最初からこのラブストーリーをまるでスリラーであるかのように撮りたかったのです。覗き穴から覗く目、夜の侵入者……といったように、サスペンスのコードを借りながら、それらを再解釈することで、この映画の世界と整合性を持って調和させようと考えました。
『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』予告編
『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』
4月8日よりシネスイッチ銀座、4月15日よりアップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー
監督:フィリッポ・メネゲッティ
出演:バルバラ・スコヴァ、マルティーヌ・シュヴァリエ、レア・ドリュッケール、ミュリエル・ベナゼラフ、ジェローム・ヴァレンフラン
配給:ミモザフィルムズ
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