12月2日(金)よりユーロスペースにて現役日藝生主催の映画祭「領土と戦争」が開催、1週間で全14作品が上映

12月2日(金)〜8日(木)の一週間、ユーロスペースにて日本大学芸術学部映画学科3年映像表現・理論コース映画ビジネスゼミによる学生主催の映画祭「領土と戦争」が開催、全14作品が上映される。
今年で12回目となる現役日藝生主催の映画祭。テーマ設定、企画から作品選定・上映交渉・ゲスト交渉・チラシやパンフレット のデザイナー探しから制作、そして会場運営に至るまで、全てが学生主導で行なわれている。

一昨年の「中国を知る」、昨年の「ジェンダー・ギャップ」に続き、今回はテーマを「領土と戦争」とし、領土問題を戦争という観点から描いた映画を取り上げる。

沖縄返還50周年を記念して沖縄関係では3作品上映。
高嶺剛監督の『ウンタマギルー』(1989)は、日本復帰直前の沖縄を舞台に、沖縄語で展開されるファンタジー映画。キネマ旬報ベストテン第4位。ベルリン国際映画祭カリガリ賞、日本映画監督協会新人賞を受賞した本作は全編日本語字幕付きで久々の35㎜上映。 沖縄戦におけるスパイ戦やゲリラ戦の真相を探る衝撃のドキュメンタリー『沖縄スパイ戦史』(三上智恵、大矢英代共同監督、2018)、特志看護婦として動 員された女学生「ひめゆり学徒隊」を描いた今井正の代表作『ひめゆりの塔』(1953)を上映。兵士、市民と立場の違う人々から捉える戦争は沖縄の新たな一面が浮き彫りとなる。


(『ひめゆりの塔』より)©東映

第二次世界大戦の日本とアジアの関係を振り返り、日本人及び現地人に対して、日本のフィリピン占領を正当化した阿部豊監督の『あの旗を撃て コレヒドールの最後』(1944)を上映。また、李炳逸監督のデビュー作『半島の春』(1941)は日本による朝鮮映画令施行以降、初めて検閲に合格した朝鮮映画であり 映画を愛する朝鮮の映画人たちの撮影現場を描く。日本への愛憎半ばする状況で日本語と韓国語が入り混じり、半島映画社の設立式で内鮮一体が提唱されるなど、日本統治下の朝鮮をよく表している。韓国映像資料院と交渉し上映が決定。領土を占領する側となった日本も見つめ直す。

日本だけではなく、世界中の戦争、南北分断、現代の紛争まで幅広い視野で上映。
ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督が手がけた傑作『カティンの森』(2007)では1943年に多数のポーランド将校の遺体が発見された「カティンの森事件」 を元に、ソ連軍の捕虜となってしまったアンジェイ大尉の運命を描いた作品。冒頭、ドイツ軍の侵攻から逃れる人々と、ソ連軍の侵攻から逃れる人々がポーラ ンドのブク川の橋の上で出くわすことで物語が深刻化していく。第80回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。日本での権利が切れていたが、ポーランドの権利元と交渉し上映が実現。 ナチスに支配された都市ダンツィヒ(現ポーランドのグダニスク)で超能力を手に、子供のままでい続ける主人公オスカルを追うフォルカー・シュレンドルフ監督 の『ブリキの太鼓』(1979)、アルジェリア戦争末期のアルジェリア人の闘争を描くポンテコルヴォ監督『アルジェの戦い』(1966)、 朝鮮戦争における南北の極限の戦いを描いたチャン・フン監督の代表作『高地戦』(2011)、第二次チェチェン紛争さなかチェチェン共和国にあるロシア軍駐屯基地を訪問するアレクサンドル・ソクーロフ監督の『チェチェンへ アレクサンドラの旅』(2007)、故郷ボスニアの紛争による傷跡を描き続けるジュバニッチ監督の『アイダよ、何処 へ?』(2020)などにも注目。どの映画からも戦場の様子や戦時下の生活をリアルな映像を通して戦争の意味を訴えている。領土を占領され自由を奪われた人々の思いとは何か、現在も深刻化する戦争を目の前に、この映画祭が今の私たちが改めて考える機会になることを願う。


(『チェチェンへ~アレクサンドラの旅』より) 写真提供:パンドラ

【映画祭詳細】
タイトル:映画祭『領土と戦争』
主催:日本大学芸術学部映画学科映像表現・理論コース映画ビジネスゼミ、ユーロスペース
会期:2021年12月2日(金)~ 12月8日(木) 1日4回、各作品2回ずつ上映
会場/一般のお問い合わせ:ユーロスペース(東京都渋谷区円山町 1-5KINOHAUS3F TEL:03-3461-0211) 
公式ホームページ: http://nichigei-eigasai.com/
     Twitter:https://mobile.twitter.com/nua_eigasai2022
   Instagram:https://www.instagram.com/nichigei.eigasai/
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■上映作品

・『半島の春』(李炳逸(イ・ビョンイル)/1941年/韓国/35mm→デジタル/84分/所蔵:韓国映像資料院)
・『狼火は上海に揚る』(稲垣浩/1944年/日本=中国/65分(欠落前92分)/35mm/配給:大映→KADOKAWA)
・『あの旗を撃て コレヒドールの最後』(阿部豊/1944年/日本/35mm/108分/配給:映画配給社→東宝)
・『ひめゆりの塔』(今井正/1953年/日本/35mm/128分/配給:東映)
・『アルジェの戦い』(ジッロ・ポンテコルヴォ/1966年/イタリア=アルジェリア/35mm→DCP/121分/配給:松竹映配→コピアポア・フィルム)
・『地獄の黙示録 ファイナルカット』(フランシス・フォード・コッポラ/1979年→2019年/アメリカ/DCP/182分/配給:日本ヘラルド映画→KADOKAWA)
・『ブリキの太鼓』(フォルカー・シュレンドルフ/1979年/⻄ドイツ=フランス/35mm→デジタル/142分/配給:フランス映画社→フィールドワークス)
・『ウンタマギルー』(高嶺剛/1989年/日本/35mm/120分/配給:PARCO)
・『チェチェンへ アレクサンドラの旅』(アレクサンドル・ソクーロフ/2007年/ロシア=フランス/35mm/92分/配給:パンドラ=太秦)
・『カティンの森』(アンジェイ・ワイダ/2007年/ポーランド/35mm→デジタル/122分/配 給:アルバトロス・フィルム→TVP)
・『高地戦』(チャン・フン/2011年/韓国/デジタル/133分/配給:ツイン)
・『沖縄スパイ戦史』(三上智恵、大矢英代/2018年/日本/DCP/114分/配給:東風)
・『運命は踊る』(サミュエル・マオズ/2017年/イスラエル=ドイツ=フランス=スイス/DCP/113分/配給:ビターズ・エンド)
・『アイダよ、何処へ?』(ヤスミラ・ジュバニッチ/2020年/オーストリア=ルーマニア=オランダ=ドイツ=ポーランド=フランス=ノルウェー=トルコ/DCP/101分/配給:アルバトロス・フィルム)