チェコで開催中(7/1-9)のカルロリヴィ・ヴァリ国際映画祭のクリスタル・グローブ・コンペティション部門に工藤将亮監督の『遠いところ』が出品されている。
ストーリー
アオイは高校を中退し、2年前にマサヤとの間に男の子を出産した。二人は沖縄で生まれ、暮らしている。マサヤが失業し、家事もままならず、生活のためにナイトクラブのホステスとして働いている。そんな中、マサヤは仕事を失い、家事もままならず、未熟で依存心の強い二人の関係は悪化し、ケンカが絶えなくなり、生活崩壊の危機に陥る。アオイは息子との絆を胸に、解決への道を歩み始める。
プロダクション・ノート
主人公の17歳の女性は、夫の身体的暴力にさらされている。逃げ道はなく、彼女を導く者もいない。自分と小さな子どもの安住の地を確保できず、暴力を振るう夫とも互いに依存し合い、別れることができない。彼女の未熟さ、決断力のなさ、現実認識の浅さは、現代日本のある層の女性の生き方を映し出している。
本作は、監督の母親が癌で余命宣告を受けた頃に構想され、2015年頃から沖縄の子どもの貧困やDV、シングルマザーに関するドキュメンタリーが多数発表された時期と重なります。沖縄でこうした困難に直面する若い女性にインタビューしたり、支援団体に相談したり、歓楽街で若者の生活を探ったりして、3年かけてストーリーを練り上げた。子どもの貧困や、自立を目指す若い女性の葛藤に着目し、全編沖縄で撮影を行いました。
私たちの調査は、経済的な自立と精神的な自立は別物であることを示唆しました。貧困は物質的な欠乏だけでなく、心の問題として取り組まなければならないのです。彼女たちは生活やお金の管理についてほとんど理解していないため、物質的な支援では自立を確保することはできません。家を出ることが通過儀礼となり、携帯電話ひとつで移動できる時代にあって、彼女たちが自分の居場所を見つけ、自己実現することは困難なことなのです。
本作の狙いは、老若男女が強いプレッシャーにさらされる日本社会の構造的な問題を浮き彫りにすることにある。沖縄の一人の女性の人生を描くことで、これらの問題の根本的な原因についての議論を喚起することを期待しています。