米国の非営利団体ラティーノ・ドナー・コラボラティブ(LDC)は、ラテン系住民の表象不足によって、ハリウッドが年間120億〜180億ドル規模の収益機会を逃しているとする報告書を発表した。これは多様性の問題にとどまらず、映画・テレビ業界の経済戦略に関わる課題として位置づけられている。
LDCが公表した最新報告書は、コンサルティング会社マッキンゼーの調査をもとに、米国のラテン系消費者が映画興行やテレビ業界にもたらす経済効果を分析した。それによると、ラテン系観客はヒット映画の興行収入のうち約2000万ドル分を占めているとされる。ラテン系の俳優やキャラクターを積極的に取り入れることで、作品ごとにさらに2000万〜4000万ドルの収益増加が見込めるという。また、『ブラックパンサー』のような大規模フランチャイズ作品でラテン系観客の支持を獲得できれば、年間6億ドル規模の追加収益につながる可能性も示された。
一方で、ラテン系の俳優、脚本家、監督、プロデューサー、経営層の割合は依然として低水準にとどまっている。報告書は、企画承認権限を持つ経営層や意思決定層にラテン系人材が少ないことに加え、ラテン系文化への理解不足や無意識の偏見が、新たな才能や企画が主要スタジオへ進出する障壁になっていると指摘した。LDCは、ラテン系住民の購買力が約2兆8000億ドルに達するなか、その市場価値が十分に反映されておらず、観客の実態と作品内容との間にギャップを生み出しているという。
報告書発表に合わせて開催された業界関係者による討論会では、ラテン系クリエイターがYouTubeなどを活用して従来のスタジオシステム外でキャリアを築く可能性についても議論された。今年はYouTube出身のカリー・バーカー監督による『オブセッション 災愛』や、ケイン・パーソンズ監督による『Backrooms』が成功を収めており、インターネット発のクリエイターが映画業界で存在感を高めている。LDCは、多様な人材の登用を社会的公正の問題としてだけでなく、映画産業の収益拡大につながる経営課題として捉えるべきだと訴えている。
参照:Variety