沈黙と加担の構造を問う  ラファエル・マヌエル初長編『Filipinana』欧州初披露

フィリピン映画『フィリピニャーナ(Filipinana)』が、ベルリン国際映画祭でヨーロッパ・プレミア上映される。

本作は、フィリピン人監督ラファエル・マヌエルが7〜8年をかけて製作した初長編映画だ。物語の舞台は、干ばつと酷暑に覆われたフィリピン。北部の農村出身で17歳のイサベルはマニラ郊外の高級カントリークラブで働き始め、富裕層の会員と、それに従事するスタッフによって成り立つ閉鎖的な空間に足を踏み入れる。施設の内部を進むにつれ、個人の過去と社会構造が重なり合う現実が浮かび上がっていく。

作品はサンダンス映画祭で審査員特別賞(クリエイティブ・ビジョン賞)を受賞し、北米配給はKino Lorberが取得した。高級施設を舞台とする点からHBOの『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート』との比較もなされるが、マヌエルは直接的影響を否定し、形式や視点の違いを強調している。また、本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるのは、中国の映画作家 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)である。マヌエルはロレックス・アート・イニシアチブを通じて2年間ジャの指導を受け、その経験が本作の制作にも影響を与えたと語っている。

マヌエルがゴルフクラブという舞台を選んだ理由の一つは、暴力を「遠い出来事」ではなく、身近なものとして捉え直すためだ。貧困や暴力を異国的に描く表現が、観客を無関係な立場に置いてしまう状況を批判し、「沈黙し、受動的に生きること自体が、暴力的な構造への加担になり得る」と語る。本作は明確な答えを提示せず、小さな行為が変化を生む可能性に観客の思考を委ねる。

厳冬のベルリンでの上映に際し、マヌエルはマニラの熱気と湿度を体感してほしいと述べている。

参照:Variety