ジュネーブ国際人権映画祭2026:パレスチナ映画による社会的介入

2026年3月、ジュネーブ国際人権映画祭(FIFDH)の専門プログラム「Impact Days」にて、パレスチナ映画の巨匠ラシード・マシャラーウィが主導するプロジェクト「Ground Zero」が発表された。本作は、ガザの若手制作者22名が極限の戦時下で記録した短編集であり、単なる悲劇の記録を超えた生々しい「生存の証明」である。本プログラムの核心は、映画を鑑賞の対象に留めず、NGOや政策立案者と映画人を直結させることで、作品を国際社会への具体的な介入手段へと変貌させる点にある。

ここで問われるのは、映像がいかに法的証拠や人道支援のエンジンとなり得るかという映画の「実効性」だ。マシャラーウィが説くのは、表現の自由という抽象的な権利ではなく、瓦礫から救い出された映像を「正史」として定着させるための戦略的な配給と保存の重要性である。インパクト・プロデューサーという専門職を介し、映画祭を「デジタルな抵抗の拠点」へと再定義する試みは、2026年の映画産業における最も硬派なオルタナティブといえるだろう。

この「Ground Zero」を巡る動きは、パレスチナの物語が外部に消費される時代が終わり、当事者の手でナラティブの主権が奪還されつつあることを示唆している。映画の感情的な揺さぶりを社会変革のエネルギーへいかに転換するか。ジュネーブで交わされる対話は、100年以上の歴史を持つ映画という芸術が、依然として世界を揺るがす最強の武器になり得ることを証明している。私たちがスクリーンで目撃するのは作品の完成度ではなく、そこに刻まれた声が未来を切り拓く現在進行形の闘争そのものである。

参照:cineuropa