第83回ゴールデングローブ賞で世界が沸く中、候補の一人であったジャファル・パナヒ監督の母国イランは、建国以来最大級の激動に直面している。2025年末の経済危機に端を発した抗議デモは、2026年1月現在、全土へと拡大。ネット封鎖や治安部隊による制圧が続くなか、人権団体からは事態の深刻化を懸念する声が上がっている。
国外滞在中のパナヒ監督は、映画人らと共同声明を発表し、「弾圧を非難し、国民の側に立つ」と宣言した。監督自身、昨年12月に欠席裁判で実刑判決を受けたが、1月4日に開かれた控訴審でも主張を曲げていない。当局は国際的な注目を浴びる監督の処遇に慎重な姿勢を見せているが、監督は「亡命せず、賞レース後に帰国する」という意志を貫いている。
パナヒ監督の最新作『It Was Just an Accident』は、不当に投獄された人々の記憶をテーマに据えている。スクリーンの物語が、今まさにテヘランの路上で起きている過酷な現実と重なり合うなか、世界の映画ファンは監督の身の安全とイランの行方を見守っている。1月22日のアカデミー賞ノミネート発表、そしてその後に控える監督の帰国は、単なる映画界の話題にとどまらず、イランにおける表現の自由と民主化の行方を左右する重要な局面となるだろう。