『しあわせな選択』がゴールデングローブ賞3部門にノミネート パク・チャヌク監督、制作20年超の企画と韓国映画界の課題を語る

韓国の映画監督パク・チャヌクの最新作『しあわせな選択』が、2026年ゴールデングローブ賞で3部門にノミネートされた。作品賞(ミュージカル/コメディ部門)、作品賞(非英語映画部門)、主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)の3部門で、主演のイ・ビョンホンが主演男優賞候補となった。

作品は、製紙会社に勤めるサラリーマンのマンス(イ・ビョンホン)が、解雇をきっかけに生活を失い、追い詰められていく姿を描く。マンスは妻(ソン・イェジン)、2人の子ども、2匹の犬と暮らし、「すべてが満ち足りている」と感じていた。ところが、25年間勤めた会社から突然解雇される。1年以上続けた再就職活動は成果が出ず、家を失う危機に陥る。彼は成長著しい製紙会社に履歴書を直接持ち込むが、相手にされない。しかし“自分こそが最もふさわしい人材”と確信するマンスは、「空きがないなら自分で作るしかない」と考え、重大な決断へと踏み出す。

パク監督が20年以上温めてきた企画で、長期にわたり次回作候補として継続的に検討されてきた作品である。当初はアメリカ映画として構想されていたが、韓国映画として制作に切り替えたことで完成へとつながった。企画開発が近年進行したことにより、作品にはAIに関する要素を取り入れることも可能になったと監督は説明している。

パク監督にとって今回のノミネーションは、主要な米国映画賞での初めての評価となる。彼は過去作が暴力や官能性を含むとしてクライムスリラーに分類される傾向があった点を挙げ、ミュージカル/コメディ部門でのノミネートは監督として新たな評価を受けたと語った。また、最も意義が大きい点としてイ・ビョンホンの演技が評価されたことを挙げ、本作で同俳優が長時間にわたり作品を支えていると述べた。

一方でパク監督は、韓国映画界の現状について深刻な懸念を示した。パンデミック以降、観客が劇場に戻らず、投資不足が続いていると指摘。これにより定型化した作品が増え、さらに観客離れを招く悪循環が生じていると分析した。対策として、独創性と大胆さを備えた作品づくり、そして家庭では再現できない映像・音響による“劇場で観る必然性”を持った映画の制作を挙げた。

参照:The Hollywood Reporter