ウクライナで50本の映画制作 戦時下でも文化支援強化へ

ロシアの侵攻が続くウクライナで、2024年12月から今年末までの間に50本の国内映画が制作されたことが、ウクライナ国家映画庁のアンドリー・オシポフ長官により明らかにされた。エストニアで開催されたタリン・ブラックナイツ映画祭の業界向けイベントで語ったもので、戦時下ながら制作が継続している状況を「業界にとって大きな成果」と強調した。

作品の中には戦争前に撮影を開始し、最近の追加資金で完成に至ったものもある。現在は1〜2週間ごとに新作が公開され、国内外の観客に作品を届けるサイクルが維持されているという。一方で、今年は国家映画庁の助成プログラムが存在せず、オシポフ氏は来年の再開の必要性を訴えた。

来年にはゼレンスキー大統領が提案する5,000万ユーロの文化基金が利用可能となる予定で、7~9割が国内プロデューサーに、残りが国際共同製作に配分される見込み。また、海外作品を誘致するため、ウクライナ初のキャッシュリベート制度も開始が期待されている。対象経費の25%を還付し、一定の文化基準を満たす場合は追加で5%が適用される。

一方で、戦争下の制作現場は依然厳しい。空襲警報が出れば撮影は即時中断となり、停電はポストプロダクション作業を遅らせる。また動員による人材不足も深刻で、撮影現場からスタッフが徴兵される事例も発生している。

地域フィルムコミッション協会によれば、国内10地域の委員会が活動を継続し、外国制作も可能な限り支援するとしている。ただし国境通過の遅延、損傷した道路、警報時の位置情報サービス停止など、制作側には十分な備えが求められる。

参照:The Hollywood Reporter