資金が届きにくい地域の映画を支える——国際ドキュメンタリー映画祭アムステルダムのベルサ基金が新体制に

オランダ・アムステルダムで毎年開催されるアムステルダム・ドキュメンタリー国際映画祭(以下、IDFA)は、1988年に創設されたドキュメンタリー専門映画祭である。世界中から多くの作品が集まり、上映や企画ピッチ、マーケット、助成基金などを通して、映画制作の支援も行っている。

IDFAの助成機関である「IDFAベルサ基金(以下、IBF)」は、独立系ドキュメンタリー監督を対象に制作資金やポストプロダクション、国際映画祭への参加支援などを行う基金である。資金や配給へのアクセスが限られる地域の監督への支援を目的としており、アジア、アフリカ、中東、東欧、ラテンアメリカなどの国々が対象となっている。

今年初め、セリン・ムラトがIBFのエグゼクティブ・ディレクターに就任した。前任は基金創設メンバーのイザベル・アラテ・フェルナンデスで、23年間エグゼクティブ・ディレクターを務めた。ムラトはこれまでプロデューサーや業界プログラマーとして15年以上活動しており、今回が初めてのファンダーとしての立場となる。

就任後は、複数回の助成ラウンドを実施し、選考委員の招集や資料審査などの業務に携わっている。今年はIBF支援作品16本がIDFAで上映される予定で、作品例としてマスード・バクシ「All My Sisters」、マリア・シルビア・エステベ「Mailin」、ブラドレナ・サンドゥ「Memory」などがある。

IBFは近年、ウクライナやパレスチナの監督向けに特別助成も行っている。基金の助成選考は、独立した監督が自分の視点で制作する作品を支援することを目的としている。ムラトは、助成対象地域の監督や制作コミュニティとの関わりを重視し、地域ごとの状況を考慮した支援を目指している。

参照:Variety