東京国際映画祭・市山尚三ディレクター “デジタルになっても映画の本質は変わらない”

第38回東京国際映画祭(10月27日〜11月5日)が開催中だ。プログラミング・ディレクターの市山尚三氏は、「デジタルになっても映画表現の本質は変わらない」と語った。1990年代から映画祭の選定に携わってきた市山氏は、35mmからデジタルへの移行を経ても自身の哲学は変わらないと述べ、「形式が変わっても映画の根幹は揺るがない」と強調した。

今年のコンペティション部門については「さまざまなジャンルを融合させた挑戦的な選考になった」と表現。エンターテインメントから実験映画、ドキュメンタリーまで多様な作品を揃えたという。出品作はタイ、北マケドニア、パレスチナなど幅広い国々から集まっているが、地域バランスよりも質を重視したと説明した。

市山氏はまた、東京国際映画祭が世界初公開よりもアジア初公開を優先している理由として、「ストリーミング時代では世界初上映の意義が薄れつつある」と述べた。一方で「主要映画祭のコンペで既に上映された作品を本映画祭のコンペに入れる意味は少ない」とも語っている。

劇場での上映の価値については「映画や映画祭で上映されることは依然として重要」と強調し、スパイク・リー監督が手がけた『Highest 2 Lowest』(黒澤明監督作『天国と地獄』のリメイク)を例に挙げた。同作は日本では配信のみで公開されたが、「多くの人に知られなかったのは残念」と述べ、劇場公開の重要性を訴えた。

最後に市山氏は今回の選定について、「作品群には現在の世界の混沌がさまざまな形で反映されている」と総括している。

東京国際映画祭公式サイト:https://2025.tiff-jp.netha

参照:Variety