『ミート・ザ・フューチャー ~培養肉で変わる未来の食卓~』吉富愛望アビガイルさんトークショーレポート

エシカル・ライフ・シネマ特集
『ミート・ザ・フューチャー ~培養肉で変わる未来の食卓~』

吉富愛望アビガイルさん
トークショー・レポート

とき:6月17日(土)
ところ:YEBISU GARDEN CINEMA

『ミート・ザ・フューチャー~培養肉で変わる未来の食卓~』はアメリカのベンチャー企業アップサイド・フーズのCEOウマ・ヴァレティ博士を中心に、日本でも話題になりつつある「培養肉」という食品テクノロジーで食糧危機や環境問題に立ち向かう人々を描いたドキュメンタリーです。

この度、公開を記念して吉富愛望アビガイルさんにご登壇いただき、映画の魅力、培養肉などに関して語っていただきました!!

 

日本が和牛の細胞性食品」で世界リードできるといいなと思ってます

ーー細胞農業ですとか培養肉ってなんなのかについて映画で初めて知られた方もいらっしゃるかと思います。

まず細胞農業とは何かと言いますと、従来、動物とか植物を育てて生産していたものを、その動物や植物の細胞に直接栄養を与えて増やしていくことです。それによって今までと違った、お肉ですとか植物の生産方法をする技術の名前になります。そういった細胞農業の技術を使って作った食品が、いわゆる今、国が使っている言葉で言うと『細胞性食品』って言うんですけれども。一般のメディアの方ですとか今回の映画ですと『培養肉』と呼ばれていることが多いです。

今回この映画のアップサイド・フーズ社の培養肉が昨年11月にアメリカ食品医薬品局(FDA)から安全性認可を取得し、つい先日6月12日に米国農務省(USDA)から細胞培養鶏肉('cell-cultivated chicken')の表示認証を取得したことが明らかになりました。

現在、『培養肉』の販売はシンガポールだけで許可されていますが、アメリカの方が格段に大きい市場ですので、本当にアップサイド・フーズ社が、細胞性チキンの販売を開始すると、トップに躍り出るということになりそうです。

細胞性の食品がどうしてこんなに注目されているかというと、お肉の生産方法を続けていくと、日本もそうだと思うのですが今までと同じように安定的にお肉を食べられなくなってしまうかもしれないというような危機感があります。

例えば異常気象です。穀物が取れなくなって、動物に与える飼料が全然取れませんでしたとか。国際的に穀物価格が上がると、今日本は飼料の75%を海外からの輸入に頼っているので大変なことになります。それから業界の人手不足などもあります。

細胞性食品について、注目がされている一方で、現状では4つのまだ不明なところがあります。

(1)「本当に環境負荷を下げることができるのか」

既存の肉の生産と比較した場合、チキンだと約20%、牛肉だと約90%環境負荷を下げられるという海外の研究もあるのですが、この数字はあくまでも『培養肉』を生産するための電気を100%再生可能エネルギーで考えた時の試算なのです。『培養肉』を生産するには大量の電力を必要とするので、その電力を環境に悪いと言われる石炭火力等で補い続ける場合、動物の種類によっては現在の肉の生産方法のほうが環境負荷の少ない場合もあります。

(2)「消費者のニーズが本当にあるのか」

企業の方によく聞かれるのは、消費者は『培養肉』を食べたいのですかという質問です。これは実際に『培養肉』が開発されて、美味しく調理されたものを見て消費者が本当に食べたいのかどうかが分かってくると思います。

(3)「肉の味の再現性」

美味しいお肉の細胞を使ったら美味しいお肉を作れるのかどうか、研究者の間では、味を再現できるという方と、再現できないという方の2つに分かれています。

(4)「価格は安くなるか?」

海外の試算ですと2030年までに1kgを5.6ドル、だいたい1000円以下でできるという試算もありますが、果たしてそこまで下がるのかがまだ見えません。

細胞性の食品は本当に新しい分野なので、皆さんからも意見をいただきながら、より良い環境を作っていき、できれば日本が「和牛の細胞性食品」などの新しい分野でも世界をリードできるといいなと思っています。

 

吉富愛望アビガイル
(一社)細胞農業研究機構 代表理事、農林水産省 フードテック官民協議会 細胞農業 WT 事務局長、東京大学 先端科学技術研究センター 客員研究員。早稲田大学と東京大学大学院にて原子核物理学・低温物理学を専攻後は一貫して新興産業の育成や、育成に不可欠なルール形成に関わる活動を行う。2019 年ー2022 年 11 月にて日本の食産業の育成や、食料自給率向上という安全保障の側面から、細胞性食品のルール形成を行う細胞農業研究会の運営に参画し、提言書の総括・海外企業との連携・規制当局 (主に農林水産省及び厚生労働省)との窓口及び広報を担当。 2022 年 12 月にて一般社団法人細胞農業研究機構 (JACA)を設立し、代表理事に就任。

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エシカル・ライフ・シネマ特集
ミート・ザ・フューチャー〜培養肉で変わる未来の食卓〜
MEAT THE FUTURE

本作は、フード・テックの最前線をいく、クリーン・ミート、ピュア・ミートと称される培養肉のスタートアップ企業「アップサイド・フーズ(旧メンフィス・ミート)』のCEO兼共同設立者のウマ・ヴァレティ博士が培養肉の開発に挑戦する姿を2016年から2019年まで追いかけたドキュメンタリーです。

2050年までに世界の肉の消費量が2倍になると予測され、既に畜産に使われている土地は世界の陸地の半分近くを占め、畜産由来の温室効果ガスは車から排出されるものより多いというのが現実です。

そこで現在世界的に注目されているのが「培養肉」です。これは従来の畜産業が抱える屠殺という倫理的問題と環境への影響を排除し動物の細胞から肉を育てるものです。

リズ・マーシャル監督は「この映画は、新しい産業の誕生を捉えている」と言います。

ビル・ゲイツやリチャード・ブランソン、食品大手のカーギルやタイソン、ソフトバンク・グループなどは、「培養肉」が食品として市場に出回ることを確信しアップサイド・フーズに投資しています。

『ミート・ザ・フューチャー』予告編



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監督:リズ・マーシャル
音楽:モービー
ナレーション:ジェーン・グドール
出演:ウマ・ヴァレティ

2020/カナダ/84 分/英語・ヒンディー語/DCP

原題:MEAT THE FUTURE
配給・宣伝:アップリンク
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